第14話 ナタリアとマッシモ
side:ナタリア・ヴァイスハーフェン
王妃様の私室から出た私は急いで第2騎士団が展開している東門にやって来ると
東門横に作られた物見櫓に見知った顔を発見したのでそちらに向かいます。
「マッシモ!状況は?」
「ナタリア?!どうしてお前がここに、王妃様の護衛はどうした?」
「レベル9の命令が出されたんだ、騎士団と協力して魔物を殲滅しろってね。」
「確かに王国の最高戦力を温存させる余裕は無いか」
「ところで団長達の姿が見えませんが」
「そっちは会議中だ、主に魔法使いの配置に頭を悩ませてるみたいだな。本来ならナタリアにも会議に参加して欲しいんだが」
「そこは遠慮しておきます。私はこう見えて会議とか戦略を考えるとか苦手なんです!」
「いや、そんなに堂々と言われても困るんだが、まぁお前は敵の真ん中に放り込んで好きにさせた方が効率は良いだろうな」
「女性を敵の真ん中に放り込むとか、マッシモは鬼ですか!」
「鬼(オーガ)を瞬殺するナタリアに言われたくは無いがな(笑)」
まったくマッシモは私の事を何だと思ってるんだ!
まぁ今回は許してあげようかな
櫓の下で緊張した面持ちで待機していた第2騎士団の団員達も、私とマッシモの声が聞こえていたのか必死に笑いを堪えているのが見えます。
過度な緊張状態ではゴブリン相手にも殺られてしまいますから、部下の緊張をほぐす為だったのでしょう
マッシモもちゃんと副団長をしているんですね
「戯れもほどほどにして、そろそろ真面目な話をしましょう」
「あぁ、付き合って貰って悪かったな。現状は東、西、南の各門に向けて魔物が迫っていて第一波の総数は約400、接敵は約25分後」
「内訳は?」
「斥候によればゴブリンとコボルトが半々らしい」
「問題は第二波以降ですか?」
「まぁな、ゴブリンとコボルトなんぞ民兵に弓矢を射させておけば良い。まだ斥候が戻らんからはっきりした数は不明だが、オーガ、ミノタウルス、ハーピー、セイレーンが目撃されている」
「何ですかそのレア魔物オールスターは」
「オーガはともかく、ミノタウルスがダンジョン以外で目撃されるなんざ聞いた事ねぇな。それにハーピーもセイレーンも人目を避ける習性があるから、向こうから来るのは異常と言える」
「ここまでの状況を考えるとジェネラル級の知能を持ってる奴が魔物を率いて攻めて来たと考えるのが自然ですね」
「あぁ、国王陛下にもそのように報告をあげている」
「それなら私が呼ばれたのも納得です。地上と空の両方から攻められれば、籠城作戦はあまり意味を成さないですから」
「もしかしたらこっちの魔法使いの魔力切れが狙いかもしれん、主力をミノタウルスと見せかけておいて本命は空からの攻撃じねぇかと俺は睨んでる」
「可能性は高そうですね」
「マッシモ副団長ぉー!」
ん?
伝令が櫓の下からマッシモを呼んでいますが、汗だくで既に疲労が伺えますね
しかし今日ばかりは伝令に休みは与えられません、各門に別れて展開している騎士団との連絡は密にしておかなければ
何処か1ヶ所でも突破されると一気に王城まで攻め込まれるおそれがあります。
「どうしたぁー!」
「団長からです!魔法使い、騎士見習い、民兵は魔法と弓矢でハーピーとセイレーンの撃墜に専念、他は街から出て魔物を殲滅せよ!との事です。」
「団長は何処に行ったんだぁー?」
「はっ!各騎士団長は単身で外に出て、今回の魔物を率いて来た指揮官を見付けて討伐するとの事です!」
「了解した。野郎共、突撃の準備だ!途中で転んだ奴は罰として1ヶ月のトイレ掃除だ!それが嫌なら死ぬ気で俺に付いて来い!」
「そう言う副団長が最初に転ばないで下さいよぉ~(笑)」
「「「「「ぎゃはははははは♪」」」」」
「ふふっ、マッシモ副団長は団員達から慕われているようですね(笑)」
「どうせナタリアは俺が団員達に馬鹿にされてると言いたいんだろう(怒)」
「いえいえ、頼もしい団員達じゃないですか将来が楽しみです♪」
「当たり前だ、俺が毎日鍛えてやってるんだからな!」
「それでは私達もそろそろ降りて準備をしますか、一番槍は私が貰って良いんですよね?」
「あぁ、そもそもウチの団員じゃナタリアのスピードに追い付けん、先頭で出たらそのまま雑魚は無視してミノタウルスを倒してくれ、他はこっちで抑える」
「任せて下さい!マッシモが転んでトイレ掃除の罰を受けない事を祈っておきます♪」
「うるせぇ!冗談言ってないで行くぞ」
「はいはい(笑)」
つづく。
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