今を生きる魔女

シアン

序章 ~魔女が生まれた日~

ある日少女は誓った、自分のすべてを捧げよう、腐った神たちに見放された私が神の代わりに、あなたたち悪魔を信じましょう。

「私の全てを持っていけ…悪魔ども…!血が欲しいならくれてやる、寿命が欲しいならくれてやる、髪も、腕も、足も、心臓も!」

「代わりに私にあのくそったれな神どもをぶっ飛ばす力を寄こせよぉ!!!」

むせ返るような鉄の臭い、焼けた肉の臭い、泥の臭い。

少女はその中央で全力で叫んでいた。

そして少女を囲むようにいくつもの黒い影が伸びる

『『『汝その契約を希望するか、我らは悪魔、汝が願い、そして贄を捧げるというなら力を与えよう、』』』

『我は汝の知恵を』『我は汝の血を』『我は汝の魂を』

口々に影が代償を言って彼女から奪っていく。そして最後の一回り大きな影は

『我は汝の時をいただこう、時とはすなわち汝の人としての時間を失うということ』

『これすなわち悠久の時を生き、汝が望む通り神を滅したとしても死ぬことなく永遠に生きていくということだ』

「あぁ…いいさ、不老不死なんて本当の魔女じゃないか…」

「くれてやるよ私の時間、全員契約してやる!」

『契約を受諾した!』

影が少女に潜り込み大きく体が跳ねる。

「…もう、誰にも止められない」

少女「だった」者は大きく姿を変え少女の髪は白く、眼は悪魔のように赤く変貌し手元に出た一冊の本を手にし立ち上がる。

「さて、今度は狩られる側だ、神。ついてこい悪魔たち」


-魔女が生まれ、そして神との戦争が始まった日のことである-





「まさか私のこんな古い記録があるとは、やっぱり世界は広いな、アイン」

古い廃小屋の中、本棚の前で立ち読みしていた少女がそばにいる男性、アインに話しかける。

「…ずいぶん昔のことを、今ではもう誰も覚えていないことだ」

「言ってくれるじゃないか、まぁ少なくとも私は覚えているわけだけどね。」

「…休憩が終わったなら行くぞ、間もなく目的の場所だ」

「はいはい、了解しましたっと」

本を本棚にしまい少女は男と小屋を出る。

「心地よい風だ…生を実感するような感覚だ…」

「次はどんな場所になっているだろうか、なんせこの地に来るのは約300年ぶりだからな」

「…生物は各々独自の文明を持ち進化していく、それがされないなら停滞し衰退していくだけだ」

「アインは怠惰なことが嫌いだからな、だからこうして世界の様々な場所を巡っているんじゃないか」

「…まぁ一緒に見る景色はいつも退屈しない」

「お?珍しくデレたじゃん。もうかなりたくさんの時間一緒にいるけどアインがデレてくれたのは数えるほどしかないぞ」

「…言うんじゃなかった」

魔女はニヤニヤしながら男の一歩前を進む


一組の男女が森の中を歩く、少女は、いや「魔女」は今を生きている。

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