最強の二重人格者

@JINUSJPCA

第1話 転生

 俺は現代日本に住む取り柄のない高校生、如月晴人だ。年齢は17歳、身長は170cmぐらいで顔も整っている。俺は引きこもりである。


 そんな俺には誰にも相談できない悩みがある。親戚もいない。友達もいない。何もいない。晴人はずっと苦しんでいる。一人で、戦い続けている。あの悲劇の事件から3年間殆ど外に出ていない。


 俺の大きな悩み。

 それは二人目の俺。つまり二重人格というやつの存在だ。

 俺の二重人格は凶暴で、自分でも制御は不可能である。かろうじて意思疎通は出来るが、言うことは聞いてくれない。

 俺の親はそんな俺でも信じて受け入れてくれた。


 「大丈夫よ、晴人。お母さんはどんな晴人も受け入れるから」

 「そうだぞ、晴人。いつでも父さんに相談してくれ!」


 それは二人の言葉だ。しかし、親戚一同は俺ら、というより俺を除け者にしていた。気持ち悪いと罵り、厨二病だと馬鹿にした。


 そんな状況下でも母はいつも親戚に理解を求めていた。しかし、段々母も疲弊していき、遂には自ら命を絶ってしまった。それを見て激怒した父は家を出た。その時点で俺は両親を失った。


 14歳だった俺の精神はズタボロで3日間ほどずっと泣いていた。


 (あぁ……俺がやってしまった。母親が死んだのは……俺のせいだ。父が出て行ったのも……俺のせいだ。全部俺のせいだ……)


 『何もお前のせいじゃない。晴人。悪いのは親戚やろ』


 (いや……俺が悪い。全て、俺が、俺が悪い。俺が悪いんだ……)


 『お前は何もしていない。ただ真実を語っただけやろ。悪いのはお前の叔母さんやろ! 叔父さんやろ! お爺さんやろ! お婆さんやろ! 自分を責めたらあかん』


 (でも、俺が悪い、はずだ。俺がお母さんが苦しんでいるのを、自分のために苦しんでいるのを、何ともしなかった。それは紛れもない事実だ!)


 『でも、その精神状態まで母さんを追い込んだのは誰や? お前か? 親戚一同やろ? 立ち上がれよ、晴人。お前は母さんが死んでも怒らんのか?』


 (怒っても、意味がないじゃないか。君は楽でいいね。ただの二重人格だから)


 『君にもできることがあるはずやで』


 (僕に出来ること?)


 『ああ、俺に少しだけ体の支配権を譲れ。そしたらちょっと仇を取ってやるから』


 (仇を? 取る? その行為に意味があるのか?)


 『そうでもしないと、お母さんも未練たらたらで成仏できへんのちゃうか?』


 (お母さんが? それは嫌だ。嫌だよ!)


 『じゃあ体を譲れ! 俺が仇を取ってやる!』


 (…………わ、分かった。体を一時的に貸すよ)


 『くくく。ありがとう』


 その言葉を聞いたのと同時に俺の意識は闇の中へと沈んでいった。そして、それと同時に最悪が目覚めた。


 晴人の第二人格。その悪魔によって晴人の親戚は皆殺しにされた。次に晴人が目覚めた時には全てが終わっていた。それが悲劇の如月家失踪事件となった。


 あれから三年。貯金の金額も既に数千円しか残っていない。晴人は自分の二重人格を恐れて、それを出さぬよう封印してきた。しかし、他にはやることもなく家で一人で過ごしている。


 「……俺は一体何をやっているのだろう」


 俺は自室の壁に向かってそう呟いた。俺は自室の隅っこでうつ伏せになって寝た。次の瞬間、俺の脳内に天使の様な声が聞こえた。


 『貴方は今の生活に満足してる?』


  (いいえ。してるはずがない)


 『じゃあ、そんな生活を捨ててこっちの世界に来なよ!』


 (そんなことをしたって俺に何の得もないじゃないか)


 『いいえ、得はあるは。こちらの世界には貴方の今の生活と比にならないほどのいい生活が待っている。それを捨てるの?』


 (でも、いや。俺はこっちの世界に未練はない。わかった。そちらの世界に行こうじゃないか。誰かは知らないが連れて行ってくれ)


 そう念じたら俺は深い眠りについた。

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