ヨシエ、『こんまり』を目指す

 4ヶ月前の嫁ヨシエは整理整頓にはまっていた。きっかけは “新片づ※1  け術「断捨離」”という本。断=入ってくる要らないモノを断つ、捨=家にはびこるガラクタを捨てる、離=モノへの執着から離れる。つまり、「家のガラクタを片づけることで、心のガラクタをも整理して、人生をご機嫌へと入れ替える方法」。

 次に読んだのが“人生が※2  ときめく片づけの魔法”。片づけはテクニックではなくメンタル。好きなもの(ときめくもの)だけに囲まれる生活をゴールに設定すると捨てる基準が明確になる、というもの。

 嫁ヨシエは後者にはまった。結婚17年目にして、タンスを占領していた一度も着た事のない洋服を捨てた。サイズが合わなくなったり、ゴムが伸びきった下着を処分しながら、

「カワイイの、たくさん買おうっと♡」

 と勝負に出るつもりか?

 他にもオモチャや読まない本、いつか使うかもしれない記念品の類、その量は軽トラック1台分。

 捨てに行くのはモリタ。分別していると、その中に腕時計があった。確か、いただいたカタログギフトからヨシエが自分のために選んだ時計だ。

 嫌味をこめて

「自分で欲しいと言って選んだくせに・・・」

 と言うと、悪びれる様子もなく

「その時はその時計にときめいたが。でも今はときめかんが。わかる?十何年か前、何かのはずみで、誰かさんにときめいたこともあったかもしれん。でも、その時はときめいても、今はどうかはわからない。 わかる?・・・おわかり?」

「・・・・・・・」 

 

 その後、我が家は劇的に片付くことなく、今ではほぼ元通りに。ただ、冷静に考えると、これで良かったのではないか。本当に“ときめく片づけ”を徹底されたあかつきには、世の中のお父さんの大部分がその対象になり、日々、戦々恐々と暮らすことになる(現在もだが、さらに)。逆方向から考察すると、雑誌に掲載されるような無駄のない、洗練された空間で暮らす家族は必ずしも幸せではない、とも言える。

 もしかしたら、自分がこの家に居られるのは捨てきれない女房のおかげ。少しくらい家の中が散らかっていても、もう何も言うまい・・・・。

               2011年11月



※1 新片づけ術「断捨離」

著者 やましたひでこ

出版社 : マガジンハウス

発売日 :2009年12月

大学在学中に入門したヨガ道場で、心の執着を手放す行法哲学「断行・捨行・離行」に出合う。その後、モノの片づけを通し、誰もが実践できる自己探求のメソッドとして落とし込んだ、住まいと心のガラクタの新・片づけ術「断捨離」を考案。2000年頃からクラター(ガラクタ)・コンサルタントとして「断捨離セミナー」を全国各地で開催。



※2 人生がときめく片づけの魔法

著者 近藤麻理恵

出版社 : サンマーク出版;

発売日 :2010年12月

その極意をひと言でいうと……まずは、「捨てる」を終わらせる。そして、一気に、短期に、完璧に片づける。これを正しい順番で行うと、二度と散らからなくなり、一生、きれいな部屋で過ごせる。

著者近藤麻理恵さんは2015年、米国「TIME(タイム)」誌 世界で最も影響力のある100人に選ばれる。

別名 こんまり、KonMari


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