第6話 余韻

side:マリエール




はぁ~


夢見心地とはこういう事なのでしょうか


お店にナタリア様が来られて、試作のお好み焼きを食べて満面の笑顔のナタリア様を見た後から何も覚えていません


気付いた時には、ナタリア様はお店の商品を両手いっぱいに抱えてご機嫌で帰って行く所でした



あぁっ?!


なんという事でしょう、わたくしのバカアホマヌケ!


ナタリア様のお見送りを怠るなんて(泣)



「マリエールさん、落ち込んでいる所申し訳ありませんけどナタリア様からお菓子の追加予約が入りましたので仕込みをお願いします。」


「あっ、はい、かしこまりました。」



あれ?


突然のナタリア様来店で忘れていましたけど、お店はまだ開店前でしたよね?


だからこそ、わたくしはお好み焼きの試作をしていたのだから


お店の入り口を見てもちゃんと『closed』の看板が出してありますし、ナタリア様はお店の常連のようですから看板を見落としてお店に入って来た訳では無いと思います。


とりあえずお店に入ってみた、という事なのでしょうか?



「あのリィンさん、ナタリア様はいつもこの時間に来られるのですか?」


「そうですね、ナタリア様は優先購入権を持っていらっしゃいますし、開店してからでは他のお客さんが騒いでしまうかもしれませんので」


「優先購入権?」


「はい、シュヴァイツァー公爵家からの推薦枠ですね。ナタリア様が定期的に来店されるようになった少し後に、マリエールさんのお父様から打診されました。


他のお客さんがナタリア様を見て騒ぐ事もありましたし、ナタリア様なら優遇されても問題になりませんから」


「了解しました。」



わたくしがナタリア様を優遇すると公私混同で問題ですけど、お父様からのお願いならなら仕方ありません


そもそもこのお店はシュヴァイツァー公爵家のお陰で出来たような物ですから構いません


わたくしの知らない間に『推薦枠』が出来ていた事に関しては、追求はしないでおきしましょう。




「忘れる所でしたけどナタリア様が牛肉を使った料理があれば完璧なのに、と呟いていましたけれど


マリエールさん、牛肉を使った薄味料理はありますか?」


「牛肉を使った薄味料理ですか、少し時間を下さい」




さてと


牛肉を使った薄味料理ですけど、本には色々と書いてはあったのですが調味料が手に入らないので断念していたんですよね


ナタリア様が求めているのはおそらく、スパイスの刺激が少ない牛肉料理という事なのでしょう


ナタリア様が求めているのなら絶対に作って見せます!



しかしですね


これはなかなか難しい問題です。


牛肉はスパイスの刺激と相性が良いですから、スパイスを使わないとなると結局調味料の問題に行き着いてしまいます。


大豆から作られる調味料があれば『すき焼き』という料理が作れるのですが


何か本に書いて無いでしょうか、、、



むむっ!


ハンバーグ?


細かくした牛肉に色々と混ぜて焼いた料理ですか


つなぎを増やしたり『大根おろしポン酢』でさっぱりと、、、ポン酢?


島国で作られている調味料でしょうか?


これは謎の島国を本格的に研究する必要がありますね


待っていて下さいナタリア様


あなたの為ならば島国の調味料程度直ぐに調べて参りますので!






つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る