第4話 最期の時

 土方が落馬したことに気づき、シルバが直ぐに駆け寄ってきた。


「おい、土方、大丈夫か?」


 ドーンという音は帝国軍の魔術使いが放った攻撃魔法の音で、その攻撃魔法は土方の腹部を貫いていた。


 シルバが倒れている土方に声をかけているところに帝国軍の兵士が襲い掛かる。


 土方は直ぐに近くに落ちていた剣を拾い、起き上がりざまに帝国軍の兵士を斬り倒していった。


「おい、シルバ、お前はやはり生き残れ! 何年かかってでも、帝国軍から国を取り戻すんだ!」

 土方はシルバを馬に乗せると、馬の尻を剣で軽く突き、シルバを戦場から離脱させた。


 土方と一緒に残ったのは、敵将『ブリガン』を討った際に同行した50人だけであった。


「お前ら、ここが死に場所だ! 最後まで付き合ってやる、この土方歳三について来い!」

 土方は味方に激を飛ばすと自ら剣を上に掲げ、敵軍へと向かって行った。


 土方の激に兵士たちは気持ちが昂ったが、次の瞬間、土方は掲げていた剣を落とし、そのまま前方に倒れた。


 土方に息はなく、土方と共に戦った兵士たちも次々と戦場に散っていく。


 生き残った一人の兵士が土方の亡骸を馬に乗せ森の奥にある泉の近くまで逃げ延びた。


 兵士は土方の亡骸を埋め、『勇敢なる転移者の碑』という墓碑を建てるとその前で自害した。


 戦は帝国軍が勝利し、帝国は魔王軍の最後の城を占拠した。


 シルバやクロードは森の更に奥の山中まで逃げ延び、散り散りとなった魔族を集め、再起を図るのであった……。


 それから30年後……


「クロード様、ようやくこの時が来ましたな!」

「ああ、亡き先代魔王のシルバ様や土方さんの仇を討つことができる!」


 クロードは30年の間に戦力を整えて帝国軍を押し返し、かつての魔王国を取り戻すところまで勢力を盛り返していた。


「ようやく、ここまで来たか! この戦で勝って旧領を取り戻す!」

 

 新しく魔王になったクロードは連戦連勝を重ね、魔王国を再建していく。

 

 そしてクロードは魔王軍を鼓舞するとき、必ず赤い鞘に入った刀を掲げる。


 そして、クロードは帝国から見事に国を取り戻し、土方が託した愛刀、和泉守兼定いずみのかみかねさだを魔王国の護り刀として代々の魔王に引き継いでいくのであった。

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鬼の副長、魔王軍を指揮する! 888 @kamakurankou1192

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