1回戦 絶-1
キーンコーンカーンコーン……。
ボクが2年4組の教室に入ると、
ちょうど朝の会の開始を告げる
ボクには友達がいないので、いつもギリギリに登校するようにしているのだ。
「(ん……?
何だろう、あの机とイス……?)」
ボクは教室の後ろのほうを見た。
一組だけ他と外れて、机とイスがポンと置かれているのが視界に入ったのだ。
「(そういえば、いじめられ始めたばかりの
そんな
ボクは
それを打ち消すように首をブンブンと横に
「(でも、あれはボクの机とイスじゃないし、
他に
ボクは、首をかしげた。
と、担任の
ちょっと熱血な感じで厳しい時もある、
授業中に
ちなみに独身らしい。
ボクは、
「起立……。気をつけー……。礼」
日直が声を
「おはよーございまーす……」
みんなダルそうにあいさつをする。
中学2年生の、ましてやゴールデンウィーク明けのクラスなんてそんなものだ。
ボクなんてダルすぎて、
口と頭を少し動かすだけで何も言ってすらいなかった。
クラスで最もイケてない、悪い意味でヤバいほう。
つまり、スクールカーストの最下位にいるこのボクだ。
こんなところで
「えー……、5月に入ったこのタイミングで、転校生がこのクラスに入ってくるぅ。
ボクはというと、あまり興味が無い。
「(あー、なるほど……。
あの机とイスは転校生の物ってことか……)」
程度の感想である。
転校生が男子だったとしても、どうせ友達にはなってもらえない。
ボクの
転校生が女子だったとしても、同じだ。
ボクなんて、眼中に入るわけがないのだから。
「おーい!本能!入ってこぉい!」
ガラリ!と教室のドアが開く。
「ワアアアア……!」
とクラス中の男子と女子が、大きな
ボクでさえ、あんぐりと口を開けてしまう。
美術の時間に教科書で見た、
それをそのまま人間にしたような、
ガッシリとした身体つきの
「『本能』って、あの本能兄妹の本能絶!?」
「マジでかよー!?」
「キャア!キャア!キャアー!」
男子も女子も大興奮している。
『
去年の
当時中学1年生にして
大会MVPまで受賞したことで有名な男子だ。
同じく、小学生の全国大会では、
当時小学6年生だった妹の『本能
両親が
それに教わって
しかも本能絶、
たびたびテレビやネットで特集が組まれている。
そんな本能兄妹をボクらの世代で知らない者など、ほとんどいないだろう。
もちろん、ボクだって知っている。
「えと……、
両親の仕事の都合で、大きな空港が近いこの町に引っ
もちろん妹も
今年はシングルス全国1位を取りたいので、
絶は元気にそう言うと、深々とお
「
「
「仲良くしよー!」
「じゃあ、新しい仲間も入ったことだし、
最初は絶に、その後はクラスの各席を順番に周りながらクジを配り始めた。
「(
ボクは、頭を
「(ボクの
そう思いながら、ボクもクジを引く。
「(ラッキーだ!
すごく低レベルなことだと分かってはいるが、ボクは内心とても喜んだ。
「よろしくね!」
絶が
「よっ……、よろひふ……」
ボクは、思いっ切り顔を引きつらせてしまった。
周りの
初日から人気者の転校生が、クラスで一番イケてない男子の
そんな反応も当たり前だ。
キーンコーンカーンコーン……。
朝の会の終わりを告げる
「あぁそうだ。
学級委員の二人は、本能に学校の案内
1時間目は、音楽だしなぁ」
ボクもその後を追うように、
音楽の教科書とアルトリコーダーを持って教室を飛び出した。
「(1時間目が音楽で本当に助かった……!)」
ボクは思っていた。
キーンコーンカーンコーン……。
音楽の授業は、特に問題なく
音楽室に来る時も教室に
「(教室で
仮に話しかけられても、
『反対側の席の
とでも言えばいいじゃないか)」
と、音楽の授業中は絶と席が
ボクは気を取り直していた。
キーンコーンカーンコーン……。
「ごめん。英語の教科書、見せてくれない?
前の学校と
受け取るのが、昼休みになったらなんだ」
絶が、2時間目開始の
「は、反対側の……、その……、せ、席の……、えっ……、えっ……」
ボクは思わず、どもった。
「(
「絶くん。
ムロなんかに話しかけるなよ。
うつっちゃうよ?
短しょ……」
「何がだ?」
絶の
口を
「何がうつるって?」
ボクは
「何がうつるんだよ!?
言ってみろよほら!」
ボクは語気を強めて立ち上がり、構えの姿勢を取る。
ボクのイスが、立ち上がった勢いでガターン!と後ろに
教室は、シーンと静まり返る。
ちょうど教室に入って来た英語の地上先生も、
ビックリしたように固まっている。
ボクは
「(テニス部の
ボクは頭に血が上っている割に、
悪口を言い返したり、相手のことを
「やめなよ。ケンカは良くない」
絶が
イスのあったほうに立って、
ボクを制止しようと
が、ボクはそれに反応して、
「なっ……!?」
絶が
「だっ……!?
タンマタンマ!
オレが謝るから!
ごめんて!」
ハッ!とボクは我に返った。
「ご……、ごめんなさい……!」
ボクは
「い、いや……。うん……」
絶が言った。
「きょ、教科書は、そっちの
とボクは頭を上げると言い、
いそいそと
絶は、それを見て後ずさりしたが、
ボクが
ボクはイスに座ると、すぐに絶とは反対に顔をぐるっと向け、目をつぶる。
「(またやってしまったあああ!
ごめんなさいいい!
絶対、アブナイ
気まずすぎるううう!)」
ボクは心の中で、自分の頭をポカポカ
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