河童の恋流れ
アカサ・クジィーラ
出逢い編
第1話 引越し
日本、古より妖怪が信じられてきた地である。ある学者によれば、妖怪とは太古の神々が人間世界に必要以上に干渉し、神々の特権を剥奪された姿となっている。
そんな妖怪が1番目撃されるという
「私ね、初めは信じてなかったの...あなたのことを」
●
「ねえ、まだなの〜?」
「うんっとね〜あと小一時間くらいかな?」
「えー!まだ着かないの〜!?」
転校する際に同級生から貰った花を握りしめ、少しのお菓子を食べながら喋る小学5年生の元気いっぱいな女の子、
「そりゃ〜相当な田舎やからな」
黒縁メガネをかけ、運転する少々小柄な男、
緑豊かな風景を横目に、現代的な道を進む。その道が山奥へ進むたび、時代が変わるかのように道の形状も変わっていく。アスファルトだったものがただのあぜ道になっていく。快適な乗り心地がガタガタと最悪になっていく。
父はとある大学の教授。専攻は自然科学。日々を大学の研究室で一生を遂げるはずだった。しかし、ある一報を受け取る。今から向かう朱鳥村には科学では想像つかない"自然"がある。それを研究するためのラボがそこに設立されることとなり、父はその所長に抜擢された。都会から村にあるラボへ通うのは少々きつい。なおさら、母を失った子供もいる。だから、娘も一緒に村へ行くこととなった。
朱鳥村は四方を山々に囲まれた村、いわば盆地だ。その村を一望する東山の頂上付近に私たちは着いた。
「見えるか?結菜。これが朱鳥村や」
田んぼ8割集落2割に及ぶ自然豊かな村。その北の方にそことは似合わない真新しい白い建物。西に古めかしい木造の大きな建物。中心に集落数十件ほど。他は田んぼでたまにポツンっと一軒家がまばらにある程度。
「ここが私の暮らしていく町か〜」
彼女はワクワク気分に包まれる。ここで始まるストーリーを彼女は期待している。
■
山を降り、ここで住むための軒へ向かう。東山の方からは見えなかった南山のさらに山奥へ続く道を走る。
「着いたで」
木々のトンネルをくぐり抜け、見えてくる。ぼろぼろのあばら屋。
「え。この家?」
「そうや」
彼女の想定とは違う。白で塗装された洋風の館と思っていたら、日本家屋。しかもボロボロ。木々の柱が黒ずみ染まっている。中に入る。父が言うには前の人が出てからそのままの状態らしい。めちゃくちゃ床に穴が空いてるし、畳ないし、天井から少し光が見えるし、木の凶器が至るとこにある。
「こりゃあ、当分は住めないな」
「そだね...」
絶句。
「数週間ぐらいはラボに泊まるか?」
「うん、絶対その方がいいし、なんならそこにずっと住ませて?」
家をリフォームする計画が来てすぐに立てられたのであった...
■
南山の奥地、小さな御池。カタカタと鳴り響くコダマが集まっていく。そして、池から聞こえる声。
「なんやなんや、うるさいわ...」
水っ気のある、寝起きたような声であった。
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