remains〜扉開けて転移したら……
芽久檸檬
序盤
1話 転移して。
私、咲玖と日宇は幼馴染だ。姉妹のように育った私たちは性格は正反対だったが
好きな教科や好きな趣味、好きな人のタイプも違ったが何故か、
大事な決断のときや大きな節目の時は不思議と気が合っていた。
あれから数年がたった今ではお互いに忙しくなった。
それでも、会社でまだ新人の頃にはいつもの居酒屋でいつものお酒で、
楽しい時間を過ごしていたのだった。
そんなある日の仕事終わり、今日は珍しく私達二人の共通の友達、
友達といっても特別、仲が良くもないし悪くも無いが、
中学時代の同級生というだけの関係性だが、そんな人にあることを頼まれた私たちは勿論互いのスケジュールになんの問題もなかったので良い返事を書いたが、
しかし当日の…今になっては色んな意味で化けた同級生の姿と美女の
ルックスに食らい、元陰キャの私たちにとっては心臓に悪かった。
合コンの人数の合わせとして呼ばれた二人。というわけだった。
20代半ばにまでなったこんな大学のノリみたいなやつと一緒に飲みニケーションをしていることに心の中で自画自賛している私だった。
バカ共のつまみにならない話でちまちまと飲むところに日宇がトイレに誘った。
日宇は嬉しそうだった。
トイレの個室はこじんまりとしていて私たちにとっては
とても居心地が良かったものだった。
悪い空気になったりするときや気まずかったりするとき、
吐きそうになったときに使える私にとってはお気に入りだ。
「咲玖さん、貴方…」
「いやうん、私いくらなんでもあれはないな。」と咲玖は言う。
「それもそうだけど。貴方って
連れションして愚痴をこぼすタイプでしたっけ??」
そうだよとはっきりと食い気味にいう。
香水とメイクを直している日宇はため息を着きながら私に話す。
「っていうかあの同級生、いつから垢抜けたんだよ。キモすぎだろ。」
「言い過ぎだって…」トイレの個室で苦笑いを浮かべた。すると日宇は
「だってそうじゃん。知らないの??あの子、なにが美人…なんだよ。」
「え??嘘……あれで美人さんなの??」
「君さ、今、酷いことを本人の居ない場所で数秒で言ったよ。」
逆にお前の美人像なんだんだよ。と突っ込まれすぐさま、
「性格が良いやつ」と言うと私にとっては笑えた正論だった。
「今日の男性陣、何人くらい来るの??」「知らん同僚合わせて3人。」
「……ああ、こんな気持ち悪い環境から抜け出して、どこか海外旅行とか行きたいね。」
「そうだね。パエリアとか食べたいね。」
「スペインに行きたいのか??」
「よくおわかりで。」
「って。もうこんな時間か、さてそろそろ私の頼んだおかずでも来るから先に行くわ。」と日宇が戻ろうと、すると。
「ちょっと……咲玖??今出られる??」と言われ、
個室から出てきて出口のドアの向こうを見ると、そこは草原と憎たらしいほどの晴天が広がっていた。「これって俗に言う、異世界転移??あるいは神隠し??」
「いや、前者で合っているよ。間違いでも、ファミレスで神隠しとかないでしょ。」
どうすればいいの、これ絶対にファミレスに帰れないでしょうよ。
と思い、ドアを一旦閉めて開けるとその景色に変わりはなかった。
「どうするのこれ、とりあえず!!同級生に携帯をかけてみよ!!」
と電話を繋げようとすると、電源を切っているのか、それともただ単純に電話に出なかったのだった。とすると選択肢は一つ。
_________入るしか選択しない。と二人の考えにも違いはなかった。
見知らぬ土地に足を付けたその感想は普通に足に土がついた。程度のものだった。
どことなく、懐かしい感じがしたのは、
周りの景色がゲームに出てくる雰囲気だったからであろう。
「異世界、初上陸と!!」と矢先にトイレの部屋は崩れてしまい跡形もなくなった。
「……目の前にあるのは獣道。それ以外には緑色だけ。」
「草原って言いなさい…草原って…。」
「……歩くしかないのか。」「歩くしかありませんよね。」
と言って、歩こうと一方にあるかもわからないものを
指さして歩こうと手をとって行こうと言うも、一向に足を動かさない、
ついに私は日宇に「何、座り込んでいるの!?!?」と声を荒げてしまう。
「だって、今私には家を待ってくれる恋人も友達も家族もいない。……だから歩けない。」
「歩けるじゃん!!あんたに誇れるもの、今の状況下、何ひとつもないから!!」
と言い、歩く気のしない日宇を引きずりながら歩いてある森の中に入っていることに気がつく。
茂みが多い日宇から痛いと痛々しくもなさそうな声が聞こえてきたが無視した。
木の葉空を覆っており、森の奥先には何も見えない。
しばらくすると自然に発生していないであろう石やらが、
あちらこちらにと下を見て分かる。神殿の跡とかあるのだろうか、
異世界なのだから遺跡の一つや二つはあるだろう。
「うう……い…だい、土の…味がする。タイヤみたいな、
食べられないほどに不味い。」というかタイヤ食ったことあるのか、
日宇を見るとそこには土と苔で汚れた顔があった。
そして、前を見てみると石で建てられた遺跡があった。
「ほら、休憩するよ。日宇。」と言い、日宇を階段に座らせて、
少しの冒険に対する好奇心だけで私は遺跡を探索することにした。
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