第7話 ぽっちゃりの味方
商業ギルドを訪れてから数日後、ミレルさんにお願いした土地の借用と店舗開店の手続きが無事に終わった。
マルヴィン王国でお店を出していた時よりも広い土地をリリと眺めながら、胸が高鳴るのを感じている。
「準備、始めようか」
「うん。明日、開店する」
私は可愛く意気込むリリの頭を撫でてから、『稼働ハウス』オープンと唱える。
広々とした更地の中心に、店舗兼住居が建った。
これでお店が完成したと考えると、悪神様からもらったこのスキルは本当にすごい。
お店の中に入ると、1階の半分が店舗となっていて、もう半分が調理場だ。
調理場にはこの世界にはない魔力で使用するオーブンに洗い場等がある。
2階の住居に関しては、私とリリが要望したこともあり、半分のスペースを贅沢に使ったお風呂になっている。
前世でマルティナ宅で入ったお風呂がどうしても忘れられなかったのだ。
「ふっふ〜ん♪」
お店に入ると、早速リリが『器』を作り始めていた。
今作っている『器』は、シュークリームやマカロンを入れるための箱だ。
私とリリのスキルや能力には少し違いがあるのだが、この『器精製』スキルもそのひとつ。
『稼働ハウス』は私しか使えない分、『器精製』はリリしか使えない。
箱に始まり、食器、ポーションを入れるための瓶まで作れる。
「いいなぁ〜」
「平伏すがいい」
リリは箱を作り終えると、ポーション用の瓶を作り始める。
リリのスキルを羨ましがっていた私だが、ここからはミミの出番だ。
瓶に『稼働ハウス』の蛇口から水を入れると、私はヒールを唱える。
【グラン・ヒール】
瓶が黄金色の光に包まれると、透明だった水が薄い黄色に変わった。
後は瓶に栓をすれば、上級ポーションの完成だ。
以前、怪我をした人にヒールをかけた際、その人が持っていた水に変化が起こり、ポーションが作れることを知った。
この世界での詳しいポーションの作り方は知らないが、王宮に仕える魔道士や錬成術師等が協力して日に数本作れる程度らしい。
だからこそ、お店でポーションを売ると高値でも売れるのだ。
「この黄金色、金の色」
「リリは相変わらずだね」
できたばかりのポーションを棚に並べながらお金が大好きなリリは鼻歌を唄っている。
因みに、この回復魔法は私だけが使えて、リリは使えない。
それでもリリは、攻撃魔法であれば全属性、全種類使える。
◇◇◇リリ◇◇◇
Lv502
HP:16,000
MP:解放前
攻撃:53,000
防御:30,305
魔力:52,000
戦闘指数:151,305
好きなタイプ:優しいぽっちゃり男子
『加護』悪神の飲み友
『スキル』
・寿命消費
・寿命退行
・寿命延伸
・亜空間収納
・千里眼
・剣技全種類
・攻撃魔法全種類
・転移
・器精製
ポーション作りも終わり、手慣れたシュークリームとマカロン作りもあっと言う間に終わった。
『亜空間収納』に仕舞っておけば、いつでも出来立てを提供できるため、お店の開店前にせっせっと準備をする必要がないから有難い。
「そろそろ、3品目が作りたい」
「私もそう思ってたよ。だけど、あれがないのよ」
「うむ。あれはどこに・・・」
私達がこの世界に転移する際に悪神様にもらった5枚のスウィーツレシピ。
▪️シュークリーム
▪️マカロン
▪️ショートケーキ
▪️ティラミス
▪️秘密
5枚目の秘密は理由が分からないが、今、私達が目指しているのは『ショートケーキ』。
小麦粉もあるし、卵もあるし、生クリームも作れる。
足りないの唯一、『苺』だ。
ショートケーキといえば、『苺』なのだ。
だけど、この世界で『苺』を見たことがない。
「苺なくして、完成無理」
「そうだよね。どこにあるんだろう」
コンコンッ
その時、お店の扉がノックされた。
もちろん、お店は先程建てたばかり出し、外にはcloseと示しているから誰も来るはずないのだが。
私が恐る恐る扉を開けると、そこには人の良さそうな小太りの男性が立っていた。
優しいぽっちゃり男子が好みの私とリリは、男性を食い入るように見つめる。
「あ、あの、突然すみません。外を歩いていたら、良い匂いがしたもので・・・」
「そうですか。ここは、明日から開店予定のスウィーツ店となっています。よろしければ、是非いらして下さい」
「スウィーツ店・・・。しかし、明日からですか。いいえ、何でもありません」
「フレデリク様」
ぽっちゃりに隠れて気づかなかったが、後ろに剣を備えた護衛らしい2人の男性がいた。
「あの、何かお困りですか?」
「私達は、優しいぽっちゃりの味方」
「こら、リリ!!」
「はっはっはっ。この体型を褒められたのは初めてですよ」
リリの失礼な発言にも男性は愉快そうに笑っていた。
護衛の2人も笑いを堪え、俯きながら体を震わせている。
「いや、申し遅れました。私はアスラーニ王国のルーベンという街で領主をやっています
フレデリク・シュミット(貴族位C)と申します」
「やはり、貴族様でしたか」
「どうか、気軽にフレデリクと呼んで下さい。そして、どうかこのぽっちゃりに力を貸していただきたいのです」
フレデリクは貴族らしからぬ物腰の柔らかさでそう言うと、私とリリに頭を下げてきた。
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