第22話

 翌日にクレイはギルド本部でギルド創設の申請を行い、無事に受理された。

「おめでとうございます。これで本日より正式にギルドとして認められました。これからはこちらのギルドカードに報酬が振り込まれますから、なくされないよう厳重に管理してください」

「あ、ありがとうございます」

 クレイはドキドキしながらギルドカードを受け取った。

 ギルドカードは一種の身分証であり、これがあるだけで様々なサービスを受けられる。

 同時に作った銀行口座には報酬が振り込まれ、税金なども徴収された。

「それで、ギルド名は決められましたか?」

 受付嬢の問いにクレイは頷く。

「は、はい。その、『エンブレム』にしようかと」

「了解しました。そちらでご登録しておきます」

 諸々の手続きが終わるとその足でクレイ達はビッグマウスにかけられていた賞金で新しく郊外に家を借りる。

 古くて修繕が必要だったが、その代わり安く借りられた。

 部屋は何部屋もあり、キッチンやお風呂もついている。

「ベッドや食器も買わないとダメですね」

「あとテーブルに椅子と掃除道具もね」

 アリアとマリイは家の中を見回りながら隅々までチェックしていく。

「……なんか、ようやく人らしい生活を送れそうだね」

 安宿住まいにだったクレイはホッとしていた。

 だが疑問が首をもたげた。

「そう言えばなんでマリイの所有権が僕に移ってたんだろう? 宝物がダメになってたのかな?」

「愛の力に決まってるじゃない。奇跡が起きたのよ」

 マリイは嬉しそうだが、クレイはあまり納得できない。

 そんなことで変わるほど奴隷の契約は甘くないからだ。

 クレイは不満そうなアリアを横目に尋ねた。

「なにか心当たりはないの?」

「う~ん。そう言えば変な占い師にあったような……」

「占い師?」

「うん。クレイを探している時にその人に呼び止められて、言う通りにしたら見つかったの。そう言えばあの時、首輪を触られた気が」

(占い師?)

「も、もしかしてその占い師って――」

 クレイがギルドをクビになった日に出会ったのと同一人物では?

 クレイがそう聞こうとした時だった。

 突然玄関のドアがバンっと音を立てて開き、何者かが侵入してくる。

 その人物は被っていたフードを脱ぐとニヤリと笑った。

「その通り。それが妾じゃ!」

 それはクレイとマリイが出会った占い師だった。

 フードを取ると尖った耳が露わになる。

 明らかにエルフのそれだった。

 美しい金髪を揺らし、小柄な体に不釣り合いの大きな胸をたぷんと揺らす。

「我が名はシャーロット・オベロン。ようやく見つけたぞ。解放者よ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る