第19話「ロリのお願い」
秋がきた。
森は紅葉に染まり、雪山の山頂には薄っすらと雪化粧が戻ってきている。
そしてとうとう、ロリさん達がやって来た。
「お世話になりますでしゅ!」
族長の座を息子のショタに譲ったロリさん。
引き継ぎも終わり、無事に隠居生活に突入したと嬉しそうに語っていた。
隠居したロリ。
相変わらず脳がバグる。
小鬼族からの出向者は三人。
ロリさんと助手の女性二人。
俺から言わせればロリが三人だ。
「さあ、ここがお前達の寝床だ」
ヤナが案内してくれている。
なんだ? なんか企んでるのか?
ヤナが案内したのは、地べたに布が敷かれ布団が三枚用意されていた一角。
いつの間に用意したんだか……。
さすがのロリさん達も顔がひきつっている。
「こらヤナ! すいませんロリさん! 本当の家はこっちです」
新しく配置した木造平屋にロリさん達をご案内。
ヤナには軽く説教したが、「我は小鬼に相応しい寝床を用意したまでです」なんて開き直っていた。
「これが家でしゅか!? この珍妙な道具は?」
「ロリ様! 回すと火が出る道具がありましゅ!!」
「こっちは冷たい空気を出しゅ箱!?」
家電設備に驚きまくっているロリさん達。
「今日はとりあえずゆっくりして下さい。研究の方は、こちらの生活に慣れてからで構いませんので」
ひとしきり家電の使い方を教えてロリさんの家を出た。
食糧はこちらから配給する。
勝手な想像だが、好みは和食かな?
お昼に和食を出して様子を見よう。
ロリさん達の役割は二つ。
一つは武器の研究と再現。
二つ目は戦闘訓練の先生。
ヤナに変わる先生の登場で、当のヤナはふて腐れていた。
でも小鬼達の方が強いから、否定は出来ないみたいで余計に歯痒いみたいだ。
「ヤナなら大丈夫。きっと小鬼達より強くなれる。俺はヤナを信じてるから」
「殿……分かりました! 殿のお気持ちを踏みにじる事は出来ません! 必ず、我が最強になってみせまする!!」
なんとかモチベーションが回復。
小鬼の訓練をもの凄い気合いで受けていた。
そんな感じで一週間ほど経った頃、相談があるとロリさんに呼び出された。
ロリさんの家に行き居間に通される。
「わざわざすいましぇん……」
「いえ、今日はどうしました?」
話を聞くと、ラミオ村に小鬼達を移住させたいというお願いだった。
なんでも日に一回、里から隠密が来て問題がないか報告しているのだとか。
そりゃそうか。
大事な仲間を出向させているのだから、様子ぐらい知りたいだろう。
ただ、そこでロリさんはありのままを報告してしまい、快適な村生活を羨ましく思った里の小鬼達が移住したいと騒ぎだしてしまったみたい。
全ての小鬼じゃなくても良いので、村に移住させてはくれないだろうか。
そう言う事だった。
家は自分達でなんとかするとも言っている。
正直、願ったり叶ったりだ。
元々職人は村に必要だと思っていたし、なにより小鬼達は強い。
一番弱い小鬼でさえ、ヤナと互角。
そんな集団が来てくれるなら、村の防衛は万全になる。
だが、懸念事項もある。
村が乗っ取られる恐れだ。
万が一小鬼達の中に悪巧みする者がいて、村を乗っ取られダンジョンの秘密を知られてしまったら目も当てられない。
それを避ける方法はただ一つ。
小鬼達より強くなる事だ。
誰が――俺だろうな。
そこで、ダンジョンの一部機能を解放しようと思う。
【レベリング】
この機能はダンジョンマスターとダンジョンボスにレベル機能を付与するものだ。
ダンジョンマスターは当然俺、ダンジョンボスはマスターに眷属する者を選択する事が出来る。
今の段階で俺に眷属している者はいない。
なので、今回レベルの観念を付与するのは俺だけになる。
よし、思い立ったら吉日。
レベリング解放!
うお、半年分のDYが一瞬で消えた……。
残るDYは50万ほど。
生活に困らない分はあるから良いが、また貯めなきゃな……。
さて、気を取りなしてレベリング機能を確かめるか。
なるほど、レベルを上げると基礎能力が上がっていくのか。
能力は、
【体力】
【力】
【素早さ】
【魔力耐性】
【五感力】
の五つ。
魔力自体がないのは、魔法をDYで消費するから関係ないのかな。
後気になるのは五感力というやつだ。
俺の想像だと、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚の感覚が上昇するのかな。
この辺りはレベルを上げて確かめるしかない。
因みにLv1→Lv2までは、後50の経験値を取得すれば上がるみたい。
よし、とりあえず一月レベリングして強くなる事にしよう。
ロリさん達には、一ヶ月後に移住して来て良いよという約束をして決着がついた。
そこまでどれだけ強くなれるか。
正直、わくわくする自分がいた。
そして一ヶ月後。
とうとうその時が来た。
「ラクちゃん……俺、帰って良いかな?」
「ちゃんと見てて下さいよベルさん。ちゃんと修行した成果を見てくれないと」
俺はとある火山にやって来ていた。
ここにはドラゴンの最強種であるレッドドラゴンが眠っている。
てか、目の前にいる。
「ラクちゃん! 口開いたぞ! ありゃブレスを吐く気だ!」
「慌てなくて大丈夫ですよ。ちゃんと障壁展開しますから」
「本当に大丈夫なの?」
滅茶苦茶不安そうな顔のベルさん。
「大丈夫……だから、しっかり見てて下さいよ」
さあ、レベリングの成果を見せる時だ。
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