第2話:とりあえず街の中へ

何はともあれ、ギルドの登録は必須だと思うんだよ。

身分を証明できるものが無いからね。

そのためには街の中に入らないといけないんだけど、それもお金がかかるよね?

それとも、この時代は違うのかな?

必要な金額を確認しよう。


ちょっと質問があるんだよ。

「なーに?お嬢ちゃん」

街に入るために並んでる列の最後尾の人に質問する。

冒険者っぽい感じのお姉さん。剣士かな?


この街に入るにはいくらお金が必要?

「旅人?ってわけでもなさそうだけど・・・ご両親は一緒じゃないの?」

親は居ないんだよ。冒険者に登録したいんだけど、お金がどれくらい必要?

「どこかの村から出てきた感じなのかな?」

まあ、そんなところなんだよ。

「街に入るには銅貨5枚、冒険者登録は銀貨3枚かな?」

ん?

なんか値段が記憶と違うんだよ。

そうか、そもそもお金が違うんだよ。この時代だと古代金貨の時代なんだよ。

それって薬草の採取だと何束くらい?

「なーに?お金がないの?貸してあげようか?」

い、要らないんだよ!?

「そう?本当に大丈夫?」

借金奴隷は嫌なんだよ!

「あーあ、逃げちゃった。別に借金奴隷にしようなんて思ってないんだけどな・・・」


あ、危ないところだったんだよ・・・

ちょっとお金の相場がよくわからないけど、とにかく薬草なんだよ。

森に生えている草を選別しては根っこから引き抜いていく。

前と同程度の価値観なら、街に入るのに銀貨1枚でギルド登録が銀貨5枚で合計銀貨6枚。

薬草が1束銅貨3枚で買い取りだから、全部で薬草が200束あれば大丈夫なんだよ!

貨幣が違っても物の価値はそれほど変わらないと思うんだよ!

とにかく薬草の採取でお金を稼がないと!


夢中で薬草を採取してると気配を感じて震える。

背中がゾワゾワしたから何かが来るのはわかってるんだよ!

立ち上がって振り向けば、何やらガサゴソと物音がする。

せめてゴブリン程度ならどうにかなるかもしれないんだよ。

でも、おそらく呪いのせいでオークとか強い魔物が出てくるんじゃないかな?


うわぁーお!トラさんなんだよ・・・

これはもしかしてオークどころの騒ぎじゃないんじゃないかな?

さて、どうしようか?

もしかすると友好的なトラさんだったりは?


ガォウ!


うん、明らかに友好的じゃない雰囲気なんだよ。

街の入り口まで逃げればどうにかなるかもしれないけど、逃がしてくれないよね?

それに、他の人に迷惑がかかっちゃうんだよ。

どうしようか?脅かしたらどっかに行ってくれないかな?

大きな音を出せばびっくりするよね?何かないかな?

目くらましとかはどうかな?それとも落とし穴とか?


逃げてもすぐに追いつかれるよね?逆に言えば逃げれば追いかけてくれるんだよ。

罠に向かって逃げれば誘い込むことも可能なんだよ!

それなら!


ぽてぽてぽて!


全速力(ただし、『すばやさ』は1)で走って逃げる!

目指すはすぐそばの岩!別にたどり着けなくてもいいんだよ。あと少し、もう少し・・・

よし、岩を拾えたんだよ!あとはこのまま駆け抜けて・・・

振り向いたところでトラさんがジャンプ。

私の体重は支えられたけど、トラさんの体重を支えられなかった地面が陥没。

岩が埋まっていた場所が落とし穴になったわけで、とどめに穴の真上に岩を取り出す。


どすん


これはさすがにトラさんでも避けられないよね?

私じゃ走り回ってるトラさんに岩を当てるのは無理だからね。

これで倒せたかはわからないけど、ダメだったら何回か岩を落とせばいいんじゃないかな?

岩を収納してトラさんの状態を確認。動かないみたいだけど?

うん、収納出来たね。何とか危機は乗り切ったんだよ!

次の魔物に襲われる前に街に戻ろうかな?

トラさんを買い取ってもらえばそこそこの金額になるんじゃないかな?


ふぅ、どうにか無事に街の門までたどり着いたんだよ。

あとはどうにかしてこれをお金に変えないと・・・

「つーかまえたっ!」

うわぁぁぁぁぁぁぁ!?

「ごめん、そこまで驚かすつもりはなかったんだけど・・・」

さっきの冒険者のお姉さんなんだよ!?

「薬草の採れる場所は知ってるのかと思って・・・」

それは大丈夫なんだよ。

そこの森の中でたくさん見つけたんだよ。

「そっちは『魔獣の森』よ?薬草なら西門のそばの『近くの森』で採ったほうが安全なのよ?」

でも、西門はぐるっと反対側なんだよ。だからこっちの森で採取しました。えへん!

「こっちの森は危ないのよ?狼とか熊とか出てくるんだから!」

出てきたのがトラさんなのは黙っていた方がいいのかな?

「それで薬草はどれくらいとれたの?」

全部で283束かな?

「それだけあれば足りると思うけど・・・どちらにしても街に入る時にお金が必要なのよ?」

それはこれから考えるところだったんだよ・・・


「そんなわけで街に入る分のお金は貸してあげます!安心して借金奴隷とかにはしないから!」

本当?悪い人はみんなそう言ってだますんだよ・・・

「それにギルドでの買取も冒険者じゃないとダメなのよ?登録もまだなんでしょ?そのお金は?」

うぅ、やっぱりお姉さんに助けてもらいたいんだよ・・・

「あと、アタシの名前はニニアよ、よろしくね!」

そんな・・・全然顔も違うのに・・・なんで?

「ちょっとどうしちゃったのよ?」

な、何でもないんだよ。私はリーゼロッテ。よろしくなんだよ!

「はいはい、リーゼちゃんね?」

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