第46話:黒、おもちを登録する
「うむ、やはりおもちは素晴らしい存在だった。とてもおいしい」
お口の周りをきな粉でベタベタにしているおもち。大満足といった顔だ。
ところで、おもちがお餅を食べてるのは問題ないのかしら?
まあ、私も目の前においしそうなお菓子を出されて、
「これは『リーゼロッテ』です。どうぞお召し上がりください」
って言われても特に気にしないで食べるかもしれない・・・そんなものか。
さてと、とりあえずこの娘をどうしようかしら?
「おもちは仲間になる。おいしいものくれたお礼。それにお前は硬い!」
そう言えばスライムにとっては硬くて弾力があるのが偉いんだっけ?
ところであなたはこの階層のボスってことでいいのかしら?
他にそれっぽい存在はいないし、この娘がボスを討伐して乗っ取ってるっていう可能性もあるけど・・・
ところで、次の階層に行くにはあなたを討伐しないとダメなのかしら?
「おもちにはわからない・・・」
なんかさっきからすりすりすり寄ってきてるけど、どういう状況?
「この部屋の守護者はおもちだった。でも、お前の仲間になる」
うーん、ある意味攻略ってことでいいのかしら?
とりあえず、部屋のドアを開けてみればいいわね。
「司令官さん、すでにマカロンちゃんが階段を降りちゃいましたけど・・・」
勝手すぎるんだよ・・・
仮にも大隊長なんだから、もっと慎重に行動してほしいんだよ。
でも、一応階層主を倒した扱いになったみたいでよかった。
せっかく手に入れた『ミロン』を失いたくないからね。
「みろん?それ、おもちの新しい名前?」
そうよ。あなたは今からミロン。
「では、グラニテちゃん大隊は拠点構築!」
大隊とは言え、殆どのメンバーは25階層や50階層の拠点保持と、地上との物資の運搬でここには居ない。
「マカロンちゃん大隊は大隊長を連れ戻して来い!」
自由過ぎる大隊長も困ったもんだけど、あんまり縛り付けてもダメだ。
なんせ、シャーリーのかけらなんだし。自由にさせてこそ真価を発揮する。
「クレープちゃん大隊は食事の配給準備!」
餅つきの続きとそのほかの付け合わせとかを作り始める。
さてと、ミロンを正式にメンバーに追加しないとね。
面倒だけど一度戻るしかないか・・・
往復で約150階層分か・・・地味に遠いな・・・
ここまでの道のりは1本道にしてあるけど、ショートカットはない。
ミロン、ちょっとだけ地上に戻るよ。出口ってあったりしないよね?
「出口はない」
まあね。ここまでの道のりもすべて階段だった。
テレポーターの罠もない。地道に歩いて戻るしかない。
幸い道中の魔物はすべて間引いてある。
新たに湧いたやつも物資の運搬のついでにすべて殲滅している。
「指揮官さん、護衛に何名つけましょうか?」
問題ない。護衛は不要。行くよ、ミロン!
ミロンはスライムの姿になって私に抱えられる。
回復薬もあるし、MPももつと思う。
ふわっと身体が宙に浮いて高速で飛翔する。
通路も階段も何もかも関係なく飛んでいく。
「おまえすごいな・・・ミロンは飛べない・・・」
私だって最初は結構苦労したんだよ。
練習に練習を重ねて今では思い通り自由に飛ぶことが出来る。
薄暗い石造りの通路をひたすら飛んでいく。
途中、物資の輸送班とすれ違ったり、または追い抜いたり・・・
50階層の中継基地をスルーしてひたすら進んでいく。
「おまえ疲れないのか?」
まだ大丈夫だけど、次の中継基地で休憩しましょう。
それと、私の名前はリーゼロッテ。
「りぜろて」
言いにくかったら、リーゼでもいいわよ?
「りーぜ!」
ほら、大広間が見えてきた。あそこで休憩よ。
「指揮官殿!」
ああ、何か簡単な食事をお願い。この娘の分もね。
ミロンは今は人の姿をしている。
「いったいどうしたのですか?」
75階層に居たのを保護したのよ。
「何故そんなところに?」
この娘はこれでも階層主なのよ?
「75階層のですか?」
ええ、こんなかわいい見た目だけど、私の障壁を何枚もぶち抜いたのよ?
「羊のトマト煮込みと黒パンになります」
おいしい。ダンジョンでも普通に暖かい料理が食べられる。アイテムボックスを使わなくても・・・
「これうまい。ミロン気に入った」
ぎこちない仕草でスプーンを握って、お口の周りをべちゃべちゃにしながら一生懸命食べている。
それを見かねたメイドさん・・・って全員メイドか・・・がナプキンでミロンの口を拭ってあげる。
戦闘集団ではあるけど、基本はメイド。どうしてもお世話したくなるようだ。
さてと、もうひと頑張りかな?
ここからは一気に地上まで行こう!
再び宙に舞い上がり、ほどなくして地上に到着。
真夜中だった・・・
これじゃギルドでの登録も出来ないね。
もっとも、ここはまだダンジョンの入り口であって、街の中ですらない。
まずは近くの街のギルドに行かないとね。
とは言ってもこの時間じゃまだ門が開いてないか・・・
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