第9話 安心の現代版です。
「
ドン引きさせておいたくせに軽く言いながら、ナオキは準備の手を止めていなかった。
「手順を説明するよ。そこに立ってもらったら、まずその四隅にある装置で、君たちの
この説明に、若者三人が明らかに面食らっていた。
「しばらく立ってれば、それで十分だから」
「えっと、どのくらいかかりますか」
「この装置だと二分くらいかなー」
一歩間違えれば宇宙空間にポイと投げ出される、と説明したにもかかわらず、カップ麺を作る程度のシリアスさしかそこには無かった。
「じっと立ってるって、どのくらいビシッとしてなきゃダメですか」
「まっすぐ立ってられない田舎のヤンキーみたいに、体の軸がフラフラしてる程度なら大丈夫。静止してるほうが
具体例を出しても、若者三人はピンと来ていない様子なのを見て
「田舎のヤンキーなんか縁がねえんじゃねえのか、この子ら」
と、義父がツッコミを入れた。
「あ、そうか。都会っ子の可能性がありましたね」
納得顔でうなずく中年エルフ。
ナオキのハイエースのナンバープレートは、昭和の風情を残す暴走族が出ることで知られる、某地方のものだった。
「まあいいや。とりあえず可能な限りじっとしててもらって、
「やり直しの場合、なんかまずいことありますか」
「コストがかかる以外には、特に無いかなー。ゲートに異常が起きた時にもすぐ逃げ出せるし、その四角から出ちゃうとゲートも消えるようになってるからね。まずいと思ったらオレが声をかけるから、さっさと出ちゃってね」
「うわぁ、事故りそう……」
「不吉なこと言わないでくれない?!」
お互いに不吉なことを言っている若者の顔がますます引きつっていたが、
「というわけで、最初の一人は誰かなー」
と、ナオキはまったく気にしていなかった。
「こっちにいる時間が延びると、
「え!」
「タイムリミットは48時間しかないよー」
「……
明らかにほっとした顔になり、若者の一人が手を挙げた。
「僕、行きます」
「はいはい。じゃ、そこに立って」
おっかなびっくり立った若者が動きを止めたのを確認してから、ナオキはブルーシートの上の一点に触れた。
「何も起きてないように見えるだろうけど、じっとしててね。もう始まってるよ」
「え、あ、はい!」
ビシッと固まった若者が、そのまま待つこと1分47秒。
「ゲート開けるよ」
ナオキの空いている方の手が、回路の別の場所に触れると。
「え、なにこれ」
若者の目の前に、日本の光景が映し出された。
どこかの道路の歩道だろう。二車線道路を車が行き交い、目の前をのんびりと電動アシスト自転車が通り過ぎていく。
「その映像っぽいところに入っていけば戻れるから。出たところで、横から来る歩行者とか自転車に気を付けてねー」
「え、これ、それでいいの!?」
「良いから
そして五分後。
明らかに腰が引けたまま、若者がゲートをくぐった。
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