第8話 薬草摘み2

 小川を越えて少し歩くと、小さな池があった。水底が見えるほど透明度が高く、水面は碧くきらきらと輝いていて神聖な雰囲気が感じられる。


「さあ、着いたよ。ここが目的地だ」


「透き通っていて綺麗な池ですね」


「ああ、今日探す薬草は、こうした澄んだ池の側に生えているんだ」


「そうなんですね。では、私はあちらの方を探してきます」


「頼んだよ。私は向こう側を見てくる」


 二手に分かれて薬草を探す。ミハイルは慣れた様子で木の陰を覗き、早速目当ての薬草を見つけて手折ると、ポイと背中の籠に放り投げる。ルナリアは、そんなミハイルの後ろ姿をそっと眺めて微笑むと、自分も近くの木陰へと向かった。


 木の側や草むらの中を丹念に探していくと、黒っぽい扇状の葉を持つ植物を見つけた。図鑑で見た黒扇草によく似ている。根を残して鋏で茎を切ると、期待に胸を膨らませてミハイルの元へと走っていった。


「ミハイルさん! これ、黒扇草じゃないでしょうか!」


「ああ、これは間違いなく黒扇草だな。葉も大きいし、上物だ。よく見つけてくれたね」


 初めて自分で薬草を見つけた喜びと、ミハイルが褒めてくれた嬉しさで、思わず無邪気にはしゃいでしまう。


「よかった! 薬草を探すのって、宝探しみたいで楽しいですね!」


「……そうか。また一緒に来よう」


 楽しそうに満面の笑みを浮かべるルナリアを、ミハイルもまた幸せそうに見つめた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る