それは小さな海になった
壊れたものを、いくらなおそうとしても、
まったく同じには、なおらない。
ならもう、いっそ粉々に、
もとの形がわからないくらい粉々に、
壊してしまえばいいかって、ね。
それを集めて、
風に飛ばされないように懸命に集めて、
水と混ぜてみる。
その水は、涙だったかもしれない。
その水は、雨だったかもしれない。
ぐるぐるぐるぐるぐるぐる……と、
濁りきって、渦巻いた。
さきの見えない不安がうまれた。
ねえ、どうすればいい?
もう少し、待ってみる?
落ち着いて、落ち着いて、
きっと大丈夫だって、言い聞かせてみる。
そしたら、だんだん渦が消えていった。
粉々になっていたものが、ゆっくりと、
そこに落ちていく。
新たな形になっていく。
濁っていた水が、ゆっくりと、
澄んでいく。
さきがひらけていく。
あ、小さな海ができたみたいだ。
さきが見えてきた。
そこには、優しさという太陽がいてくれた。
太陽に照らされた小さな海は、
きらきらと輝いていた。
それはとても、綺麗だった。
とてもとても、綺麗だった。
そして、あったかかった。
こころゆくまで 志夜 美咲 @kyu_eu-nk_ni
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