第4話 ようこそ
小さくなったかっぱさんをカバンに詰め込み、結菜は走る。じきに陽が落ちようとしている。お父さんもきっと心配になっていく時間のはず。
急がなくちゃ。
村の大通りを突っ切って、現在住んでいる研究所も居住スペースにたどり着いた。父さんにバレず、自分の部屋へ入ることができた。何か父さんが言っているように聞こえたが、一旦無視して、かっぱのコタローを一応自分の部屋に置いた。
「ちょっと、お父さんと夕飯食べてくるから!ここで待ってて」
そう言い、結菜は部屋を出た。
「...親子揃って、勝手な奴やな。ま、ええか...」
コタローは布団の上に寝転んだ。
■
「コタロー!私、コタローのこと、好きだよ!」
コタローは目が覚めた。懐かしい夢を見たものだ。かつて出会ったあの少女、今はもう...
部屋のドアが開いた。夢とは別の少女が入ってきた。
「コタローさん、ほかの人に見られなかった?」
「ああ、大丈夫や」
彼女は安堵した。
「よかった〜ここ、妖研究してるから、もし見つかったら研究対象として実験とかされるかもって思ったから」
かなり物騒だなと思ったが、コタローはそんな心配しなかった。ここの研究員はきっとワイらのことを悪くは使わないと確信していたから。
「きっとバレても大丈夫やと思うけどな...」
彼女は悲しそうな目でこちらを見る。
「でも、もしコタローさんがいなくなったら...」
少ししか会ってないのに、なんだか懐かしい匂いがする。彼女は悲しそうな表情で小さい小さい河童を見つめた。
「大丈夫、大丈夫や、ワイは絶対にいなくならへん。絶対にな」
そう言ったら、ドアを叩く音がした。
「結菜、何話しているんだ〜?」
お父さんの声だ。彼女はワイを咄嗟に布団の中に入れ込み、彼女の父と話した。
「いや〜ちょっと勉強で、読んでいたの〜」
咄嗟の言い訳をする。
「そうか、まあそろそろ研究員皆、寝静まる頃やから静かにな〜じゃあおやすみ」
「うん、わかった〜おやすみ〜」
父の気配が消えた。彼女はそのまま布団の中に入り、水臭いワイと一緒に寝た。
「ふふふ、一緒に寝ましょ」
「お前、だいぶ荒々しいな」
ワイは顔を赤らめた。
■
ワイは一応研究員と村の者らにバレず、彼女のもとで数日間過ごした。そして、時が来た。ついに彼女はこの研究所を出て、もともと暮らす予定だった新たな家に行くらしい。ワイは彼女の父にバレぬようぬいぐるみのふりをする。
「危ない木の端くれは全て除去したから安心して暮らせるな」
「そうね!あれはおんぼろすぎたもん」
彼女は元気がいい。そして、車を走らせてたどり着いた赤い屋根の白い一軒家。周りを自然が囲み、のどかな立地である。おっと、近くに川もあるし、池もある。そこで、久しく自由に水浴びできる。ここ数日、人間が作った水を浴びただけだったからな、やっと自然の水が浴びられる。コタローも実は楽しみに思っていた。
「結菜、この家にはなんと結菜の部屋があります!2階の階段を探してきな。上がってすぐだから!」
結菜は笑顔で応えた。
「わかった!ありがと!お父さん」
純粋無垢な小学生だなってカッパは思った。そして、彼女は綺麗になった廊下を走りまくり、ついに階段を見つけた。急勾配な階段。手を使わないと登れないぐらいだ。
彼女はゆっくりゆっくり登った。登り切った先にちっちゃな窓。その隣に赤いドアがあった。雰囲気からしてこの2階部分は工事していないようだ。
「結菜、ここに妖力を感じる。」
「え!妖怪いるの!?」
「微弱でおそらく害はないはずだが、妖力を隠すのが上手い妖怪もいる。気をつけてドアを開けるんだな」
彼女は恐る恐るドアノブに手を乗せて、開けた。
黒く染まるカサカサが一斉にどこか部屋の隅の方へ一気に集まり、消えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます