34回戦 市中総体-5

 ボクとりん、複本選手と蓋穴ふたあな選手が、

それぞれスタンバイエリアに入ると、

ピー!と再び審判しんぱんのホイッスルが鳴らされる。


 ボクとりん、複本選手と蓋穴ふたあな選手は、ダダダ……!と走り出す。


 ズババッ!


 メラメラッ!メラメラッ!


 おたがい、合体ジョイント完了かんりょうだ。


 蓋穴ふたあな選手はバッ!と複本選手のすぐ背後に再びかくれる。


 ボクとりんは、松葉位置になりながら前進する。


 と、

ボクがセンターラインに到達とうたつする直前、

複本選手がその場にバッ!としゃがみんだ。


 次の瞬間しゅんかん

パン!パン!とその背後にいた蓋穴ふたあな選手が、

両手で火球をボクに向けて発射した。


「(蓋穴ふたあな選手が攻撃こうげきに参加を……!?)」


 ボクはあわててザーッ!と足をん張ってブレーキをかけ、

火球の弾道だんどうを見定めようとする。


 そこになんと、

バン!バン!と複本選手もしゃがんだまま両手の聖剣せいけんから射聖ショットした。


 先ほどボクとりんがやった、疑似四点同時攻撃クアドラプルアタックだ。


「(くっ……!)」


 ボクに向けて、4つの火球が同時にせまる。


 すかさずボクは、


りん!」

さけびながら、

バッ!と右側へ、

りんのいるほうへサイドステップした。


 ビュオッ!と強烈きょうれつな横風が、ボクの右後方から届く。


 そう。


 レベル3の風属性の魔法まほうの強風である。


 元々左からいていた強めの風すらもし返す魔法まほうの強風が、

火球を4つまとめて左へとき飛ばしていった。


「なっ……!?」


 複本選手と蓋穴ふたあな選手が、思わずといった感じで口に出す。


 りん四点同時攻撃クアドラプルアタック

あるいは先ほどのボクとりんの疑似四点同時攻撃クアドラプルアタック

お株をうばうつもりだったプレイが防がれたのだから、

当然の反応だ。


 りんはさらに、

パボン!と加速する火球をしゃがみんだままの複本選手に発射する。


 その音を聞いたボクは、

ビュッ!と聖剣せいけんを複本選手に向かってき出しながら、

シュババッ!とショットガンを放った。


「くう……!」


 ビュッ!バシン!

ビュッ!バシン!

ビシュッ!


 複本選手は立ち上がりながら、

2本の聖剣せいけんでそれぞれ火球と片方の真空はじいたが、

もう片方の真空を右ヒザの辺りのプロテクターに受ける。


 ピー!と審判しんぱんのホイッスルが鳴らされ、


1ワン-0ゼロ!」

とスコアがコールされた。


「いいぞ!いいぞ!木石!

 行け!行け!本能!

 もう1本!」

とウチの剣魔けんま部の面々の手拍子てびょうし拍手はくしゅが飛んで来る。


「ナイスショットー!」


 りんとボクは言いながら、パァン!とハイタッチを交わす。


 と、


「どうすんの!?」

という蓋穴ふたあな選手の悲鳴にも似たさけび声がした。


 見ると、蓋穴ふたあな選手が複本選手にめ寄っている。


「まだ2ポイントあるだろ……」


 複本選手はまだ冷静なようだ。


「もう2ポイントしか無いんだよ!?」


 蓋穴ふたあな選手が再びさけぶ。


「分かってるから……、少し落ち着け……」


 複本選手は蓋穴ふたあな選手のかたをポンと叩き、

スタンバイエリアに向かって行った。


 蓋穴ふたあな選手はまだ何か言いたげだったが、

それ以上は何も言わず、もう片方のスタンバイエリアに向かって行く。




 ボクとりん、複本選手と蓋穴ふたあな選手が、

それぞれスタンバイエリアに入ると、

ピー!と再び審判しんぱんのホイッスルが鳴らされた。


 ボクとりん、複本選手と蓋穴ふたあな選手は、ダダダ……!と走り出す。


 ズババッ!


 メラメラッ!メラメラッ!


 おたがい、合体ジョイント完了かんりょうだ。


 蓋穴ふたあな選手はバッ!と複本選手のすぐ背後に再びかくれる。


 ボクとりんは、松葉位置になりながら前進する。


 ボクがセンターラインに到達とうたつしたところで、

ダンッ!とりんがジャンプし、

パパパパン!と四点同時攻撃クアドラプルアタックを発射した。


「まだてるのか……!?」

と複本選手はおどろきの声を上げながらも、

バッ!バッ!と両手の聖剣せいけんを構える。


 そこにさらにボクがビュッ!と聖剣せいけんを複本選手に向かってき出しながら、

シュババッ!とショットガンを放った。


「ぬう……!」


 自分に向かって来る6発のたまを見た複本選手がうなり、


「うあああ……!」

さけびながら、

ビュッ!ビュッ!ビュッ!ビュッ!

とメチャクチャに聖剣せいけんを振り始める。


 ビュッ!ビュッ!バシン!バシン!

ビュッ!ビュッ!バシン!ボッ!

ビュッ!ビュッ!バシン!バシン!


 3つの火球とショットガンの2発の真空は防がれたが、

残る1発の火球が複本選手の左肩ひだりかたの辺りのプロテクターに命中した。


 ピー!と審判しんぱんのホイッスルが鳴らされ、


2ツー-0ゼロ!」

とスコアがコールされる。


「いいぞ!いいぞ!木石!

 行け!行け!本能!

 もう1本!」

とウチの剣魔けんま部の面々の手拍子てびょうし拍手はくしゅが飛んで来た。


「ナイスショットー!」


 りんとボクは言いながら、パァン!とハイタッチを交わす。


 しかし、これで四点同時攻撃クアドラプルアタックのほうは撃ち止めだ。


「(それに今の動き……!)」


 ボクは複本選手のプレイにヒヤリとさせられた。


 6発中、5発もたまを防がれたのだ。


 複本選手1人なら、

不意打ちやしゃがんで動けないという状況じょうきょうでなければ、

4発同時のたまですら、

りんの両手の火球とボクのショットガンを合わせてすらも、

2本の聖剣せいけんでガードしたり回避かいひしたりが可能ということである。


「(あと1ポイントで勝てるのに……!)」


 ボクは歯をめた。


 だが、

そんなボクにりん


「これは勝ちましたわね!」

と言いながらニッコリ微笑ほほえんできた。


「!」


 ボク、複本選手、蓋穴ふたあな選手は、思わずりんを見る。


 りんは表情をくずさない。


「(これは……!)」


 ボクは思いながらも、

えて何も言わずにそれにコクリとうなずいてから、

スタンバイエリアに向かう。




 ボクとりん、複本選手と蓋穴ふたあな選手が、

それぞれスタンバイエリアに入ると、

ピー!と再び審判しんぱんのホイッスルが鳴らされた。


 ボクとりん、複本選手と蓋穴ふたあな選手は、ダダダ……!と走り出す。


 ズババッ!


 メラメラッ!メラメラッ!


 おたがい、合体ジョイント完了かんりょうだ。


 と、

蓋穴ふたあな選手が、ザッ!とすぐさま背後に向かってバックステップし始めた。


 1ゲーム目でやった時よりもさらに速く動いている。


「!」


 ボクはそれを見ると、りんのほうをチラリと見る。


 りんもボクと松葉位置になりながら、コクリとうなずいた。


 ボクとりんは複本選手に向かって前進するが、

ボクがセンターラインに到達とうたつするよりも先に、

蓋穴ふたあな選手が後方のベースライン際に辿たどり着いた。


 それを見たボクは、

すぐさまザザッ!とりんのいる側と逆側にサイドステップし、

複本選手をけて蓋穴ふたあな選手の見える位置へ、

蓋穴ふたあな選手までの射線を確保する。


「!」


 複本選手が反応したが、もうおそい。


 ビュッ!とボクは蓋穴ふたあな選手に向かって聖剣せいけんき出しながら、

シュババッ!とショットガンを放った。


 同時にりんも、

パン!パン!と両手で火球を蓋穴ふたあな選手に向かって発射する。


「行けっ!」


 ボクは思わずさけんだ。


 りんの火球の残弾数ざんだんすうもきっと残り少ない。


「(でも、これなら蓋穴ふたあな選手は、きっとかわせない……!)」


 蓋穴ふたあな選手に2発の火球と2発の真空せまる。


「フッ!」

蓋穴ふたあな選手は、側転で火球と真空回避かいひにかかる。


 さらに複本選手がザザッ!とりんのいるほうへ素早くサイドステップした。


 りんから蓋穴ふたあな選手への射線をつぶして、

着地を火球で狙わせないようにしたのだ。


 だが、そうしながら


「ハッ!?」

と気づいた複本選手が、すぐさま


「ダメだ!」

するどさけぶ。


 次の瞬間しゅんかん

ビュオッ!と風がいた。


「えっ!?」


 側転から着地した直後の蓋穴ふたあな選手が、バランスをくずす。


 そう。


 りんのレベル3の強風だ。


 先ほどのりん


『これは勝ちましたわね!』

という発言は、

次も四点同時攻撃クアドラプルアタックめると見せかけたブラフ。


 つまり、ハッタリである。


 そう思わせて、蓋穴ふたあな選手が下がるのをさそったのだ。


 バランスをくずした蓋穴ふたあな選手が、

ドサッ!と尻餅しりもちをついた。


 アースの場外に。


 蓋穴ふたあな選手の失点だ。


 ピー!と審判しんぱんのホイッスルが鳴らされ、


「ゲームセット!ウォンバイ木石、本能!2ツーゲームストゥ0ゼロ!」

と試合結果がコールされる。




「ありがとうございました!」


「ありがとうございました……」


 ボクとりん、複本選手と蓋穴ふたあな選手は、

それぞれアースの真ん中の『*』マークの辺りで握手あくしゅを交わした。


 複本選手と蓋穴ふたあな選手は、ガックリとかたを落としている。


りん四点同時攻撃クアドラプルアタックと、強風のおかげだよ!

 ホントにありがとう!」


 ボクは思わず、りんをガシッ!ときしめながら言った。


「いえいえ!ムロさんのショットガンあってこその勝利ですわ!」


 りんも、ギュッ!とボクのこしに手を回してくる。




 ボクとりんは、その勢いのまま決勝まで勝ち進み、

決勝戦で当たった絶と頂さんのペアをも下した。


 表彰式ひょうしょうしきで、ボクはできる限り背筋をばして、胸を張った。


「(こんな聖剣せいけんのボクでも、優勝できるんだよ!

  だからみんな、自信を持って!)」

と思いながら。




 ボクとりんのペア、絶と頂さんのペアの

ワンツーフィニッシュで波に乗った正甲中せいこうちゅうは、

続く団体戦でも見事に優勝を果たし、

県大会への出場を決めた。

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