第12話 修学旅行④
夜、19時ごろ。
子供らと一緒に旅館の食堂で飯をたべ、少年ら二人が風呂に入っている間、楓は桃花の部屋の前に立っていた。
「入っていいか?」
ドアを2回叩き、部屋の主に尋ねる。
「入って」
そう言われたので、中に入る。
「桃花、もう風呂入ったのか...」
いい香りが漂っている。
「へ、変態だぞ...」
「す、すまん」
互いに顔が赤い。
「...さて、色々と教えてもらおうか?」
「...言い方、やばいよ?」
この後、洗いざらい彼女と対話した。あ、話をしただけだからね。話をした以外特に何も起きてないからね。男女二人、密室だけど特に話をしただけだから!!
談合は夜21時まで続いた。
「そろそろ、子供たちの消灯時間だから、楓も帰りな」
「ああ、わかった。ありがと、懐かしい気分になった」
実際、ここで話した内容はほとんど桃花がいなかった時期の陰陽師連盟のことばかりだった。そして、桃花が調べた城守家について...
▪︎
数年前、私が朱鳥村に着いた頃。朱鳥村の様子が聞いていたのとは全く異なっていた。村の家々は荒れ狂い、塗装された道は崩れ、草木が無造作に生えていた。まるで人がそこに住んでいないように。
「何よ、ここ...」
辺りを見渡す。そうすると、背後で爆破音が聞こえた。
「え?なに?」
ふと後ろを振り返ると、白髪のピンクの着物を着た女性が妖に背負い込まれて走ってきた。
「お願い〜そこの君〜危ないよ〜」
私は彼女が妖怪に攫われていると思った。
腰に据えた刀を抜き、カエルの舌のように自由自在に動く刃先でその妖怪を切り刻まんとする。
「バッキャやろー、ワイじゃねえぞ!後ろのやつだ!」
その緑の妖怪はとてつもない瞬発力で私の抜刀をかわした。彼?言ったことをそのまま鵜呑みにし、彼の背後の方を見ると燃え盛った車輪が迫ってくる。
輪入道だ。
「待て、城守零...当主様がお呼びだぞ」
城守だと?あの女が城守の血筋。
「いやよ、あなたたちは妖怪だけの世界を作ろうとしてるじゃん!私はそんなの嫌よ」
「な、なぜその計画を知っている!?」
「...私は次期当主よ、まあ城守家はもう終わらすけど...」
妖怪だけの世界、なるほど城守家を危険分子と解釈するには十分な素材だな。
「なあ、お前も城守家か?」
「そうよ」
「妖怪だけの世界を目指さないなら、何を目指す?」
「人と妖怪が仲良く暮らせる世界!」
合格、私は輪入道と戦った。緑の妖怪が言うには、彼女をここから逃すための時間を稼いでくれとのこと。私は彼女を逃すのに加担をした。それがいけなかったのだろう。私はその後、恐ろしいほどの城守家に捕まり、ここ数ヶ月まで城守家の屋敷の牢屋に入っていた。そこの暮らしは意外と快適。3食出るし...いや、今はそういうところではない。私はどうにか逃げることに成功し、たまたま学校の教師に欠員が出たために変身術式で姿を変え、一教師として過ごすこととなった。
そしたら、城守結菜という子が来たじゃないか。楓から聞いた感じ、結菜の母は2年前に亡くなったらしい。零か?ちゃんと朱鳥村を出れたのか...待て、じゃああの子はいつ生まれた?あの時には全くいなかったぞ?いつ父と出会い、いつあの子を産んだ?
桃花は疑問の淵に陥った。
▪︎
朱鳥村。
コタローは霧の中、順番に鳥居をくぐる。見えてきた屋敷。
「久しいな...」
城守家の屋敷。
「コタロー...なぜ帰ってきたのかい?妖力は戻ってないのでは?」
城守堯。妖天女直々に出迎えてきた。
「元をどうした?どう改造した?」
笑みを浮かべる。
「そうね...私の思惑は零を超えたわよ」
コタローはハッとした。元はすでにもうあの頃の元ではない。そう感じ、すぐにもと来た道を...
「帰さないわよ」
とてつもない畏れがコタローを襲った。妖力が少なくなった彼には到底敵わない。
「あなたはなぜかここに来て、なぜかすぐに戻ろうとする」
「...っち」
「そんなの帰すわけないわよ。あなたは一回裏切った身、ずっと私の従順な駒にしてやるわ」
妖艶な笑いを高らかにする。森中を響くように。
(...これでいい、きっと結菜がこの醜い争いを救ってくれるはず...)
コタローは城守家に囚われてしまった。城守家の牢獄に閉じ込められることとなったが、何か彼には策があるようである。
河童の恋流れ アカサ・クジィーラ @Kujirra
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