第76話

「お前っ! 何やってんだよお! おい、ミヤモトミヤ、ここからどうなるんだ?!」


「ああ、ええと、せ、せせ聖櫃が開いて多分、な、な中から、何かが出ます〜!」


 ミヤモトミヤが叫ぶのとほぼ同時に聖櫃の蓋が揺れ始めズレ始めると聖櫃の中から緑色の光が放たれ、辺りが暗くなっていく。


 周囲から黒いモヤが聖櫃の中に集まり始めいったん収まると、聖櫃の扉が勢いよく開き、中から黒いモヤが激しく噴出する。


 そして長く伸びたモヤが巨大な魔獣となっていく。


 その姿は、まるで蛇のような姿だったが、全身に毛が生えており、手足は4本あり、羽も生え、手には2本の刀を持っている。


 さらに、頭の上に角があり牙が生えた口は耳まで裂けていた。

 体長は10メートルはあろうかというほど大きく、口からチロチロと炎を漏らしている。


 その姿を見て、ミヤモトミヤは腰を抜かしその場に座り込んだ。


「なっ?! おいニッタァ!! どうすんだよ!」

「うへえ、ごめんなさーい!」


「ごめんなさいじゃねえよ。おい、やるぞ!」


 そう言いながら、ハルキは両手で魔銃を構えミヤモトミヤの前に立つ。


「ミヤモトミヤは下がってろ。あとは俺たちに任せてお前はあいつをなんとかする方法を考えてくれ」


「は、はい!」


 ニッタは魔銃ライフルを持ち構えると、ハルキと背中合わせに立ち、 二人同時に引き金を引いた。


 ドンッ!

 ドドドドドド!!!!


 二人の放った弾丸が魔獣に命中し爆裂音が響き渡る。

 しかし、魔獣は全く意に介さず、ハルキたちの方に向かってきた。


 二人は間合いを取りつつ攻撃を続ける。


 ドン!

 ドゴオオン!


 ドン!

 ドガアアン!


 魔獣の動きは速くはないが、一撃でも当たれば致命傷になりかねない威力があるようだ。


 ハルキたちは何とか攻撃をかわしているが、徐々に防戦一方になってくる。


 ドン!

 ドゴオオオンン!


 ドン!

 ドガガアア!


 弾を撃ち尽くしたハルキたちは弾倉を交換しようと一度後ろに下がると、その隙を狙っていたかのように魔獣が大きく口を開け、二人を飲み込もうと襲ってきた。


 二人とも慌てて横に転がり避ける。


 バクン!


 二人がいた場所に魔獣の大きな口が閉じられ、二人が立ち上がると再び魔獣が襲いかかってくる。


 それを二人で左右に避けてかわすと、また大きな口が開く。


 ハルキとニッタはその動きに合わせて、横に飛び退きかわそうとするが、その時、ニッタが足を滑らせバランスを崩し倒れてしまった。


 それを見たハルキが叫ぶ。


「ニッタァ!!」


 倒れたニッタは起き上がろうとするが、足がもつれうまく立ち上がれないでいる。


 そこへ魔獣が大きな口を開け迫る。ハルキはそれを見ながらも魔銃を構えようとするが間に合わない。


(くそっ!)


 魔獣の口に飲まれる瞬間、ハルキはニッタを突き飛ばし、自分が身代わりとなった。


 ハルキは魔獣に飲み込まれ、一瞬にして消化される。


 はずだった。

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