梅雨入りの花と風が咲き枯れたモノ
優蘭彗 吹雪(ゆうらんすい ふぶき)
第一話 梅雨入りの夜
頼…ました…次の記憶の〜、必ずしも…の〜を……さい
〈……だれ?〉ある声が聞こえた。
よく聞こえなかったが、その声をかき消すように
「…い」 「おーー…」「おーーーい…」「だいじ…ぶ…すか」
誰かが呼んでいた。意識が朦朧としている中,風が吹くと共に私は目を開けた。
目の前には女みたいな男みたいな背が160後半ほどの制服を着た人が居た。きっと部活帰りの学生だろう…
「大丈夫ですか?具合悪いとことか怪我してるとことかありませんか?」と学生さんが心配していた。
私は「大丈夫です」とだけ答えておいた。
学生がホッと一息ついたあと名を名乗った。
「僕、野月青嵐と申します。あなたのお名前は」
せいらん…か、初夏の頃に吹く風という意味だった気がする。
名前を訪ねられた私は戸惑いながら青嵐に言った「あっ,えっと…な,名前…ないです」
この言葉を聞いて青嵐は目を開いて口がポカーンと驚いた顔をしていた。まあそうなるだろう。1分くらい経って青嵐はなんとか整理をつけて微笑んだ顔でこう言った…
「じゃあ僕が君の名前をつけるよ!えぇっとー」
いきなりのことに私は緊張と混乱で身体中に汗をかいていた
5分くらい経った頃青嵐はまだ悩んでいた。名前を考えてくれるのは大変ありがたいのだが…ずっとここにいるわけにもいかないので、青嵐に提案した
「ここを移動しよう」と
「…そうだな,僕の家でいいならしばらく泊まってって」
なんて優しい人なのだろう、腹黒は気のせいだったのだろう。
「君、親とかの連絡先知ってる?咄嗟に泊まってて言ったけど君にも家はあるだろう?送ってくよ」
さてどうしたものか私には名前もないし家もないついでに親もいない…とりあえずこう伝えた。「親はいません、家もありません。私…記憶がないんです。」またもや青嵐はポカーンとしていた,無理もない。
気を取り直し青嵐は「僕の家に行こう、アパートだけどいい?」
「かまいません!ありがとうございます,」私は笑った
アパートということは青嵐は高校生なのだろうか後で聞いてみよう。帰り道で青嵐と私は思い出した。「名前のこと忘れてた…」「あっ…」
狙ったかのように同時に喋った。私は今更だが初めて会った時の疑問を伝えた。
「青嵐は男と女どちらでしょうか?」そう聞くと青嵐は慣れたかの様に喋った。
「…やっぱり気になってた?実は僕戸籍上では女なんだでも中身は男、性同一性障害で知ってる?」私は首を横に振った。
「そうか…一言で言うと性別が見た目と中身で違うこと…」青嵐の様子が少しおかしい、少し経って青嵐は言った。「僕…実は捨てられたんだ、そして養子に出されて、ある親に引き取ってもらったんだ。その親は僕以外の兄弟には優しかったけど男みたいな行動をする僕を嫌った…そんな生活に耐えられなくて僕は実家から離れた遠くの高校に入学して一人暮らしを始めた…」私は、「そんなことが…大変だったよね。それで私は青嵐のこと男性として接していいのかな。」
青嵐は「どちらでも構わないよ、君は性別どっちだい?僕から見ると男の子に見えるけど」自分の性別がわからなかった「えぇっと…」青嵐は微笑み言った
「じゃあ帰ったらお風呂で調べてみて!名前はそれから決めよう。」私は頷いた。
「どっちがいいとかある?性別」少し経って私は言った
「強いて言うなら…女かな。」
そんなこと話し合っていたらどうやらアパートに着いたようだ。
「どうぞ入って」青嵐が言ったので私は「お、お邪魔します」と言って家に入った。
「汚くてごめんね、片付けとくからお風呂入ってていいよ。」「分かりました」と言っておいてお風呂を探した。アパートって広いんだな。三分探したトイレだったり、青嵐の部屋だったりいろいろ見つけた。「やっと入れた」私は女の子と信じ下を見た…
そしてお風呂を済ませ青嵐のところへ行った「どうだった?」
「男だったよ…まぁどっちでも私はいいんだけど、」青嵐は
「そうか…とりあえず君に名前をつけるよ…いいかい?」私は頷く…男の名前なんだろうな、そう思い名前を聞いた…
「四葩、君の名前だ」
「よ…ひら」思ったより女の名前で少し嬉しかった。
「青嵐…四葩とはどう言う意味で?」
「君って紫陽花の髪飾りつけてるでしょ?だから紫陽花に関連する名前をつけようと思って、紫陽花のガクが4片ついてることから四葩て言うんだ。君もそんなふうに綺麗に咲いてほしいなって、思ってつけたんだよ。」と青嵐は紙に絵や漢字を使って表してくれた。「ちなみに“よひら”は四片こっちの漢字もあるんだよ…こっちの方がしっくりくるかもしれないけど、四葩の方でもいい?」青嵐が笑いながら説明してくれた、思わず私も笑った。「気に入ってくれた?四葩って名前」青嵐がこう言うので私は笑顔で
「とっても気に入ったよ!ありがとう青嵐」
と感謝した。すると「あ…あ……」
青嵐は泣いた…説明してくれた紙に涙が滴れる…涙で字が滲んだが、その涙はすぐに消えた。まるで風のように…
そこからしばらく泣き続けていた…過呼吸にもなっていた
私はそばにいることしかできなかった。
手も握った、抱きしめたりもした、私も少し泣いた、何故泣いたのかは私にも分からなかった...その涙が青嵐の背中に染みた。十分程経っただろうか、青嵐は泣き疲れ私の肩で寝ていた。風呂がどこにあるか分からなく探していた時に青嵐の部屋らしき場所を見つけたのでそこへ運ぼうとした。
風呂に入った時、男だったショックであまり気にしていなかったが私の身体つきはやっぱり男らしいようだ。それにしても軽すぎる。おそらくご飯をそれほど与えられていなかったんだろう。私は青嵐の親が憎い、お姫様抱っこをした青嵐の顔に憎しみと悲しみで大粒の涙が一滴垂れた。なんとか堪えながら青嵐を運んだ、起きないように優しくベッドに置き、リビングに戻った私は紙を見た。
「私…何か泣かせるようなことしたかな…」私は悩んだ、「なんなんだろうこの気持ち、ドキドキして苦しくなる」このまま私は気を失った…
「よ…ら」「四葩……て」「四葩起きてー」
と私を呼ぶ声が聞こえた「ん……」私は起きた
「あ!おはよう四葩、昨日部屋に僕、運んでくれたんでしょ?ありがと…あと僕の頬にこれが落ちてたんだけど、これも四葩?」そう言って青嵐は一つの四葩を見せた。昨日私が流した大粒の涙がついたところだ、だが私は紫陽花のことは知らなかったので「いや、私じゃないよ」と言っといた。私はこの現象を誰にも言わない…
「四葩?静かだけど具合悪いとことかない?」
私は「ない…」と言った。何かを感じ取った青嵐は
「どこかに買い物行かない?せっかくの休みだし」
「あ…うん」
「じゃあ僕お風呂入ったり準備するからくつろいでて、お腹空いてたら冷蔵庫にあるもの好きに食べてていいから」
「あ、はい」
振り返った青嵐の背中には、過呼吸になった青嵐に抱きしめた時に私も泣いてしまった形跡…四葩が3輪服にくっついていた…
思わず
「待って‼︎」と言葉がでた。
ビクッとなる青嵐は
「どうしたの……四葩?」
「あっ!ごめん大きな声出して、背中にゴミがついてたから…今取るね」ゴミと装い体の一部だった四葩を取り除いていく。
「取れたよ、お風呂いってらっしゃい」
「あ,嗚呼」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます