第6話 魔界に行こう
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします!
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――三日後――
俺は再び転移した場所へと戻って、木の下で木漏れ日を浴びながら寝転んでいた。
「……どうしようかな……これから……」
あの日……受付嬢の話を聞いた後、自分の感情を制御できなかった。
いや制御しようとすら思わなかったと言った方が正しいかもしれない。
もしかしたらあの時……完全に人間という種族に落胆したのかもな。
もう終わった後に地獄の様な光景を見ても何も思わなかったほどだし。
それどころか少しスッキリした自分がいたのを覚えている。
「あーこれはもう人間界で生きていけんなぁ……ほんとどうしよ……」
この三日間は普通に動物を狩って食べているが、正直何も味付けがないので美味しくない。
それにベッドなど無いので腰は痛くなるし、夜はめちゃくちゃ寒いので慣れたもんじゃ無いんだ。
俺はそこでめちゃくちゃいい事を思い付いた。
「そうだ―――魔界に行かばいいんだ。そうすれば人間に誰にも会わなくて済む!」
そうと決まれば早速準備だ。
俺は亜空間収納から魔族の服を取り出して着る。
何故勇者である俺が魔族の服を持っているかと言うと、仲間に魔族が居たからだ。
その魔族の名前はアレン。
俺が倒した歴代最強と名高かった大魔王バアルの息子で、父の圧政から魔界を救おうと俺に直談判してきためちゃくちゃいい奴だ。
仲間たちと気が合ったため種族の垣根を超えて仲良くなった。
俺達が大魔王を倒した後、新たに魔界を支配する魔王となった筈だが……
「あのクソ魔術師が言うには既に倒されてるんだって?」
何でだ?
アレンは人間界を侵略することなんて考えていなかったぞ?
奴の言葉は初め奴を全く信用していなかった大魔導師のシンシアが常に真偽魔法を発動させて話していたが、「父を倒したい」と言う言葉や「人間界を侵略するつもりは全く無い」などを含めたすべての言葉に嘘偽りはなかった。
その御蔭で皆魔族だが仲間に加えることを良しとしてくれた。
そんな奴が人間界に侵略など本当にするのだろうか?
「まぁそれも全部行ってみれば分かるか――【転移】」
俺は色々な疑問を解くためにも転移で魔界へと転移を開始した。
***
「さて――魔界到着っと。……此処は全く変わってないな」
俺が転移した場所はアレンと初めて会った場所で、魔界にしては珍しく瘴気に侵されていない貴重な森だ。
五〇〇年前と殆ど――木などは巨大化しているが――変わっていなかった。
「俺……この世界に来てから森にいる時間の方が長い気がする」
きっと俺の思い込みではないと思う。
でもさ、森ってめちゃくちゃ落ち着くし居心地がいいんだよ。
だからわざわざクズどもを見るよりも森で動物と戯れていた方が一〇〇億倍も楽しい。
「だがそろそろかな……」
「―――おい! 貴様、どうやって此処に入ってきた!? 此処は神聖な場所であるぞ!」
俺が手を上げた瞬間にこの森の管理者であろう魔族が飛んできた。
魔族は人族と違い、翼を持っているため誰でも飛べる。
更に身体能力も人間よりも遥かに高いときた。
だから異世界の強力な勇者に頼る羽目になるのだ。
「俺の居ない間に聖域みたいな場所になってたんだな此処。知らなかったな……ごめんな? お前、この森の管理者だろ? いい仕事してんな。しっかり管理されてて五〇〇年前より綺麗になっているんじゃないか?」
「五〇〇年前……? 一体何を言っているんだ? ……まぁそんなことは取り敢えず置いておくが――おい貴様、見た感じ人間のようだが……どうやって此処に入ってきた?」
警戒心やら敵意むき出しで聞いてくるルドルフに、ちゃんと管理人としての仕事をしてんだなぁ……と感心しながらも答える。
此処でわざわざ隠す必要なんてないからな。
無駄に警戒されるだけだ。
「転移の座標に指定していたのが此処だったんだ。魔界に入るには転移か無理矢理こじ開けるしかないが……多分後者を選んでいたら魔界壊れるだろうからこうするしかなかったんだ」
「転移の座標に此処を指定していただと……? そんな事四〇〇年前には禁止されているはず……」
「―――四〇〇年前? お前一体何歳なんだよ。気になるな……【鑑定】」
俺は毎度おなじみの鑑定タイムに入る。
今回はすべて表示でいいだろう。
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ルドルフ
魔族(吸血種) 458歳
称号:魔王軍幹部最強 森の管理者 前魔王の最後を見届けし者
《スキル》
【吸血Level:10】【再生Level:9】
【血液操作Level:9】【眷属召喚:8】
【格闘術:9】【剣術Level:9】
【6属性魔法Level:8】…………
ステータス
Level:891
総合値:1309600(GOD級)
体力:236000
魔力:420600
筋力:219000
防御力:204000
敏捷性:230000
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へぇ……結構強いじゃないか。
五〇〇年前の魔王軍幹部と比べても遜色ない程の強さと言っていいだろう。
それに魔族の種族の中でも吸血種は特に強力な種族の一つだ。
別名不死者とも呼ばれるくらいに厄介な再生能力を持ち、傷を与えれば与えるほど血が増えるから強くなっていくし、眷属達も普通にSSS級並みの力を有する奴がゴロゴロと居るからな。
しかし俺はそんなことよりも気になることが一つあった。
―――『前魔王の最後を見届けし者』ね。
もしも前魔王がアレンならば、奴の死に際を知っていて、その目に焼き付けているということだ。
是非ともルドルフにはアレンの事を聞かせて欲しい。
俺は手っ取り早く自身のステータスを確認してもらうために話しかける。
此方がお前を鑑定出来るほどの強者ですよと敢えて分かるようにして。
「なぁ――ルドルフ」
「なっ!? 貴様いつの間に我の名を……ステータスは偽造で見えなくしているはず……貴様何者だ!?」
「いいからさっさと俺のステータスを鑑定してみてくれ。それで全てわかるはずだ」
俺はルドルフでも鑑定できるように偽造を全て解く。
鑑定とは、本来自身とLevelが五〇以上離れていると絶対に発動しない。
それは相手が無意識の内に鑑定をブロックしているからだ。
しかし相手が意識して見させようとすれば、鑑定出来るようになる。
今俺は無抵抗を意識しているので、Levelが一〇〇以上下のルドルフでも鑑定できるようになるだろう。
俺が断言する言葉に、ルドルフは訝しげにしながらも鑑定を使用した。
そして俺のステータスを見たであろう瞬間に、
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」
ルドルフの顔が驚愕に染まり、絶叫が森中に響き渡った。
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お試し投稿なので、5万字程書いた時点で、人気であれば続けます。
なので、☆☆☆とフォローをよろしくお願いします。
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