聖女…じゃない方のオレ、陰ながら世界を守ります
紗くら
第1話
ある日突然…こんなことってあるんだ、、ってことが本当に起きた。
目の前のロングヘアの長い髪のセーラー服姿の女の子が、まばゆいほどの光りに包まれふわりと浮いた。
浮いた!?と思ったら、女の子は宙に浮いたままダランと両手足を投げ出して仰向けになっていった。
目を瞑っている女の子は意識が無い様子で、雲ひとつない青い空にぽっかりと黒い大きな穴が開き、真っ白なでっかい両手のようなものが女の子を穴へと連れていってしまった…
しかし、光は消えず…いっそう光度が強くなり気がついたらオレは意識を失っていた。
オレは…女の子とともに連れていかれたらしい…あの手に。
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「おぉっ…今宵は素晴らしい!。今期の召喚では2人の聖女さまがっ」
「黒髪の長い髪、そして黒い瞳…まさしく聖女さまだ」
「もう1人は…短く茶色いが…神官殿が連れてきたということはこちらも聖女さまなのであろう!」
「神官殿!やりましたなっ。見事にお二人の聖女さまの召喚に成功なされました!」
やんややんやの大騒ぎの中でオレは目を覚ました。
「…う……」
「もう1人もお目覚めだっ」
「どこ…だよ、ここ?」
謎の文字が書かれた円盤状の絵のような中心にオレとあの子はいた
あの子はオレより先に目覚めたらしく、すでにこの場に馴染みはじめていた。
たいしてオレはというと…何がなんだか分からずキョロキョロとあたりを見回していた
「どうなされたかな?」
小太りの背のやたらに低い老人が顔をのぞきこんだ
「い…いや、なんか光ったと思ったらあの子が浮いてでっかい手に連れていかれたんだよ。で、なんだかオレも巻きこまれて!」
「聖女さまが驚かれるのも無理はない。あれは召喚の儀によるもの」
「聖女?聖女っつった?オレは男だよっ」
「なんとっ神官殿!」
「長老っ、神聖なる場に男などふさわしくありません!」
老人は付き人たちの声に慌てふためき、神官殿と呼ばれている男を見上げた。
銀色のサラサラした髪に同じく銀の瞳、白い着物のような装束に身を包み、キリリとした顔立ちのその男は口を開いた
「何か…波長があったのだろう。あちらへ帰す術はない。聖女さま同様手厚くもてなすべきでは?」
「むー…困りましたな」
老人は手を胸の前で組み考えた
「あ、あのっ!これも何かの縁です。わたしも1人では心細いので彼にはここにいてもらいたいです」
「聖女さまがそう望むならそうしよう。皆のもの、異論はないな?」
「はい」
老人の一声でオレのこの世界への滞在が決まった。
聖女じゃない方としてなんだかよく分からない世界で肩身の狭い思いをして一生を終えるのかぁ…なんて思っていた。
しかし
「聖女さまはどうかこちらに…悪影響を及ぼすとも限りませんっ」
1人の付き人が聖女の肩を支え部屋から退出させようとし
「その者の住居はどうしましょう?害をなすものである可能性がある限り城に通すわけにはいかないかと!」
「それは…」
老人が答えられずにいると、神官殿が手をあげた
「私が…引き受けよう。万が一何かあったとして、神通力を持つ私とこの神殿なら対処ができよう」
「なんと勇気のある!」
「それでは後は神官殿に任せ、われわれはこの塔から退出する」
老人は付き人と聖女を引き連れ部屋から消えていき、部屋にはオレと神官殿のみになった
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