第11話 決意
「ミハイルさん、おはようございます……」
「おはよう、ルナリア。まだ顔が赤いが、大丈夫か?」
翌朝、ルナリアの熱はすっかり下がって体調も戻った。今、顔が赤いのは別の理由である。
「だ、大丈夫です! あの、昨日は……」
「ルナリア、愛しているよ」
「…………!」
何の脈絡もなく、朝から愛の言葉を囁くミハイル。どうやら恋人には甘くなる男のようだ。朝食の準備も、いつの間にか整っていた。
私もです、と顔をさらに赤くして答え、ぎこちなくテーブルにつくルナリアを、心底愛おしげな眼差しで見つめている。
朝食を済ませ、食後のハーブティーを飲みながら、ミハイルが切り出した。
「ルナリア、昨日のことなんだが……君は、元の世界に帰らなくていいのか?」
お互いに好き合っていたことが分かったが、ルナリアが元の世界に喚び戻される日まで、あと一月。今後のことを考えなければならない。
「元の世界にも、君を信じて助けようとしてくれている奴がいるんだろう? それに、ここに残れば家族にも会えない」
(そうだわ、あの魔術師の方は私を救うと言ってくださった……。それに、お父様やお母様、弟達にも、もう会えなくなる……でも、それでも)
「家族や、私を唯一信じてくださった方のことを思うと心が痛みます……。でも、貴方と離れてしまうのが何よりも辛いんです。私は、貴方と共に生きていきたい」
「……分かった。私も君がいない人生は、もう考えられない。君が喚び戻されるのを防ぐ方法を考えよう」
「ミハイルさん、ありがとうございます……!」
「……ミハイル、と呼んでくれないか?」
「え、ミ、ミハイル……」
ミハイルは、瞳を潤ませながら恋人の名を呼ぶルナリアの手を取り、そっと口付ける。ルナリアはとうとう耐え切れずに意識を手放した。
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