全てがおかしい異世界転移
@Fuuuuuuuuu
第1話 全てを捨てて
「全く、何回同じミスをするつもりだ!」
「はい…すみません…」
苦痛だった高校生活をやっとの思いで乗り越え、新しい環境になれば全てが変わると思っていた。
しかしどうだろう、上司に叱責されひたすら自己嫌悪に陥る毎日。これでは高校の時と何も変わっていないではないか。
「今日はこのミスした分が埋まるまで残業してもらうからな!」
「わかりました…」
この会社に入社してからというもの、帰る時間はいつも日を跨いでいる。
今日は何時に帰れるのだろうか…
~~~~~
「疲れた…」
時刻は11時を回った頃、どのフロアも電気が消えて真っ暗状態だったが、何とか日は跨がずに済んだ。
重い足どりで会社を出て、歩いて駅へ向かう。
「…」
心許ない街頭に照らされた路地はかろうじて視認できるもので、とても安全とは言えないものだった。そんなことは気にも留めずに歩みを進める。
「あれ…?こんなところに神社なんてあったかな…」
いつも通っている道のはずなのに、見慣れない建物が目の前に現れた。ここら辺はかなり田舎で入り組んでおらず、迷うとするならばここに来たばかりか、相当疲れているかだろう。この場合は後者が当てはまるな。
「願掛け…してみるか。」
境内へ続く階段を登っていくと、そこにはお世辞にも綺麗とは言えない今にも壊れそうな本殿が佇んでいた。
「なんかすごいボロいな。」
賽銭箱の前まで進み、小銭入れから出した15円を投げ入れ、手を合わせる。
『全てを捨ててやり直したい』
そう願った。
~~~~~
「どこだここ?確かさっきまで神社にいたような…」
「やぁ、起きたっぽいね?」
「だ、誰ッ!?!?」
さっきまで神社にいたはずが、気づいたら和室?のような空間にいた。そして目の前には少年にも少女にも見える中性的な子供。
「こ、ここは誰で君はどこで俺は何!?」
「と、とりあえず落ち着こうよ。ボクはここの神主で、ここは神社の中。キミが何かは知らないかな~。」
「なるほど…」
「なんで俺はここに…?」
「それはキミがお賽銭箱の前で立ったまま寝てたからだよ?声掛けても反応しないからびっくりしたよ~。風邪ひくといけないから、中まで運んできたんだ。」
どうやら願掛けをしたまま奇妙な格好で寝てしまった所をこの子が中へ運んでくれたようだ。
「す、すみませんでした!すぐ帰りますんで…」
「あっ、ちょっと待って!」
慌てて帰ろうとしたところに神主から制止の声がかかる。
「キミ、さっき言ったよね?全てをやり直したいって。」
「はい…?こ、声に出てましたか…?」
「いや、ボク人の心が読めるんだよね~。」
「は、はぁ…?」
神主の突拍子もない発言に間の抜けた声が出てしまった。子供っぽい見た目から、年相応の冗談かと思ったが、とてもそうは思えないほど真剣な顔つきをしている。この雰囲気、
「信じてないっぽいから、実際にやってみせるね!」
「え?な、何を?」
「だから~、キミの望みを叶えてあげるって言ってるの!」
「いや、そんなんできるわけ───────」
「それじゃ、新しい世界を楽しんでね~!」
神主が颯馬の頭に手をかざす。すると、徐々に淡く光り始めた。非科学的な現象に戸惑っていると、今度は神主が顔の前で指を鳴らす。
「行ってらっしゃい、倉石颯馬くん♪」
その言葉を最後に、颯馬の意識は途切れた。
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