第10話「ピクニックの計画」
子供達との生活も慣れた今日この頃。
ちょっと面白い進展があった。
「ラクト様! ミャル様が◯ュールはまだかってお怒りです!」
実は、獣人のリサはミャルと意志疎通が図れる。
なので最近、ミャルはリサを通して文句を言ってくるのだ。
でも、意志疎通を図れる事は良いことだ。
最早、ペットの枠を超え家族の一員となったミャルの気持ちを知れるのは嬉しい。
魔法の訓練も捗る。
ダメ出しは強烈だけどね……。
訓練と言えば、子供達も戦闘の訓練をする事になった。
ミャルいわく、この森で生活するなら必ず魔物と戦う事になる。
その時に自分で自分を守れるように強くなれ。
そう言う事らしい。
確かに、ごもっとも。
俺やミャルが守り切れない状況だってあるかもしれない。
その時を考えたら、訓練をした方が良いと思った。
訓練は魔法と武器による戦闘の二つ。
俺は魔法と武器の訓練を両方受けている。
魔法訓練の教官はもちろんミャル師匠。
俺の他に魔法訓練を受けているのは、ランとアイ。
ランとアイの上達ぶりは凄まじい。
リサがミャルのアドバイスを伝えながら訓練を行っているが、スポンジの如く吸収率でどんどん上達していく。
やっぱり、子供は覚えが早い。
俺が上達ぶりを褒めると、更にやる気が出るみたいで褒め甲斐がある。
うちの子供達は、褒めると伸びるタイプなのかな?
まあ、そもそも叱るような事もしないのだが。
この分だと、実戦も間近だろう。
魔法訓練を受けていないリサとヤナは、武器による戦闘一本だ。
リサとヤナは魔力自体はあるが、魔法を具現化する適性が乏しいらしい。
そこで、武器による戦闘に特化した方が良いと、ミャルからアドバイスを受けた。
因みに、子供達の魔力は次の通り。
ラン【魔力150】
アイ【魔力140】
リサ【魔力40】
ヤナ【魔力60】
生存ボーナスでの換算だ。
話を戻す。
武器による戦闘訓練の教官はヤナ。
彼女の教え方はかなり上手だった。
「ラクト様。もう少し振りを小さくして隙を無くした方が良いかと」
実戦を想定した動き方を的確に教えてくれる。
戦闘訓練は全員が受けている。
ランとアイは近接武器が苦手。
なので遠距離武器である弓がメインウェポンだ。
それでもランは、弓を引く力が足りない時が多い。
悔しくて泣いてしまう時も。
頑張れラン。
「うぅぅ、ラクト様ぁ、もっと撫でて下さいぃ」
アイは弓の扱いをすぐに覚えた。
この辺りはエルフの血が関係ありそう。
戦闘訓練で一番伸びているのは、リサだった。
リサのメインウェポンは鉤爪。
素早い身のこなしのヒット&ウェイ戦法が見物だ。
すぐにでも実戦で戦えるかもしれない。
教官のヤナは、言うまでもなく強い。
刀の戦い方を極め、誰にも負けない剣士になって見せますと息巻いている。
漫画の影響だろうか。
子供は影響を受けやすいからな。
読ませる漫画も変な影響を与えないように厳選しなくては。
「さて、みんな訓練お疲れ様。ここでお知らせです! この分だと実戦も間近なので、どうせならピクニックがてら実戦をしに行きましょう!」
最初困惑していた子供達だったが、ピクニックの意味を教えたら早く行きたいと喜んでいた。
実は既に良い場所を見つけている。
南の谷方面に、滝を見上げてゆっくり出来そうな場所があったのだ。
距離にしたら約10キロメートルほど離れている。
子供の足では少し遠いかなと思ったが、いざとなったら俺が全員をおぶって飛べば良い。
てか、籠を用意してそれに飛行魔法を付与すれば、簡単に運べそうな気もする。
今度試してみよう。
ピクニックまでのコースに道という道はない。
予定しているのは、一ヶ月後。
それまでに道を作っておこうと思う。
木を切り倒し、地面を均しておく。
全て魔法による作業だ。
行いたい作業をミャルに相談して、適切な魔法を教えて貰ったのでバッチリだ。
後三十日だから、一日300メートル弱ほど進めて行けば間に合う。
自分の魔法訓練にもなるし、頑張ろ……。
さて、ピクニックの計画は立てたし、後は誰も居なくなったダンジョンをどうするかだ。
ピクニックにはミャルも連れていく予定なので、ダンジョンが長時間無防備になってしまう。
子供達と生活する前も留守にする事はあったが、長時間空ける事はなかった。
そこで、留守番を任せる仲間を増やそうと思う。
【グローリーベア】1000000DY。
百万円の熊さんだ。
栄光の熊。
名前からして強そうじゃないか。
ちょっとお値段は張るが、防衛のためなら致し方なし。
さっそく購入して地上ダンジョンへ配置。
目の前には熊。
なんか普通のヒグマに見えるんだが。
つぶらな瞳でこちらを見てる。
子供達が少しビビっているので敵意はないと教えておく。
ヤナが戦ってみたいと騒いでいたが、万が一を考え却下した。
名前を【クマゴロウ】と命名。
安易だが、それにしか思い浮かばかった。
クマゴロウは本当に強いのだろうか。
ダンジョンの外に出れないので魔物と戦わせる訳にもいかないしな。
そうだ。
ミャルに聞いてみよう。
「肉弾戦ならここにいる全員が負けるって言ってるよ!」
「ありがとうリサ」
「へへ。もっと撫でて!」
そうか、クマゴロウ。
お前がNo.1だ。
後で分かったのだが、ダンジョンに魔物を配置するとDYが消費されていくみたいだ。
クマゴロウで一時間100DY。
それぐらいなら今の所大した消費量ではない。
お、クマゴロウはさっそく子供達のオモチャになってるな。
背中に子供達が乗っていて金太郎みたいになっている。
遊び相手にもなるし、番熊にもなる。
良い買い物をしたかもしれない。
よし、遊びついでにだるまさんが転んだでもやるか。
俺が鬼。
見事最初にタッチ出来た人は、好きなご褒美が貰えます。
そう伝えると、みんな張り切っていた。
ニャルも参加だ。
「だるまさんが転んだ!」
最初の脱落者はリサ。
「尻尾を振っているのでアウトです」
「そんな~! 尻尾は我慢出来ないよ!」
ダメなものはダメなのです。
ミャルが獲物を狙う猫っぽい体勢で止まっている。
あれは次で仕掛ける気だな。
ならば……。
「だるまさんが……ころんだ!!」
「みゃっっ」
はい残念。
タイミングをずらされ、俺にダイブしてきたミャルはアウトだ。
さて、今の順位はヤナが一番近くて次にアイ。
一番後ろはランだ。
さて、優勝は誰になるかな?
「第一回だるまさんが転んだグランプリを制したのは――ランです!」
「やったー! 嬉しいです!」
ランがご褒美に願ったのは、空中散歩。
背中におんぶかと思いきや、お姫様抱っこを所望された。
「ほら、あそこが今度行くピクニックの目的地だよ」
「はい!」
いや、俺の顔ばっかり見てないでもっと景色を楽しんでくれ……。
帰ったら、ミャルを含む子供達に再戦を要求された。
だが断る!
何回もやったらご褒美感が薄れてしまう。
ご褒美無しでならやると言ったら、速攻で解散した。
全く現金な子達だ。
まあ、第二回は日を置いて開催する事にしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます