第10話 磯貝政十郎と真柄安兵衛

side:マサ




「おやっさん、ただいま戻りました。お嬢さんはきっちり送り届けてきやした!そして間違いなく薄味屋の店主です。」


「ご苦労だったなヤス」






俺は名もない島国出身で名前は、磯貝政十郎(いそがいまさじゅうろう)42歳、『飯処・政』の店主をしていて周りからはマサと呼ばれている。


同じく島国出身で一緒に働いてるのは、真柄安兵衛(まがらやすべえ)19歳、俺はヤスと呼んでいる。



島国と言ってるが実際は小さな集落が集まってるだけなんだが、まぁ訂正すんのも面倒だから島国って事で通している


そんな島国出身の俺達2人は里の長から他国に行って、情報収集をするように命令を受けた『草』と呼ばれている存在だ


『情報収集』と言えば兵力や兵器等の軍事機密を探るイメージがあるだろうが


俺達がやってるのは街で普通に暮らして得られた情報を里に報告する事だ。



例えば小麦や塩等を含めた生活必需品の値段を調べたり


水道や街道なんかのインフラの整備状況


街で犯罪が起きた時の対応等々多岐にわたる。



そして1番重要なのが、俺達の故郷の島国を侵略する兆候が無いかを探る事だ


万が一、大軍を送り込もうとしているなら何とかして船を沈める事も任務に含まれてはいるが


まぁそうならないように願うばかりだな。



そんな俺とヤスは島国で作られた米をメインに使った飯屋をやっている。味噌と醤油があればメニューのレパートリーが増えるんだが


生憎と生産量が少なく年に数回の特別な日の料理にしか使えないのが残念だ(悲)


幸いにもスパイスを使った刺激的な料理と米の相性が良いんで、それなりに繁盛しているがな♪



そんな生活をしている俺達の所に突然やって来たのが、マリエールと名乗る謎の女だ


味噌と醤油が欲しくて訪ねて来たと言ってたが、はっきり言って怪し過ぎる!



俺達が島国出身だという事は隠してねぇから、調べれば直ぐに分かるだろうが


俺達が『草』だと知っているとなると放置は出来ん、いざとなれば口封じも辞さぬ!という決意のもと話を聞こうとしたのだが


実際は本で読んで知識として知っていただけで、まさかお嬢さんにカマをかけられるとは思わなかった


完全に俺の失態だ



だがしかし


長年『草』として生きてきた俺の勘が言っている


あのお嬢さんを敵に回しちゃなんねぇと


見た目は品の良さそうなお嬢さんだが、見た目と中身が伴わない奴なんざ珍しくもねぇ


瞬時の判断で俺はお嬢さんと友好的な関係を築く事にした


けっして味噌と醤油が欲しかった訳では無い!、、、と言い切れないのが情けねぇが


自分達で味噌と醤油が作れれば、毎日朝食に味噌汁が飲めて焼き魚に醤油をかけて食べられる魅力には勝てん!



そういう訳でお嬢さんの味噌と醤油作りに協力する事にしたのだが、本当に作れるのか?


魔法を使うと言っていたが、そっちは完全に専門外だから全く想像すら出来んしなぁ


とにかく大豆の他に必要な物を買って来よう


お嬢さんに関しては世間話でもしながらゆっくり情報を集めれば良いだろ、それこそ『草』としての腕の見世所ってもんよ♪






つづく。

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