陰陽の申し子

リアス

第1話 噂の占い屋

もしも、実は科学文明に紛れてひっそりと魔法や妖怪という存在がいるとしたら貴方はどう思いますか?

そんな私の”もしも”の世界、お楽しみください。


「よっしゃあー!やっとテスト終わったぁー!」


地獄のようなテストから解放された俺は全力疾走で家へ急いでいた。

親が無駄に厳しいためテスト期間中のゲームは禁止で触るのは実に1ヶ月ぶりになるからだ。

家は歩いて5分程度だから学校までは歩いて向かっている。


「くっそ、やっぱチャリ通にしとくべきだったか。ん?あんな店あったっけ…」


息切れで膝に手をついて深呼吸をしていると自分の右側にあるビルの地下一階に当たる場所に初回限定500円!と大きな見出しが貼られた占い屋があった。今まではボロいラーメン屋があったはずなので新しく入ってきたらしい。


「これ、みんな当たるって噂になってた占い屋か?500円ぐらいならあるしテストいい感じだったし占ってもらうか。」


俺はゆっくりとビルの薄暗く汚れた階段を降りていく。

しかし、俺は違和感を感じた。

何故か古臭い、新築のはずなのにバブル期のさびれたお店って感じだ。まぁ占いとかって全部胡散臭いし、はずれてなんぼだ。


ドアを開けて中へ入ると20歳ぐらいの髪を伸ばし小さな丸眼鏡をかけたお兄さんが座りタバコを吸っていた。少し気だるそうな雰囲気で目には濃いクマでちょっと見た目はヤンキーに見えなくも無い。


「らっしゃーい、何を占いにきた?学業か?それとも恋愛?何でもどんとこい。」

「あ、今日テストがあったんですけどその結果を…」

「あぁ、お前そこの学生か。んじゃあこの紙に生年月日と、血液型、後名前も。」


油染みの付いたメモ用紙を渡され、一通り書くと彼は一対一の小さなカウンターの奥から虫眼鏡を取り出した。なんでメガネかけるか分かってないんかな?


「ん、生年月日は2008年6月24日、血液型はA,そして名前は…土御門。」


すると彼は名前を見るとはっはっは!と大きな声で笑った。


「えっ、どうしたんですか?」

「ふふ、大丈夫大丈夫。そんな嘘つかなくたって別に連れてってあげるって。」

「いや、何で嘘つくんすか。名前嘘ついたら500円もったいないじゃないですか。」


そう言うと彼はキョトンとした様子でこちらを見てはぁ?と変な声を出した。


「おい、ちょっと目ぇ閉じででこ出せ。」


なんで?と思いながらも俺は言われるがままに。目を閉じておでこを前に出す。

するとおでこに何かを書くような指で触ってくる。ちょっとこしょばい。おでこってこしょばいんだ。


「おい、目ぇ開けてみ?」


目を開けると何があるわけでも無かったが、なぜか彼はすごく驚いた様子でこちらを見てきた。意味が分からん。


「…よし!今日はただで占ってやる!その代わり明日もここに来い。ゲームよりは面白い事をさせてやる。」

「え、え?どう言う事ですか?マジでどう言う事ー。」

「絶対だぞ!頼んだぞマジで。待てよー、えーっと…全部20点台って出てるんだけどお前マジ?」

「クソガァァァ!」


俺は涙ながらに家へダッシュし、ゲームをすることもなくすぐに寝た…


そして土曜日、玄関先に居たその人は俺を見つけてすぐに店の中へと押し込んだ。


「ここだ。」


彼は後ろにあった扉を開くと電気も無い先の見えない真っ暗な階段があった。不思議なことに、ここは地下一階までのはずなのに。

俺は渡された一つのランタンと共にその暗い暗い闇へと降っていった。




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