第4話「お散歩」
一ヶ月が過ぎた。
ミャルのお陰でDYが凄く貯まった。
高収入のヒモ最高。
因みにミャルはメスだ。
ちゃんと持ち上げて確認済み。
猫パンチされたけど。
ミャル師匠の厳しい指導の元、二週間はひたすら魔法の訓練に励んだ。
その成果もあり、魔法のコントロールがだいぶ良くなってきたと思う。
訓練を通して分かった事もある。
上級魔法の使い道があまりない事だ。
威力が高過ぎて使う状況が正直ない。
しかも一発10000DYとコストが高い。
なので中級魔法セットを買って上達に励んだ。
中級は一発1000DYなので、上級よりはコストを抑えられる。
「ミャルが使ってるのは上級?」
「にゃあ」
最近地面に◯と✕を書いて質問に答えて貰ってる。
◯なら暫定。
✕なら否定。
肉球を✕に置いたミャル。
ミャルも戦闘で使用する魔法は、初級から中級レベルまでがほとんどらしい。
デカイ猪を倒した時の魔法も中級レベルだとか。
ますます中級で十分な気がしてきた。
使い勝手が良いのは【岩】と【氷】の魔法。
岩は攻撃にも防御にも使えて万能だ。
氷は足を氷漬にして動けなくしたり、ミャル使用もしていた氷柱攻撃で串刺しに出来る。
火は周囲に燃え移る心配をしなければいけないし、水は今一用途が浮かばない。
とりあえず、ミャル師匠からも了解を得たので、今後は岩と氷の魔法を鍛練して熟練度を上げていこうと思う。
魔法の訓練が終わったら周囲の散策。
ミャルが一緒に着いてきてくれるので、帰りも迷わず帰宅出来る。
あと、方位磁石を買って方向が分かるようになった。
異世界で方位磁石が通用するか分からなかったが、ちゃんと動作しているので多分大丈夫だ。
ダンジョンを中央とすると、北は山脈が連なっている。
山脈とダンジョンとの間には、小さな村。
西と東は森が続いていてその先はまだ不明だ。
南も山々が見えるが、北と違って緑が見える。
ややこしいので、
北は【雪山】南は【緑山】と称する。
緑山とダンジョンとの中間には谷と滝。
滝があるという事は、沢があり川が流れている。
川は南から半円を描き東へと続いていた。
なんとなく予想だが、東に進み続けると海に行けるのかもしれない。
ダンジョンから一番近い川までは5000歩。
歩数計で測ったので間違いない。
身長をあらかじめ登録しておくと、距離も大体で出してくれる優れ物だ。
お値段1980DYのお買い得品だった。
まじで品揃え良すぎ。
ド◯キかよ。
こんなに他文明の技術を異世界に持ち込んで大丈夫だろうか?
そんな疑問はわりと直ぐに解決している。
ある時、散策中に歩数計を落としたら消えて無くなった事で気付いた。
要は、ダンジョンで買った物を外に持ち出すと、消えてしまうのだ。
例外は、俺が装備している間は消えないだけ。
一度ミャルに歩数計を紐でくくり付けてダンジョン外に出たら、一瞬で消えてしまった。
だからダンジョン産の物を盗まれても外へ出れば消えてしまうので悪用出来ない。
ダンジョンの中でなら解体出来るので、研究して再現する事は0ではないと思うが、相当な天才でもない限り難しいだろう。
神様もそこら辺は考えている筈。
筈だよな……?
まあ、その話は終わりとして。
川は清流と呼ぶに相応しく清んでいた。
魚の姿も確認出来る。
今度釣りをするのも良いかもしれない。
ただ、竿を買っても一度手を離してしまうと消えるので、現地調達で作る必要がある。
うん、それもそれで良いか。
時間ならたっぷりあるし、後で竿作りにトライしてみよう。
今後の楽しみが出来た所でダンジョンへ戻る事にした。
道中では小型の魔物がちょこちょこ出現する。
角が生えた兎や蛇の尻尾を生やした鶏など、異世界ならではの魔物達が現れる。
だけど、こちらにはミャルがいるのでなんの心配も要らない。
ミャルが本気になれば瞬殺してしまう。
だからなのか、基本は俺に戦わせる。
師匠はスパルタなのだ。
戦法が間違っていると、容赦ない肉球パンチが飛んでくる。
肉弾戦になる前に仕留めるのが絶対条件。
サバイバルナイフを装備してはいるが、素人捌きじゃどうにもならない。
ナイフは最後の自衛手段。
そうならない様に、魔法戦闘の熟練度を上げる練習として俺に戦わせているのだ。
そのお陰か、魔法戦闘もだいぶこなれてきた。
でも、ミャルにはたまに怒られる。
調子に乗って火力が高過ぎる時があるからだ。
火力が高過ぎると、余計な範囲まで魔法が広がる。
そこに味方がいれば被害に合うし、コスパも悪いで良いことがない。
範囲を絞り、的確な一撃で仕留める。
それがミャル師匠からの教えだった。
まだまだ免許皆伝は遠そう。
焦ってはいないから、地道に頑張る事にする。
そんな感じで、毎日のルーティンに散歩(戦闘訓練)が加わった。
生活は相変わらず。
最近は、絵に挑戦している。
最初、ミャルをモデルに描いていたらあまりの下手さに燃やされた。
その後、滅茶苦茶描かされた。
描いては燃え、描いては燃え。
途中泣きながら描いていたが、なんとか納得して貰えるところまで上達した。
完成したミャルの絵は今に飾った。
ミャルはご満悦で眺めている。
この自惚れやめ。
でも可愛いから許す。
可愛いは正義だ。
そう、あとジャガイモが収穫に至った。
早すぎてビビったぐらいだ。
でも嬉しい。
ダンジョン産の初野菜? は、色々調理して美味しくいただいてます。
次は茄子に挑戦してみるつもりだ。
こうやって色々挑戦しながらのスローライフも悪くない。
だらだらしてるだけだと飽きちゃうしね。
人間、刺激があってなんぼだと実感した。
そう言えば、そろそろ例の村にも偵察に行かないとな。
どんな人達が住んでいるのか気になる。
こちらに害を及ぼす人達なら対策を考えないといけないしな。
そんな事を考えていた時、事件は起こった。
「たす……けて!」
一人の少女が、助けを求めていた。
「待てこらぁぁっっ!!」
後ろには柄の悪い男達が少女を追いかけている。
そんなの見たら――
「ミャアッ!」
ああ、分かってるよミャル。
助けるに、決まってる!
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