目覚め
白い光が差し込んでくる。眩しい。
徐々に視界が回復していくとともに、背中の痛みも感じ始めた。
「――君、大丈夫?」
少し高い声がした。視界に女性の顔が大写しになる。
ボブヘアの女の子。少し顔立ちは幼いけれど年は僕と同じくらいだろうか。
可愛いけれど、知らない子だ。
「あ、うん。ここは?」
「わからない。――君も知らないんだね」
「ああ。……寝ていたのかな」
左右に視線を動かし、部屋の中の様子を窺う。
硬い壁にもたれかかったまま眠っていたらしい。
四方を白い壁に囲まれたその部屋は、煌々と光るライトに照らされていた。
蛍光灯は見えない。壁面にそのまま白色LEDが埋め込まれているのだろう。
「気を失っていたって感じかも。私も記憶がないから。ここに来るまでの」
「そうか。僕も――記憶はないな」
「じゃあ、協力しましょう、工藤知也くん。私も早く帰りたいの」
そう言って、彼女は右手を差し出した。
白くて小さな手。きれいな肌に触れることを、一瞬躊躇した。
けれど親切心を無下にもできずに、掴んだ。そして立ち上がる。
「ありがとう。でも、どうして僕の名前を?」
「だって、胸に書いてあるから」
「本当だ」
彼女の指さした僕の左胸には小さな白いプレートがバッヂみたいにつけられていた。
同じような名札が彼女の胸にもあった。
「――榎本香菜?」
「あ、うん。香菜って呼んでくれたらいいよ」
「じゃあ、僕は知也でいいよ」
「わかった。よろしくね。知也くん」
「よろしく。香菜」
はにかんだ彼女の微笑が白い光の中で揺れる。
その時、部屋中に大音量の声が鳴り響いた。
『みなさん、ようこそ、チューリングルームへ! これから皆さんにはデスゲームをエンジョイしていただきますぅ!』
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