テツオの大学受験 その1
分不相応なテツオ(長男・高3)の受験が家族・親戚を巻き込みすったもんだの連続、諸先輩のご苦労が今更ながらやっと実感できつつある。12月、三者面談を前に当人に最終確認すると私大も受けたいという。
「そんな話は聞いていない。○×大(有名国立大学)を狙って×○大学(有名私立大学)というなら理解できるがお前の偏差値の場合スベリ止めではなく“尻拭い”や!」
中3の時、高校進学を当たり前とほざき
「誰が行ってくれと頼んだ?働け!」と締めた。
大学を出ないと就職ができないとぬかした時
「四流、五流大学出ても同じじゃ!」
「そんな大学には行かん!」
と言ったのは誰だ?
高1の春には
「3年間なんてちょっと長い夏休みやぞ。ハッと気づいたらお盆を過ぎとるぞ」と釘を刺した。
高2の秋には
「お前の書いた志望校は目標か?あこがれか?夢か?はっきりさせようやないか。ホントに本気で狙うがやな?」
と念を押した。
それがどうだ・・・見事に
ただ、人間らしい、高校生らしいといえばそれまで。
自分もヨメも今のテツオと全く同じ時代があった。
第一志望を叶え続けていくことは難しいし不気味でさえある。第二、第三を受け入れたからこその出会いやチャンスもあると説教してくれたのは
狙うは経営学でマーケティングや市場戦略に興味があるという。でも企業に社運を賭けたプロジェクトがあるとすれば、大学進学は我が家にとっては家運を賭けたプロジェクト!簡単に通る稟議ではない。それに経営立て直しの勉強なら進学しなくても即実践的な題材が我が家に溢れているではないか。経営学を学ばせたら家が破綻した、こんな間抜けな話はない。第三者機関なら無理無駄の削減と費用対効果の観点から真っ先に教育費の予算の見直を求めるはず。さらにはここで前例を作るとあの生意気な次男に示しがつかずどこかの国みたいに悪循環が加速しないとも限らない。
ただ私大発言の陰にはヨシエのお父さんが絡んでいるらしい。そこはお義父さんの母校でお義父さんは初孫のテツオを誰よりかわいがってくださる。
ある時モリタが電話に出たら
「テツオの将来ちゃんと考えてやらんにゃ。アンタら(夫婦)二人とも学歴無いがやから・・・はっきり言うけど・・・。お金がどうのこうのでないちゃ!」
「・・・ハイッ!・・・・ハイッ!・・・ハイッ!」
もう家族だけでは決断できない状況になりつつある。
そんなこんなを引きずり三者面談。正直に親と当人の希望に隔たりがあることを伝える。
たとえ受験が失敗して時給750円のアルバイトについたとしてもそれが本来の身の丈。そこから見える社会の仕組みや一人になったときの自問自答が次の進路を示してくれるのではないか。
「希望の私大は決して簡単なところではありません」
「じゃあなおさら受けなくてもいいのでは?」
「でもチャンスが一つ増えます」
要領の悪い親を丁重かつ粘り強く諭してくださる。最終的な結論は年が明けてからということになったが、学校を出てから、
「チャンスが増えるっておかしくない?宝くじじゃないがいから。数少ないチャンスをいかにモノにするかが人生やしそれを教えるのが先生やろ?」
偏屈な親の元に生まれた子供たち。大変かもしれないが世の中にはもっと理不尽があふれている。たとえ二、三年遠回りすることになってもすぐに挽回できる・・・かどうかはわからないが・・・・う~ん・・・・・。
そんなことを愚痴りながらも子供の進路でモリタの将来が左右されるわけではないしそうあってはならないと細胞核が叫んでいる。今の体力を維持できるのもあと僅かと思えばこの冬は趣味のスキーも一層楽しみたい。奇しくも
2013年1月
※1 キリギリス
『アリとキリギリス』
イソップ寓話のひとつ。
夏の間、アリたちは冬の食料を蓄えるために働き続け、キリギリスはヴァイオリンを弾き、歌を歌って過ごす。やがて冬が来て、キリギリスは食べ物を探すが見つからず、アリたちに食べ物を分けてもらおうとするが、アリはそれを拒否するという物語。
※2 国泰寺
富山県高岡市にある禅寺で臨済宗国泰寺派の本山。
今から約39年前、ある経営コンサルタントが主催する2泊3日新入社員研修会で訪れた。
※3 嫁ヨシエが証明
言わずもがな、モリタとの結婚ということ。はたして、お互い、第〇希望だったのやら・・・?
※4 県大会
○×県民体育大会スキー競技会 アルペン ジャイアントスラローム 二部
もちろんモリタの成績は後ろから数えた方がはやい。
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