平凡なオレは、成長チート【残機無限】を授かってダンジョン最強に! でも美少女なのだがニート気味の幼馴染みに、将来性目当てで言い寄られて困る……
第42話 いざとなったら、これからも、ジップが守ってくれるんでしょう?
第42話 いざとなったら、これからも、ジップが守ってくれるんでしょう?
看病してくれていた人間に痛めつけられて、
「お、お前な……喜んでくれるのはいいけど、ちょっとは状況を考えろよ……」
「ご、ごめんなさい……寝ぼけてたもので……」
「まぁいいけど」
しゅんとするレニをよくよく見れば、目の下にクマはできてるし、顔色も青白いし、だいぶ疲れているように見える。もしかして、オレが寝ている間、自分の寝食もそっちのけで看病してくれていたのだろうか?
レベッカも、普段はキッチリ整った髪型と服装をしているというのに、今は少しよれているといった感じだった。まぁそれでもレニよりはまともだが。
オレがそんなことを考えていたら、レベッカが言ってきた。
「レニは、三日三晩ずっとジップの看病をしてくれていたのよ」
「そうだったのか……ありがとうな、レニ」
「う、うん……」
オレが素直に礼を言うと、レニは頬を赤らめる。いつもオレに縋ってばかりのレニだったから、こういう反応をされるのは新鮮だ。
オレはさらにレベッカにも礼を言った。
「それとレベッカも、ありがとう」
「えっ……わたし?」
「だって、まだ早朝だってのに病院にいるってことは、お前もずっとオレの看病をしてくれていたんだろ?」
「う……ま、まぁ……看病ってほどじゃないわよ……そもそも看病は看護師さんがやってくれるから、わたしは見守ることくらいしか出来なかったし……」
「いや、それでも十分だよ。本当にありがとう」
「う、うん……」
レベッカもらしくなく赤くなっていると、なぜかレニが頬をつねってくる。いたくはなかったが。
「な、なんだよ?」
「レベッカばっかり、ずるい」
さっきまで赤くなっていたレニは、頬を膨らませて半眼になっている。
「お前にもお礼を言ったろ」
「レベッカのほうが『ありがとう』が多かった!」
「いや……数の問題じゃないと思うが……そしたらレニにも、もう一度ありがとうだ」
「感謝の気持ちが足りない!」
「数にこだわりだしたのはお前じゃんか……」
それからしばらくの間、オレは、レニが満足するまで礼を言わされる羽目になった。
そうしてようやくレニが満足した感じになってきたところで、オレは話を切り出した。
「それでだな……オレがどうやって戦ったかなんだが……」
固有魔法についてはすでに明言してしまったが、その内容まで教えるべきか否かでオレは少し躊躇う。
だが今後も、今回のようなことがないとも限らないし、であれば残機無限などの裏ワザを教えておいたほうがいいだろうな。
オレがそう思って話し始めようとしたその直前、レベッカが言ってきた。
「ジップのそれは、聞かないことにしておくわ」
「え……?」
「万が一にでも、ジップが都市追放になんてなったら絶対に嫌だし」
「でも、これからの事を考えると……」
「大丈夫。いざとなったら、これからも、ジップが守ってくれるんでしょう? わたしたちを」
にこやかにそんなことを言われて、オレは黙るしかなくなる。
何事も自力でやりたがるレベッカが、オレを頼ってくれるなんて初めてかも知れない。だからなおさら、その笑顔にグッと来てしまった。
オレが言葉を詰まらせていると、レベッカは話を続けた。
「それに今回の件だけど、ギルドは『ドラゴン種による縄張り争いの結果』ということにしたわ」
「は……?」
意味が分からずオレは目を丸くする。
レベッカによくよく話を聞いてみると、まず、上層にいたドラゴン種たちで抗争が起こったそうだ。いったいどうやって、そんな事実を突き止めたのかさっぱり分からないが。
そして、そのうち数頭が激しいバトルのあげく、ダンジョンの壁やら床やらをメチャクチャに破壊した結果、なんと、フリストル市付近の下層にまで落ちてきたという。
その現場に巻き込まれたのがオレたちパーティだった。
だがしんがりを勤めたオレが逃げ遅れて、ドラゴン種の同士討ちに巻き込まれてしまうも、幸いにして命は助かった。
「──というシナリオらしいわ」
肩をすくめながらレニが説明を終えたので、オレは半ば呆れながら言った。
「その話、本当にみんな信じてるのか?」
「そんなわけないと思うけど、でもだからといって、ジップ一人で多頭雷龍を倒したのも信じられないでしょうからね」
「まぁ……確かに」
いずれにしろ、多頭雷龍が下層にいたこと自体が信じられない話だから、もはや逆説的に、どんな荒唐無稽な話だったとしても「まぁそういうこともあり得るかもな」と思えてしまうのかもしれない。
であれば『新人冒険者が一人で多頭雷龍を倒した』と言われるよりは、『ドラゴン種の同士討ち』と説明されたほうがまだ信じられるだろう。
それにオレが倒したということになったら、間違いなく、固有魔法の存在を疑われる。冒険者のすべてに。
そうなるとオレは、この都市にいられなくなるかもしれない。
「緊急事態だったとはいえ……軽率だったか……」
オレがそんなことをつぶやくと、レベッカは首を横に振った。
「そんなことないわ。ジップが頑張ってくれなければ、わたしたちは元より、この都市自体が全滅だった。だから、みんなに変わってお礼を言わせて──本当に、ありがとう。そしてお疲れ様」
「お、おう……そう言ってもらえると、がんばった甲斐があったってもんだ」
レベッカほどの美少女に、心の底から感謝されたのなら、もうそれだけで本当に、気張った甲斐があったというものだ。
そんなことを思いながらオレが鼻白んでいると、レニが掛け布団をパンパン叩いた。
「な、なんだよレニ……」
「…………べつに」
「別にって、そんなにむくれているのに何もないわけないだろ?」
「何でもない!」
「なら布団を叩くな。誇りが飛ぶ」
「………………!」
オレがやめろというのに、レニは布団をパンパン叩き続ける。こいつはいったい何がしたいんだ?
しかしオレは身動き一つ取れないから、まともに埃を被るのだった。
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