ラピスラズリは雨に弱い

綾瀬澪栞

1. 終わりのはじまり

 12時の気象通報をお知らせします、、、

函館では西北西の風、風力5 ゆき 00hPa -7℃

浦河では北西の風、風力5 はれ 90hPa -4℃

根室では西南西の風、風力5 くもり 83hPa -6℃

稚内では西の風、風力4 ゆき 88hPa -5℃

ポロナイスクでは北北西の風、風力6 地吹雪 80hPa -12℃

ハバロフスクでは南西の風、風力2 はれ 12hPa -7℃

ウラジオストクでは北の風、風力5 快晴 20hPa -7℃

富士山では北西の風、風力8 はれ 614hPa -28℃

北緯50度・東経149度には960hPaの低気圧があって、ほとんど停滞しています

北緯37度・東経152度には992hPaの低圧部があって、ほとんど停滞しています

北緯50度・東経110度には1044hPaの高気圧があって。ほとんど停滞しています

北緯42度・東経110度には1042hPaの高気圧があって、ほとんど停滞しています


日本付近を通る1020hPaの線は、北緯......................



 この冬は日本海側の北の方で前が見えなくなるほどの暴風雪が頻発して、鹿児島から意気揚々と日本一周徒歩の旅に出発した大学生のグループが遭難しかかって、偶然にも運休にならなかったバスにバス停の小屋で身動きが取れなくなっているところを発見され、凍死することなく助けられたらしい。

 再生回数稼ぎ目的か、自虐ネタのようにその様子や経緯を動画に載せて炎上している様がネットで話題だ。


 私は空を見るのが好きだ。中学2年の時の理科2分野で天気のこと、天気図を描くことを習ってから、空を見るのがとても好きになった。空の色が白かったり青かったり、とても赤く染まったり、、、これはなぜか、とある日尋ねたことがある。


 「レイリー散乱」

 太陽からの光が差し込むときに、光の波長よりも十分に小さな粒子に当たるとき、その粒子に当たった光が散乱して空が青く染まる。夕焼けが赤いのは、光が通過する距離が長いため、波長の短い光は途中で弱くなり、赤い光だけが散乱されるかららしい。


 中学3年の冬、というか春、いや、冬。私は推薦入試で高校に入ったから2月には今の高校に進学することが決まっていて、みんなは3月1日の卒業式の後の合格発表までの約2週間、ハラハラした日を過ごすのだが、お気楽な私は、父に連れられて10日間サイパン旅行に出た。父は戦争のことをよく知らない割に、私に言わせればミーハーなところがあって、私たちの世代にはきちんと見ておくべき歴史がある、と広島や長崎にも連れて行かれたこともあるし、他にも戦地はあっただろうに、今回はなぜかサイパンなのだ。


 海はとてもきれいで、青い。あの海の底から上を見上げた時、どんな景色が映るのかな。


 潜ってみたいと言うと、ダイビングには免許があることを知らされる。どうしても潜ってみたいと頼んで、サイパンではある程度日本語が通じるのに、父は得意の英語で現地の人から情報を集めて、どうやら10歳からでも取得できる免許があって、3日間の講習課程を受けて認定されれば、私の場合は18メートルまで潜っても良いらしいが、成人のダイバーと一緒でなければならないらしい。

 ついでだからと父も免許を取った。私だって、英語はソコソコ・・・。というか、講師の人たちは日本人だったし。笑


 緊張と不安と期待で潜る海。海の底から上を見上げてみたい、私の資格でできる場所に連れて行ってもらった。

 ドボンと海に入ると、まっすぐ底に向かって進む私。講師の人も父もついてくる。底にたどり着くと、空が周りを囲んでいるような青さ。海面では三角波に揺られて時々白い光が漏れるが、黒とも紺とも言えない色。

 美しかった。


 『魚とかサンゴは?』


 水中ボードを見せられる。


 『今日はこのまま上を眺めていたい』


 『ハイハイ』


 ・・・『明日、魚を見ていい?』


 『まだ3日あるから、また明日ね』



 学校のプール授業や夏休みに行く海水浴場、それだけではこんな景色を眺めることはできなかった。高校に入って、私は水泳部に入って、最初の1年は頑張れたけれど競技としての水泳は、競技しかなく、いつも床ばかりか天井ばかり眺めるしかないので、2年になってからはすっかりつまらなくなって辞めた。髪の毛を通り越して頭皮まで水が染み込んでくるあの感触、自分の呼吸音しか聞こえなくなってくるあの感覚、その特別さがこの水の部活にはなかった。


 ここまでの16年間の人生はそんな感じ。

 私は千早、永野千早ながのちはや。夏の学校祭で私には特に割り当てられた仕事はなかったので、放送部の友達は放送局にいるし、冷房完備のスタジオの中に入り浸って、あついね~、だるいね~なんて話をしていたが、大会に向けたドキュメンタリー番組制作の取材で校内を回って歩く時間だから、部外者はどこかに行けと追い出され、お金もないし、帰宅部の私は本当にヒマになってしまったので、他のクラスや部活の展示にはあまり興味がないのだが、いよいよどうしようもないからフラフラとあてもなく校内を彷徨うことにした。

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