第41話 隣で佇む同級生は後輩に謝りたい 【後】

「先輩………はい、喜んで」


 愛原は受け取った箱をゆっくりと開ける。

 中には新品のシューズがワンセット。

 全体的には清潔感のある白が大部分を占めているが、一部がピンク色のラインとなっており、それが女の子っぽさを演出している。

 現物を俺は知らないが、田中いわく、これは父親から買って貰ったシューズと同じ物なんだそうだ。

 だからだろう。

 愛原の顔が嬉しそうに緩んでいるのは。


「早速履いてみても良いですか?」


「ええ、もちろん」


 目尻に涙を溜める田中が頷くなり、愛原は靴を履き替える。

 まるで彼女の為だけにこしらえたようなシューズだ。 

 スポーツウェアも相まって、よく似合っている。

 

「どう、ですか?変じゃない、かな?」


「うん、悪くないと思うわ。とっても可愛いと思う。ね、当真」


「ん……ああ、そうだな。良いんじゃないか?うっ!」


 曖昧な返事が許せなかったのか、田中が俺の脇腹を肘で小突いてきた。

 仕方ないだろ、女の子に対して安易に可愛いなんて言えるか。

 と、田中と小声でやりあっていた最中。

 聞こえていたのか、愛原は「あはははは」と楽しげに笑いだす。

 そうしてひとしきり笑い終わった愛原は……、


「ありがとうございます、先輩!これ、大事にしますね!」


 涙を一筋流しながら、特大の笑顔を浮かべたのだった。



 






「よかったな、喜んでくれて」


 車内でタバコを吸っている姉さんに靴を見せびらかしている愛原を眺めながら呟くと、田中はフッと微笑む。


「ええ、何もかもあんたのお陰よ。あんたが居てくれたから、こうしてまた陸海とやり直す事ができるようになった。私自身も前に進もうと思えるようになれたわ。本当に色々世話になったわね。ありがと、当真」


「そっか、ならこっちも頑張った甲斐があったってもんだ。おめでとさん。……ところで、田中。DMで話していた頼みっての、いい加減教えてくれよ」


 尋ねると田中は上着のポケットから一枚の紙を取り出し、渡してきた。

 それを何の気なしに受け取り、開いてみると。


「メニーズ……?ていうと、チェーン店で有名なあのファミレスか。これがなんなんだ?用事ってファミレス?」


「明日の正午、ここに来て。もちろん一人で。私は明日、このファミレスで両親と会って、隠してきた秘密を打ち明けるつもり。でも一人だと不安なの。だから……明日1日、私に付き合って。頼んだわよ」


 …………冗談だよな?

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