追放上等! 天才聖女のわたくしは、どこでだろうと輝けますので。
佐倉 紫
第一章
第1話-1
「聖女ミーティアよ。ただいまをもって、そなたから首席聖女の称号を
重々しい宣告がホールの高い天井に反響する。
一瞬の沈黙ののち、ホールに集まっていた聖女や聖職者たちから「ええっ……?」という困惑の声が響いた。
「い、いったいどうして。ミーティア様が首席聖女の称号を剥奪されるなんて」
「
「いったいどういうことなんだ?」
集まった人々は口々につぶやき、不安な顔を付き合わせる。
そして、ホールの中央に立つ、
多くの聖女と聖職者が囲む中、ホールの中央に立っていたのは、聖女の証である杖を手にしたうら若き乙女である。
金糸のごとき柔らかな髪に、夏空のように透き通った瞳。白いローブを
いつもは
それもそうだろう。彼女は首席聖女に任命されたこの三ヶ月、その務めをまっとうすべく寝食を惜しんで働いていた。
それなのに、突然の称号剥奪の宣告――。
いったいどうして、とこの場にいる全員が驚いたのだ。無情な事実を突きつけられた本人は、なお信じがたいことであろう。
「おまけに、地方の神殿へ配属ですって」
「それって……事実上の左遷というか、追放じゃないか」
それもまた衝撃的な事実だ。ここ、中央神殿こそが国内でもっとも権威と名誉がある場所だというのに、そこから地方に飛ばされるなんて……。
清純で心優しく、しとやかな聖女ミーティアにとって、それはどれほどショックで悲しいことであろう。
「……もしかしたらショックのあまり倒れてしまうかも」
「だって、見てごらんなさいよ、ミーティア様ったら先ほどから
「まばたきすらされていない……」
周囲の人々は怖々とミーティアの様子を見守る。
青い瞳をわずかに見開き、色を失ったくちびるを引き結んでいた聖女ミーティアは、全員がごくりと
ふ、と目を据わらせて、杖を持っていない手を腰に持っていった。そしてわずかに
ほどなく、そのふっくらしたくちびるからは、
「――はあ?」
という、低くドスの利いた声が飛び出してきた。
「ひっ……、ミ、ミーティア様?」
彼女を取り囲んでいた聖女の一人がびくっとしながら問いかける。他の面々のまったく同じ面持ちで、突如険悪な様子になったミーティアを怖々と見つめた。
そんな中、当の聖女ミーティアはゴゴゴゴ……という地鳴りの音すら聞こえてきそうな雰囲気で、可憐なくちびるからどこまでも低い声を漏らす。
「このわたくしから、首席聖女の称号を剥奪……? 筆頭聖職者ボランゾン様? もしや、頭の表面だけではなく中身まで薄っぺらになってしまいましたの?」
「はっ……?」
怒りを過分に
居並ぶ人々も、宣告を下した筆頭聖職者のボランゾンも、思わずびくっと首をすくめてしまった。
「え、え、ええと、ミーティアよ……?」
「目を丸くしてないで、さっさと答えてくださいます? 優秀かつ有能なこのわたくしを首席聖女の座から降ろすなんて、正気かどうかと聞いているのですが?」
手にした杖で大理石造りの床をガンッと叩き、聖女ミーティアは目の前のボランゾンを
聖女と言うより、もはや魔王のような雰囲気に、ボランゾンも周囲も思わず冷や汗をかいてしまった。
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