#12
「すごいな……」
パチパチパチパチ
俺が最後のアドリブを言い終わると同時に周りの音が戻ってくる。
一緒に演技をしていた2人からも大きな拍手をもらって、一気に肩の荷が降りた。
「花宮くん!すご!!!」
「あ、ありがとうございます」
「思わず聞き惚れちゃったよ。これは俺たちの負けだな」
「んなことないっす。お二人も素敵でした」
個人的には課題もたくさんある気がしたけど。
それはきっと俺も同じだし、今は黙っとこう。
にしても、やっぱ演劇楽しいな。
あの感覚も取り戻すことができたからこの提案は飲んでよかった。
「花宮くん、あなたやっぱりすごいわね」
「ミシェルさん!ありがとうございます」
「お、なになに?2人とも知り合い?」
自然と俺を中心に輪が広がっていって、その隣にミシェルさんが滑り込んできた。
「知り合いというか、彼が自主練習していた時にたまたま居合わせたのよ。その時から凄かったけど……また更にパワーアップしたのね。
今日の方が断然よかったもの!」
「ほんとですか!嬉しいっす!」
「あ、そうだ。ちょっと気になってたんだけど……」
「えっと、木村さん、ですよね。どうしたんですか?」
今度は木村さん。少し目尻が濡れているような気がして、俺の演技で感動してもらえたのかと思うと、更に気持ちが昂ってくる。
「演技の前に長い間目を閉じてたけど、あの時って何してたの?そのあと目を開いた時にはもう雰囲気が変わってて、俺びっくりしたんだよね」
「あーあれは、その舞台を想像してました。今回ならロミジュリなので、14世紀のイタリアを。
そうすると自然に役が降りてくるんですよ」
「へぇ、すごいな」
と、たくさんの先輩と感想交換をしていた時。
控えめなノック音と共にドアが開いた。
「失礼します」
「お、いらっしゃ−い!!」
ぞろぞろと入ってきた四人は俺と同じ一年。
あ、桃井と一ノ瀬だ。後の2人は……ちょっとわかんないけど。
「もう少し早く呼べば、今の花宮見れたのにな。敢えてか?涼太」
「勿論!だって、花宮くんをみて、もしも自信無くして入部諦めますなんてなったら残念だし」
「それもそうだな。おし、じゃあ片付けもその辺にして皆座ってくれ」
宮崎さんの言葉を合図にガヤガヤとした視聴覚室が、少しだけ静まる。
刹那。
「これより桜木涼太プレゼンツ、新一年歓迎会を始めまーす!!」
「「「「FooooooooooooO!!!」」」
……え、急にテンションぶち上がるじゃん、こわ。
待て待て。ついていけねぇよ、これ。
他の一年もぽかんとしている。よかった、俺だけじゃない。
「そこでぽかんとしている一年生諸君!この度は我らが声劇部に入部してくれてありがとう!!部長の宮崎春人です!」
「副部長の桜木涼太でーす!」
「会計の朝日奈湊です。よろしく」
「庶務兼照明チーフの柊大輝です!」
「衣装チーフのミシェル・グレイよ、よろしくね」
「音響チーフの堂島嶺です」
三年生、計六人が前に出て挨拶をしてくれたけど
なんか個性の塊って感じ。
幸い、名前を覚えるのは得意だからすぐに覚えられたけど……
今もまだわちゃわちゃしてる三年。
癖が強い。強すぎる。
名前知らない俺の隣の同輩引いてるよ、俯いちゃってるよ、これ。大丈夫?
「一年テンション低くなーい?まいっか!
では続きまして2年生!トップバッターは木村!」
いや、副部長のテンション高!それに続ける木村さんもすごいけど。
「はーい。二年の木村拓海です、美術が得意で衣装のデザイン協力してます!」
「照明のサポートしてます、木村悠です。拓海とはふたごだから間違えないようにね〜」
あ、いいぞ。落ち着いてきた。3年はちょっとつまんなそうだけど。
「音響サポートの朝日奈櫻です。湊とは兄弟なので下の名前で呼んでください」
「田村翔太です。裏方のサポートは特に入ってないです。雑用でーす」
「西山浩介です。翔太と同じでサポートとかはしてないです。同じく雑用でーす!」
こっちが三年だろ、と思ってしまうほど落ち着いている二年の先輩。
…………一生ついていきます。ガチで。
三年生が6人、二年生が5人、俺たち一年生が5人。
16人か……案外少ないんだな。昔はもっといたのだろうか。
それこそ、あのトロフィー取った時とか。
今度昔の声劇部の話も聞いてみたい。
映像とかが見れれば、もっと分析できるんだけどな。
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