プラスティック・シーサイド

鳥心太郎

/* Prologue */

int main(void){

 夜明けの波打ち際、空は紫とオレンジのグラデーションをせっせと作り始め、早起きな小鳥がその中を泳いでいる。

 夏虫は陽の光を感じたのか夜泣き声を止め、風のないこの場で聞こえるのは潮騒だけ。


 この潮騒さえなければ、君の足音が聞こえるのだろうか。


 かつて”砂浜”と呼ばれたこの場所は、今ではただ”浜辺”と呼ばれている。

 世界中から集められた途方もない量のゴミを、名前も知らない誰かが出した廃棄物を、捨ててゆく。

 この国の政治家は、ゴミ捨て場として外国へ土地を売り出し、その対価で良い暮らしをしているらしい。


 プラスチックで作られた浜辺を、君は歩いている。

 ガスマスクが無ければ、10分で肺をダメにしてしまう浜辺を。

 安全靴が無ければ、歩いただけで皮膚を切り裂く浜辺を。

 ゴーグルが無ければ、失明してしまう浜辺を。


 君はそのどれも身に何もつけず。

 ただ、掘り出し物の、無地の白いワンピースを着て。

 後ろを歩く私に向かって笑いかけながら、歩いている。


 なぜって、君は人形だから。

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