【完結】転生者(の親族)のオレがアップルハザードで王位についてしまった件
いろは えふ
第1章 異界からの来訪者(巻き込まれの始まり)
第1話 強欲の林檎の伝説
この世界、天と地が交わる未踏の楽園。その境目には、奇跡の実を付ける林檎の樹があるという。
強欲の林檎と呼ばれるその禁断の果実を手にすれば、世界はおろか、この世の全てを統べる事が出来るとされている。
強大過ぎる林檎の力の統治権を巡り、空と海は、人間の生では計り知れないほどの長い時を牽制し合いながら、仮初の平和を保っていた。
危うい平和と中立は、ある男女の罪によって崩される。2人の大きな罪は原罪として、子々孫々までにも受け継がれ、人間は苦しみの中短い生を与えられる事になったのだそうだ。
これはそんな罪を背負う転生者……ではなく、その罪に否応なしに巻き込まれてしまった親族の青年が、本当の愛に気付くまでの成長譚。
TUEEEやバトル、チートも無いけど、不器用な彼らをそっと応援したくなるかもしれない。ビターラズベリーショコラのようなストーリー。
お立会いの皆々様。心の準備は出来ましたかな? それでは皆様、よい旅路を――。
ゴロゴロゴロ…… ピシャンッ――!
黒い雲が空を覆い、時折雲の合間を閃光が走る。暗い部屋に転がる男女の肢体。
その闇を照らすように輝く、金髪碧眼の美しい少年が、忌々しそうに男女の亡骸と空っぽのゆりかごを睨みつけている。
「チッ……花を手折るだけじゃ飽き足らず、この世界全てにとっての宝物までも奪おうというの? このボクから?」
容姿に見合わぬ低い声で、少年は苦々しく噛みしめて、乱暴に部屋を出て行った。
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