01-12-真の強さと〘ペレ芋LV1〙


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要零音

LV 1/5 ☆転生数0

EXP 1/7

▼─────

HP 10/10

SP 11/11(+1)

MP 10/10

▼─────ユニークスキル

【デウス・クレアートル】 LV1

アイテムダンジョンを創造することができる

▽─────アイテムスキル

〘ペレ芋LV1〙

 └【SPLV1】【ペレ芋採取LV1】

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 教会、台座の部屋。

 俺はステータスモノリスをじっと見つめていた。

 ……きっと俺は、微妙な顔をしているに違いない。


 ペレ芋ダンジョンからコンプリートボーナスを得ることで習得した〘ペレ芋LV1〙。

 謎の声の言う通り、本当に〝力〟を得たのだという喜びと、力と呼ぶにはちょっと微妙じゃないか? という残念な思いが綯い交ぜとなり、俺の顔をいびつにした。


 これまでにはなかったアイテムスキルというタブのなかに表示されている〘ペレ芋LV1〙。

 その下にあるスキルをタップしてみる。


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【SPLV1】

SPが10%上昇する

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【ペレ芋採取LV1】

ペレ芋の採取時、10%の上昇補正を得る

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 【ペレ芋採取LV1】の効果はいまは実感できないが【SPLV1】の効果はステータスモノリスでSPが10から11に上昇しているため、〘ペレ芋LV1〙とはこれらふたつの複合スキルであり、またスキルの効果がたしかなものであることがわかった。


 だからこそ、なんかこう……武器の扱いに適性を得るとか、MPが十倍になるとか……そういった超絶パワーを期待してしまっただけに、残念でもあった。


 身勝手でわがままな、俺の女々しさだった。


「ああああん……」


 モノリスの両脇を両手で掴んだまま、心のうちのように女々しく崩れ落ちる。


「あ、あの……レオンさま?」

「ああああん……えっ」


 ばっと振り返ると部屋の入口にミシェーラさんが立っていて、なんともいえない表情で視線を彷徨わせていた。


「ご、ごめんっ、ちょっと柔軟体操を」

「そ、そうでしたか」


 あまりにも苦しい言い訳だったが、ミシェーラさんは見なかったことにしてほしいという俺の心裏を読んだのか、それに乗ってくれた。

 

「それにしても、珍しいですわね」

「な、なにが?」

「レオンさまがそこまで取り乱すなんて」


 全然見なかったことにしてくれてなかった。 


「いや、その……ははは」

「なにがありましたの? わたくしでよろしければ、教えてくださいませ」


 それでも誤魔化そうとする俺にずずいと詰め寄ってくる。


「その……さっきペレ芋のダンジョンを攻略して、コンプリートボーナスってのをもらったんだけど……」

「存じておりますわ、拝見しておりましたもの」


 そういえばそうだった。ミシェーラさんはゲートの外からダンジョンの様子を見ているんだった。


「喜びのあまり、わたくし、つい……うふふ」


 右手を頬に当てて微笑む。つい、どうしたのか、なんとなく怖くて訊けなかった。


「それで──」


 ペレ芋の意思を得たこと。

 変な夢を見たこと。

 力を得たこと。

 そして……その力が思ったよりもしょぼくてがっかりしたことを包み隠さず話した。


「まああ、それはとても素敵なことだと思いますわ」

「素敵?」

「はい。レオンさまはアイテムダンジョンを攻略していくことで、もっともっとお強くなるのでしょう? とても素敵ですわ」

「俺はもっとこう、みんな……ほかの異世界勇者みたいな、手軽で一気に強くなれるものかと思っていて」


 ほかの異世界勇者のユニークスキルはめちゃくちゃ怪力になったり、いくつもの魔法に適性を得たり、目にも止まらぬ脚力を手に入れたりと非常に強力だ。

 Aパーティの吉田先輩なんかは【ペルセウス】という、パーティメンバーが多ければ多いほど全員の能力が上昇し、自身は剣の扱いと光魔法に適性を得るというぶっ飛んだ強さだった。


 それに比べて、俺は……


「手軽に得た力は、使いかたを誤ってしまいますわ。それに、レオンさまはわたくしと出逢った頃からすでに、真の強さをお持ちでしたわ」


 自虐的にうつむいた俺に、ミシェーラさんは一歩近づいてくる。


「真の強さ……? ミシェーラさんまで不思議なことを……。前から思っていたけど、ミシェーラさんは俺を買いかぶりすぎだと思う」


 視界に入ったシスター服が目に入らぬよう、顔を背けた。


「そうですかしら? 真の強さがなければ、どれだけ力を持っても意味がありませんわ。……しかし、レオンさまは」


 俺は、なんなのか。


「あらあら、そろそろマリアリアさまがお目覚めになりますわね。レオンさま、参りましょう」


 また、思わせぶりなことを言われ、肩透かしをくらった。

 しかしそれも仕方のないことだとも思う。


 ……先に顔を背けたのは、俺なのだから。


「レオンさま」


 扉の前で俺を手招くミシェーラさんを見て、気づいた。

 本当はもうすこし前に気づいていたかもしれない。


 夢のなかで聞いた、懐かしく感じた謎の声の雰囲気は、どこかミシェーラさんに似ていたのだと。

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