第18話「BBQ」
夏と言えば何を思い浮かべるか。
俺はそうめんだ。
幼少の頃、死ぬほど食わされた覚えがある。
だから大人になってから食わなくなった。
散々食って飽きた筈なのに、無性に食べたくなってしまった。
だから"流しそうめん"をやりたいと思います。
「流すぞ~!」
「「「はーい!」」」
元気な子供達がまだかまだかと待機中。
いや~、ここまで来るのに中々苦労した。
この世界には竹が無かったので、木で代用したんだが、これがまた大変だった。
木を角材状に風魔法でカットするまでは簡単だったのだが、苦労したのは次の工程。
角材を半円にくり貫くためには、繊細な魔法技術が必要だったのだ。
最初はくり貫き過ぎて貫通の悲劇。
何本も角材を割った。
次は慎重過ぎて進まず。
一本終わる頃には日が暮れていた。
狙った所にピンポイントで放つ難しさ。
進入角度と厚み。
全て一定でなければいけない。
魔法の奥深さを改めて実感した。
だが、良い修行になったと思う。
お陰で魔法を放つ精度と技術が格段に進歩したと思う。
ミャル師匠にも褒められた。
もうお前に教える事はない。
そう言われた。
今日からは、口上でミャル流免許皆伝を名乗る。
それはさておき。
くり貫きが終わった角材達を組み立て、本日ようやく流しそうめんが出来るようになった。
下流では子供達とベル一家が箸を持って臨戦態勢だ。
みんなお箸が上手になりました。
俺が器用に使っているのを見て、自分達もと練習していた成果だ。
慣れてさえしまえば、フォークよりお箸の方が断然使い勝手が良いもんね。
「二回目流すぞ~」
水魔法と一緒にそうめんを流す。
こんな所で水魔法が活躍するとはな。
使い道がないとか言って悪かった。
「あー! 最後まで流れてきません!」
ランが怒ってる。
一番下流側にいるので最後まで流れて来ないのか。
「並ぶ順番は一回毎に交替してくれ~!」
順番を入れ替えさせ再度そうめんを流す。
お、今度はランやベルさんの娘さん達がそうめんにありつけたな。
そんなこんなで第一回流しそうめん大会が無事に終了した。
あ……俺、食べてない。
家に帰って虚しくすすりました。
流しそうめんをした次の日。
次は庭でBBQをしようと思う。
ダンジョン内なら道具もバッチリ揃う。
そしてゲストも呼んである。
「ラクトしゃま! 本日はお招き感謝でしゅ!」
ロリさん含む小鬼族の方達を交流がてらに招いた。
流石に全員が里を離れる訳にはいかないみたいで、今日は選抜された十人が来てくれた。
「可愛い~♡ ラクト様! 小鬼族さん達は、この見た目で大人なんですよね?」
「ああ、だから子供扱いはするなよ。失礼がないようにな」
ランは可愛いものに目がないから、ちゃんと言い含めておかないとな。
「うぉっ、ランしゃまどうなしゃれた!?」
ロリさんを抱きしめて頬擦りするな……。
見なかった事にして準備に移る。
バーベキューグリルに炭火を入れて着火。
たき火台も用意。
たき火台は夜になったら使う。
マシュマロを焼きながらウィスキーを頂く予定だ。
グリルが温まっていく間に串に肉をさしていく。
好みがあると思うので、肉は鶏、豚、牛の三種類を用意。
バーベキューと言えば肉がメイン。
こうなると、肉が苦手なアイが可哀想なので、デザート類も用意した。
フルーツの盛り合わせに、夏ならではのかき氷やケーキ各種。
女の子も大満足の品揃えだ。
「ふぅ~、それにしても暑い」
「ラクちゃん。暑いならなんで外で火を使ってやるんだ?」
確かにそうなんだが、それがバーベキューの醍醐味としか言いようがない。
でもやっぱり暑い。
こりゃプールの出番だな。
DYでプールを購入して村の中央に配置。
「ミャアッッ!?」
あ、ごめんミャル。
たまたま中央にいたミャルがプールにどっぽん。
プールは円形型。
よく豪邸に置いてあるようなやつだ。
お値段は結構したが、背に腹は変えられない。
「みんな~! 水着用意したから好きなの取ってくれ」
「これはなんれしゅか?」
興味津々の様子で子供用の水着を見ているロリさん。
小鬼達も続々と集まってきた。
小鬼達は何にでも興味を示す。
バーベキューグリルもそうだ。
「なるほど、鉄板を変形しゃしてるのかぁ~」
「これも鉄なのかぁ? どうやって網状に加工してるのかなぁ?」
ああでもないこうでもないと、小鬼同士で話し合っている。
「はいはい! 今日はお仕事お休み! みんなも水着に着替えてプール遊びしますよ~!」
「「はーい、でしゅ!」」
なんか保育園とか幼稚園の先生になった気分だ。
プールで水遊び。
子供達も楽しく遊んでいるようだ。
俺もだいぶ涼んだし、そろそろ焼き当番に戻るか。
「ラン、みんなが溺れないように見張っててくれ」
「はい! 任されました! あっ、端っこで走っちゃダメですよー!」
うん、ランは良いお母さんになりそう。
世話焼きだし、母性本能が強いのかもな。
「お、アイはデザートか」
アイは肉が苦手。
別に食べられない訳じゃないみたいだが、無理して食べるような状況でもないので、最近は口にしていない。
「このかき氷って食べ物、冷たくて美味しいです♪ ラー様もほら、あーん」
うん、冷たくて美味しい。
「あんまり一気に食べるなよ? 頭が痛くなるぞ~」
「イタタタタッッ」
手遅れだったか……。
リサはお肉をがっついてる。
「おいおい、一人で全部食べるなよ?」
「だって美味しいだもん! ご主人様! 特にこの牛肉が美味しい! いつものと少し違う?」
さすが本能に生きるリサ。
今日はいつもの牛肉より少し高い肉を出してる。
なんとか牛のなんとかランクみたいなやつ。
う~ん、確かに美味い。
さしが良い感じに入って肉汁が溢れてくる。
みんなもどんどん肉に手が伸びてるな。
「おいラクちゃん! 遊んでないで早く焼いてくれ! 俺一人じゃ追いつかねえ!」
「すいません……」
ベルさんに怒られてしまったので焼き当番に戻る。
「ベルさん、ビールでも飲みながらやりましょ」
「おお、そりゃ良いな!」
ご機嫌が戻ったベルさん。
相変わらずチョロいんだから。
そんな感じで楽しいバーベキューは進み、日が落ちてきたらたき火を囲みまったり談笑だ。
小鬼達には日本酒を出した。
美味い美味いとガブガブ飲んでる。
俺はウィスキー片手にマシュマロを焼いてまったり。
子供達も焼きマシュマロが気に入ったみたい。
興が乗ってきたので歌を披露してみた。
前世の世界で流行った歌なのかは分からない。
ただ、頭の中に浮かんできた歌だ。
戦士を讃える歌。
応援歌とも言える。
「ラクちゃん、それは……」
「ラクト様も知ってらしたんですね……勇者の詩」
勇者の詩?
あれ……なんで俺、泣いてんだ。
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