迷宮実習二日目


 迷宮実習二日目なのだが、今日は先輩たちと合同パーティーを組んで迷宮内で自主練習するらしい。なるほど、確かに生徒一人一人に教師を付けるのは不可能だもんな。合理的な制度だと思う。


「俺達のクラスを担当しくれる先輩だ。挨拶!」


「「「よろしくお願いします!」」」


 うちのクラスを担当してくれる先輩方は二年生6人と三年生4人だ。そしてその中には暁先輩がいた。あ、小さく手を振ってくれた。俺も手を振り返しておこう。


 その後迷宮に入って、少し各々の得意とする魔法を再確認した後、パーティーを分ける事になった。大体3~4人組を作るみたいだ。男子は男子、女子は女子で集まり始まる。


「で、赤木は宮杜さんと組むんだよな?」


「ああ、そう言われてる」


「変な事するなよ?」


「しねーよ!」


 俺はと言うと、宮杜さんと組むことになった。宮杜さん、俺の補助が無いと魔法を発動できないからな。

 ぶっちゃけ、俺の魔法の腕前を鑑みると、彼女と組むメリットはゼロに等しい。ぶっちゃけ、暁先輩よりも強いしな、俺。それもあってか、先生と宮杜さんは非常に申し訳なさそうにしていた。

 ただ、このままだと宮杜さんは一人魔法を全く使えず、手持ち無沙汰なまま迷宮実習を終えることになる。それはあまりにも可哀そうだし俺は助力を了承した。


 それに、宮杜さんって魔力量自体はかなり多い。だから、魔法を使いこなせるようになったらとんでもなく強くなるだろう。今のうちに仲良くなって、今後のラスボス戦や裏ボス戦イベントの時に協力してもらえたらラッキーだ。


 俺のパーティーメンバーは宮杜さんと七瀬さんに決まった。宮杜さんとはちょっと気まずいから、七瀬さんに緩衝材になって貰いたいな。

 さて、俺達の班には、どの先輩が付いてくれるんだろう? 今のままだと男子一人に女子二人だし、男性の先輩が入ってくれるだろうか?



(あの男子って、かなり強かった奴だよな?)


(そうそう。絶対辞めといたほうがいいぞ!)


(ああ、名もなき先輩の二の舞になる)



 何故かサッと目を背けられた。俺って嫌われてる? そんなこと……あるかも。自分よりも強い後輩と組みたい人なんていないよな。

 なお、今回の実習は他の2人がメインで、俺も補助に回るつもり。ましてや「あっれ~? 先輩、こんな事も出来ないんですか~?」と某ウザい後輩みたいな事はしないぞ。


「赤木君、私と組む?」


「あ、暁先輩。いいんですか?」


「もっちろ~ん!」



(暁が行った~! いや、逝った~!!)


(でも、女子に注意されたら、彼も素直に従うかも? 意外といい組み合わせかもよ?)


(だといいがな。暁の運命はいかに?)


((乞うご期待!))



 暁先輩が組んでくれることになった。暁先輩は七瀬さんとも顔見知りだし、ちょうどいいかもしれない。


「えーと、暁先輩でしたよね? 確か能力研究部の」

「お、お二人の知り合いなんですか?」


「うん、まあね~! そっちの女の子、えっとナナちゃんだっけ、は一緒にケーキを食べた仲。赤木君は、激しい戦いの末に友情を育んだ仲、かな?」


「「激しい戦い?」」


「ああ、実は……」


 暁先輩と勝負→一対一じゃ話にならないと先輩四人対俺の戦いを→俺死亡という一連の流れを説明した。


「一応言っておくけど、彼の初日は例外中の例外だからね?! 普通は、もっと優しく、能力の使い方を教え合ったりする部活だからね」


「って事は、最高級ステーキ定食を奢って貰ったのも例外ですか?!」


「当り前よ! 新入生全員に奢ってたら、私達の財布、空っぽになるわよ!」



「それにしても、赤木君って攻撃も出来るんだね。私、びっくりした!」

「私もびっくりです……! バフの専門だと思ってました」


「まあな。って言っても無属性って、敵の弱点を突くことが出来ないんだよなあ」


「それでも、この階層の魔物だと余裕だよね、私達、何もしなくていいのでは?」


「いや、俺は今日は補助しかしないぞ?」


「「ええ~!」」

「そうなんですね」


 そんなこんな話しながらも、慎重に迷宮を進む。


「あ、見て! あそこにパニックチキンが居るわ! 見つかると暴れられるし、ここから仕留めたいところね。最初は……取りあえず赤木君、行っとく?」


「んー、じゃあ最初だけ」


 逃げ惑う先輩を倒した経験からか、容易たやすくパニックチキンに命中させれた。


「言う事ナシ! 次行きましょうか!」


「赤木君、凄いわね~!」

「凄いです……。私の練習に付き合わせてすみません……」


「気にしないで良いって言ってるのに。元からバフの練習のつもりだったし。それに、宮杜さんはバフのし甲斐があるから」


 という俺の声を聴き、暁先輩が食いついた。


「凄いよねえ。赤木君のバフでしか効果が無いって! それってもう運命じゃん! いいなあ、私にも運命の人が出来ないかなあ~!」


「運命って誇張し過ぎですよ」

「う、運命なんてそんな。赤木君に申し訳ないです!」


「でもでも。今後、二人は一緒に行動するんでしょ? 過酷な迷宮探索の果てに、二人の恋が芽生えて……とか!! テンプレじゃん! どこのラノベよ、も~!」


 そうそう、この世界にもラノベってあるんだよな。内容も地球のそれとかなり似ているし。唯一の違いは、俺の感覚で「現代ファンタジー」な作品が、「現代ドラマ」って事になってるけど。


「いやいや。宮杜さんはすぐにでも俺の助けなく能力を使いこなせるようになるでしょうから。そうなった時、俺は無残に捨てられて、復讐を誓う系主人公になるんですよ」


~~~

宮杜さん(CV.暁先輩)「私、あんたの手を借りるまでもなく、戦えるから。むしろ邪魔なの、分かる?」


俺(CV.俺)「そんな……。あの時、ずっと一緒に攻略しようって約束したじゃないか!」


宮杜さん(CV.暁先輩)「そんなの都合がいいからそう言っただけに決まってるじゃない? なーに本気にしてんのよ、バーカ」


俺(CV.俺)「そんなあ~待ってくれよ~。くっそ……、絶対に見返してやる……!!」

~~~


「「的な?」」


「赤木君、可愛そう……。宮杜さん、恩をあだで返すのは良くないよ?」

「私の事、どんな人間と思ってるんですか! そんなことしませんよ!」


 あれ、緊張感がゼロになってる。最初、慎重に進んでいたのが嘘のようだ。

 っと、向こうにファフワの群れが居る。的にちょうどいいな。


「先輩、向こうにいるファフワを使って、宮杜さんの練習をしましょう」


「あ、うん。そうだね、よし、宮杜さん、行ってみよ~!」






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