第5話 はじめてのキラキラ
学園の寮は外観が高級ホテルのような作りになっていた。基本的には貴族は一部屋、それ以外は相部屋になっている。
兄のタンジェは違う人と相部屋だったが、カイトが入学することが決まり、兄弟ということもあり同部屋となっていた。
「わぁー、思ったより広いし、久しぶりに兄さんと同じ部屋だね」
部屋の中には二段ベッドと机が二つ置いてあり、各自が使えるクローゼットが壁側についていた。
小さい頃は一緒の部屋で寝ていたが、タンジェが学園に入学するタイミングで僕は一人部屋になっていた。
「いや、頼み込んだら一緒になったんだ。やっぱり大事な弟と同じ部屋がいいしな。また一緒に寝ような!」
「えー、せっかく二段ベッドだから別に……いや、一緒に寝ます!」
一緒に寝るにはベッドが小さいと思い、断ろうとしたが、タンジェの地獄に落ちたような落ち込んだ顔をみて一緒に寝ることにした。
「さすがカイトだな。これからもずっと一緒だ!」
タンジェが僕に抱きついたタイミングで扉をノックする音が聞こえた。
――トントン!
「タンジェ入るぞ!」
知らない高身長の男性が扉を開けた。どこかで見たことある顔に記憶を必死に呼び起こす。
「おお、レインか。久しぶりだな」
「お前もな」
二人は拳同士を軽くぶつけ挨拶をしていた。
レインと呼ばれる男性はタンジェより身長が高く、180cmほどあった。
黒髪に青みがかった髪色で短髪に銀色の瞳をしている。
確か恋学のパッケージに載っていた人物だとすぐに気づく。
二人の様子を見ていた僕は心が高鳴る。今まで家族ばかりとしか関わって来なかったが、やっとゲームの登場人物でもあるキラキラした人が目の前に現れたのだ。
「兄さんこの方は?」
レインのことが気になった僕はタンジェに声をかけた。
「ああ、前同室だったレインだ!」
どこかタンジェは不快に感じたのか、普段より低い声で紹介してくれた。
レインは僕の顔を見ると止まってしまった。モブだからそんなに認識できないのだろうか。
「レインさん?」
僕とレインは約30cm程度の身長差があったため、レインを見上げていた。
「ひょっとして!?」
タンジェが間に入ろうとするが、それよりもレインの動きが早かった。
「あー、なんだこの可愛いやつは! 名前はなんて言うんだ? 俺と同じ部屋にしないか?」
あまりにも急な勢いに圧倒され、おどおどとしてしまう。それに気づいたのか、レインは跪くと僕の手を取り口付けをした。
「えっ!?」
あまりにも突拍子もないことに思考が追いつかない。
「おい、レインやめろ! 俺の大事なやつに触るな!」
――バチン!
頭を叩く音が大きく響いた。
「いってーな! ってか大事なやつって――」
「俺の弟だ」
「あー、前に言ってた弟くんか。こりゃー、誰にも渡したくないわな。なら俺にくれて――」
再びレインを叩く音が聞こえる。いい加減叩きすぎのように感じる。
「おいおい、ひでーな!」
「お前が変なことを言うからだ」
文句を言っていてもタンジェとレインは仲が良いのだろう。そんな二人を見て僕は温かく、キラキラなこの二人を見守ろうと決めた。
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