第34話 伊藤律野

 伊藤は俺の言葉に苛立ちつつもこう返してくる。


「とんだ無駄足だったか...。まあいい。ゲートの一つクリアできなかったとしても問題ない。ゲートは世界中に沢山できているんだからな」


 驚きの言葉を言い放つ彼。


「何っ!? ゲートが世界中で発生しているだと!?」


「なんだ知らないのか? あれから1週間くらいが経つが、おかげで俺たち【職業】の力に目覚めた【覚醒者】達は随分と儲けさせて貰っているぜ。普通に働くのがバカに思えるくらいの大金がガッポガッポ入ってくるんだからこれほど愉快な事はない」


 大声で笑う伊藤の声室に嘘偽りはなさそうだ。


「しかしまあ、雑魚の高坂君だけでどうにかなるとは思えない。そうなるとやはり愛川さんが凄い職業の力に目覚めたのかな?」


 ジロジロと結美のことを見てくる彼に対し蜜香が前に立つ。


「あんまり女性をジロジロと見るものじゃないですよ?」


「これは失敬。ご忠告ありがとう」


 ふっと鼻で笑う彼の態度はやはり気に食わないな...。


「では今日はこの辺で。あっ...そうそう。高坂君以外のクラスメイトは全員この底辺な【中央高等学校】から最高学部の【正十字学園】に転校することになったからもう会うこともないかもしれないけどね」


「何っ!? 【正十字学園】だと!? なんで偏差値25のお前が入学出来るんだよ!?」


 そう聞き返した時に彼は笑ってこう返してくる。


「今の時代の偏差値は学力ではなくだぜ! 正直言うとなこんな喋り方してるのも一応お堅い連中の仲間入りをしているからなんだぜ! ハハッ! 俺みたいな低学歴が高学歴様と肩を並べられる時代が来るなんて最高だな!!!」


 彼は高らかに笑いながら背を向ける。


「じゃあな! 低学歴ども! 俺は実力主義の世界で伸び伸びやらせて貰うぜ!」


 彼は「はははは」と高笑いを上げながら何処かに向かっていくのだった。

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