第16話 休暇でも結局仕事をしてしまうジレンマ

「優斗……今日は休暇にするわ。しっかり休んでね」

「はぁ!? 休暇だと!? そんな時間が今の魔王軍にあるとでも思っているのか!?」

「そんな事分かっているわよ」


 幹部たちやアリシアとの手合わせから早二ヶ月。

 俺は総大将としてゴブリンだけでなくオークやコボルト、トロールなども並行して鍛えており、ここ何ヶ月か多忙な時期を過ごしていた。

 しかし今日、俺はいきなり玉座の間に呼ばれたかと思うと、魔王であるアリシアに突然休暇を言い渡された。


「どう言う事だアリシア! 分かっているなら余計に意味が分からない!」

「優斗……一日でも休んだ?」

「ぐッ……や、休んでいない……」

「だから偶には休みなさい。どうせ後一年ちょっとで休みたくても休めなくなるんだから」


 そう言うアリシアの言葉は正しい。

 休める時に休むのもまた生き残るために必要な事であることは分かっている。

 しかし時間が足りていないのもまた事実。

 あの屑国王の治めていた国の騎士団は皆レベル三〇〇を超えていたし、騎士団長はEX級の人間にしては珍しい強者だったし。


 あれで一国の戦力なのだ。

 他の国にはまだまだ強い奴も所も確実に沢山あるだろう。

 人間は人口だけ多いからな。

 更に、俺はこの世界に再び来てからずっと鑑定を発動させていたのだが、五〇〇年前よりも人間の全体的なレベルもステータスも上がっていたし、武器も昔よりもいいものが多い。

 この様にマジでヤバいのだが、俺だけが張り切っても皆がついてこなければ意味がない。


「……分かった。休ませてもらおう……」




 ―――とは言ったものの……


「何すればいいんだ……?」


 場所は変わって魔界一の都市――アスラ。

 魔王城の下にある人間界で言う王都みたいな所だ。

 そのため魔族の数も多いし商業も盛んで、魔界のほぼ全てが集まっていると言っても過言ではない。

 だが俺自身は一度も来たことがないため……


「道がわかんねぇ……それに店がどんなのかも分かんねぇ」


 俺は一人迷子になっていた。

 と言っても【転移】を使えば一瞬で魔王城に帰れるし、そもそもアスラなら何処からでも魔王城が見えるので帰るのには問題ない。

 だが、正直何をして楽しめば良いか分からない。


「如何しようかなぁ……この世界にはラノベなんてないし……」


 日本では外に出るとすればラノベを買いに行くかグッズを買うか、推しのライブに行くかくらいしか無かった。

 その全てがないこの世界で俺は完全に休日を持て余してしまっていた。

 

「まぁ取り敢えず何か食べるかなぁ……」


 俺は適当に行列の出来ている店に並ぶ。

 因みに俺は待つのが嫌いじゃない。

 こうやって何も考えずにボーッとしているのも乙なものだ。


 結局二時間くらい待ってその店に入る。

 如何やらこの店はパスタ専門店らしく、日本でも見た事があるようなパスタも幾つかある。

 しかし俺も知らない様なパスタもあった。


 と言うかパスタとスパゲッティって何が違うんだろうな?

 別に料理家でも無かったから特に気にしていなかったが、こう言った所に来ると無性に気になってくるんだよ。

 スマホが使えれば一瞬で分かるんだけど勿論使えないし。


 そんな事を考えながら何を注文するか考えていると、ふと一人の魔族が目に入った。

 肩ほどで切り揃えられた黒と白の髪は髪の色がたくさんあるこの世界でも目立っている。

 目も髪と同じく片眼が白で片眼が黒。

 顔はアリシア程とは行かないものの、物凄く整っている。


 彼女はきっと此処のバイトの者だろう。

 まだ接客が少したどたどしいし、緊張で何度が声が上擦っている。

 何やら自信なさげだし、正直接客には合わなそうな雰囲気を纏っているので、こんな有名店が正式に雇うわけがない。


 だが何故俺がそんな彼女が気になっているかと言うと……


「ぶっちぎりに才能あるな……魔王軍に是非欲しい……」


 ———それは彼女の才能が希少で抜群だからだ。

 正直何故こんな所で埋もれているのか分からないレベルで。


————————————————

ベル《神呪(極)》

魔族神魔族 25歳

称号:《神と魔の孤児みなしごの子孫》《先祖の力を色濃く受け継ぐ者》


《スキル》

《神魔覚醒Level:0》

《神法Level:0》《邪法Level:0》

《神眼Level:0》《邪眼Level:0》

【魔闘気Level:2】【格闘術Level:3】


ステータス

Level:30

総合値:3050(A級)《69600(S級)》

体力:500《12800》

魔力:1000《20000》

筋力:480《11400》

防御力:470《10900》

敏捷性:600《14500》


*《》は優斗にしか見えない。

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 俺は自然に神呪状態に陥っている者を初めて見た。

 それも本人にすら見れない様に物凄く巧妙に隠されている事なんて。

 更にステータスも神呪のせいでめちゃくちゃ下がっているが、実際の数値は異常なほど高い。

 

 因みに神魔族とは、嘗てこの世界を支配していた神と悪魔の間に生まれた禁忌の子で、人間には本当に一部の例外を除いて絶対に使うことのできない悪魔と神どちらのスキルを自在に扱え、基本ステータスも高く才能にあふれている種族のことだ。

 そのチートっぷりで神に恐れられ、一時期は神自らが神魔族を殺しに行っていたほどらしい。

 しかし半ば下界の住人となった神魔族を殺すには神自身に罰が与えれるため、こうして強くならないように神呪を掛けられているようだ。


 そして俺がこのステータスを見える理由が、俺も神眼を持っているからだ。

 これは俺が初めての召喚の時に神から貰った唯一のスキルで、正直言って使い勝手が悪いし、始めはマジで使い物にならないのだが、まぁ今では結構使っている。


 少し話がずれたな。


 兎に角こんなにいい人材を放っておくわけには行かない。

 何としてでも魔王軍に入れて見せる。

 そのためにはまず……


「そこのお姉さん! 注文したいんだけど……」

「あ、は、はい、すいません! 今行きまーす!」


 会話をするところからスタートだ。



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 そう言えばこの話で約束の5万字に到達しましたね。

 現在異世界週間41位に総合週間86位と未だ上がり続けているので、取り敢えず10万字までは書こうと思います。

 その先は不明ですね。

 なので、☆☆☆とフォローをよろしくお願いします。 

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