第8話 陰陽師
「そいや、名前はなんと言うんだ?」
「まさか、妖怪に名を聞かれるとはな。不思議だ、こんな畏れのない妖怪は」
「ふん!畏れがないのは呪いのせいだ!今は妖力が全盛期の4分の3ない」
「呪いか...」
陰陽師は憐れな表情で河童を見る。
「えっと、俺の名は灯篭院楓だ!子河童!」
灯篭院、陰陽師の名家ではないか。そんな奴が単身で朱鳥村にやってきたと言うわけか。彼には何かしらワケがありそうだ。でも...
「子河童って呼ぶな!何千年も生きてるわ!一応コタローって名前があるわ!」
「別にいいじゃないか!妖怪は妖怪だ、俺はお前と仲良くする気はないぞ!」
台所から雑炊と漬物を持ってきた彼女が戻ってきた。
「ああ!コタロー!いいの?!人の前に出て!あと、あなたは安静にして!!!」
こっぴどく心配された妖怪と一人だった。
▪︎
「でもよかったわ〜コタローと...えっと、楓くん?が仲良くなって」
『なってない』
同時に否定する。結菜は笑っている。幸せなひと時が過ぎていた。
「そいや、楓は何才や?」
「15」
「わあ、お兄ちゃんだ!ねえ、お兄ちゃん、これからどうするの?」
結菜の天然さらしの笑顔が炸裂。楓には効果抜群だ。
「お、お兄ちゃん...まあ、えっと...いつかは京に戻るよ。それまではずっとここに住まわせてもらおうかな?」
「いいけど、お父さんに聞いてみないとね!あと、コタローのことも聞いてみよう!」
無邪気は時にして恐ろしい。彼が一瞬城守家について喋りかけそうになったが、コタローが彼の腰を叩き、言わせないぞオーラを出した。彼女が城守家の次期後継であり、先代後継が彼女を逃がした事実は絶対に伝えてはいけない。約束したのだから。
▪︎
「それで...陰陽師の彼と河童のコタローさん?を一緒に住まわせてほしい...と」
父は怪訝そうな表情を浮かべる。研究材料としては申し分ないが、最愛の娘が変な奴らと絡んでいるのは父からしては心配であろう。まして一匹妖怪と見知らぬ少年。
でも、娘の表情を見ればかなり信頼をしているようだ。
「はあ...まあ、いいか...部屋はたくさんある。好きなの選びなさい」
父は心が折れた。娘に嫌われたくない気持ちが勝ったっぽい。
「ありがとう!お父さん!」
やはり無邪気は末恐ろしい。
「...結菜、少しだけ離れててくれないか?彼らと少し話がしたい」
「うん!」
彼女は自分の部屋の方へ走って行った。
「こら!走るな、危ないぞ!」
父は注意したが、そのまま二階へ上がっていった。
「さてと、もう言ってしまったので、ここに少しの間住んでもいいが、結菜に危険な目を合わせないでくれよ?」
「もちろんです。絶対に彼女に身に何も起こさせません」
少年はちらっとコタローを見ながら言った。
「...ふ〜ん、呪いが解けたらすぐに出ていくよ」
「そうか...」
結菜と城守家は絶対に接触しないようにしなければいけない。あやつらの百鬼夜行が爆誕してしまうから。
▪︎
「妖天女様、あの少年が城守結菜と接触しました」
多くの小天狗たちが報告を為す。小天狗は城守家百鬼夜行の大幹部の一角にある大天狗大明神の部下。隠密部隊である。
「水晶で見てたわ。あなたたち、いつも報告ありがとね」
「申し訳ありませんが、妖天女様。城守結菜の下にあの憎っくき河童がおられます。」
彼女は河童の名を聞いただけで怒り狂う。かつて私たちの後継を逃した裏切り者を!!
「ああ、またあいつか!!ほうほう、またわたしたちを邪魔するのか...私たちの計画をな!!」
城守家現当主、城守
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます