第4話 人間の醜さに触れました①
優斗のステータスを一部変更しました。
EX級 ⇒ GOD級
————————————————————————————
転移で移動した場所は、俺が昔仲間たちとよく飲んでいた酒場のはずだったんだが……
「そりゃあ五〇〇年も経てばあるわけもないか……」
そこには既に建物など存在せず、木の生い茂る森となっていた。
俺は樹の下に何となく座る。
「まぁ覚悟はしていたけど……実際にないと分かると意外と辛いもんだな。それにしても……」
先程から精神的にショックな出来事が多発しているので、誰も居らず、小鳥のさえずりや動物の鳴き声、木々が風に揺れて鳴るざわざわとした音を聞きながら、木漏れ日を浴びているとざわめいていた心が落ち着いていく。
「あーめちゃくちゃ眠たくなってきたなぁ……でも寝ないように……し……ない……と……」
俺はあまりの心地よさに俺の意思とは裏腹に目を瞑ぶってしまう。
俺の意識は心地よい微睡みと共に遠ざかっていった。
***
「―――――はっ」
俺は意識が覚醒し飛び起きる。
そしてすぐに辺りを確認すると、そこは先程までいた森だった。
しかし日が傾いているのか寝る前よりも少し暗い。
「ああ……寝てたのか……それにしても気持ちよかったな」
俺は伸びをしながら立ち上げる。
正直まだ寝ていたいが、お腹も空いたしこのままだと風邪を引きそうなので、少々名残惜しいが移動を開始。
しかし直ぐに俺は止まることとなってしまう。
昔とは景色が違いすぎて何処が何処だか分からなくなってしまったからだ。
「どうしよ……完全に道に迷ったな。うーん……人の多い所を感知してそこに向かってくか」
俺は近くで一万人を超える人間の密集している所を探す。
しかし中々見つからない。
もしかしたら此処は三〇〇年前にあったとされる魔王との戦いで戦場になって、そのまま放置されているのかもしれない。
俺がいたら絶対に此処は死守してたんだがな……。
そんな考えても無駄な事を考えてしまう。
すると此処から約一〇〇km程離れた所に三、四万人ほどの人間が集まった場所を発見した。
俺は持ち前の身体能力で森の中を颯爽と駆けていく。
昔の仲間に森での全力疾走の仕方も教わっているため全くスピードを落とさないで済む。
走り出してほんの十数分で目的の町が見えてきた。
そこは高い外壁に覆われていて、要塞の様な印象を受ける。
まぁ走っている途中に何度も魔物に遭遇しているからそのせいだろうが。
魔物とは、この世界——人間界に魔界の瘴気が漏れだし、それに接触したモンスターや動物、植物が変貌した姿だ。
性格は殆ど全てが獰猛で、生き物を見れば例えそれが同じ魔物であろうと殺し合う。
ラノベではモンスターと魔物は同一の存在として取り上げられがちだが、この世界では全くの別物だ。
モンスターには魔物と違って知能があり、ドラゴンなどもこの分類に入る。
因みに先程俺が出会った魔物は、本能で俺に敵わないと分かったのか逃げていった。
まぁ俺も既にLevelがカンストしているのでこれ以上倒しても意味ないのだが。
そんな事を考えていると、遂に城門? の様な所に到着した。
何やら検問みたいな事をしているのか門番の様な兵士が二人ほどいる。
取り敢えず鑑定してみるか。
えっと……名前はどうでもいいからステータスだけでいいか。
「【鑑定】」
————————————————
《スキル》
【剣術Level:5】
ステータス
Level:45
総合値:800(C級)
体力:220
魔力:50
筋力:180
防御力:170
敏捷性:180
————————————————
————————————————
《スキル》
【剣術Level:5】
ステータス
Level:47
総合値:930(C級)
体力:230
魔力:100
筋力:200
防御力:200
敏捷性:200
————————————————
「へぇ……まぁまぁ強いじゃん。さすが魔物のいる場所から近い街の兵士だけあるな」
俺は一端の兵士の実力に少し感嘆する。
ただステータスの差を見るに、才能の差が顕著に現れているな。
たったLevel2で此処まで変わるんだからな。
ただ検問があるんなら俺は入れないかもしれない。
俺の身分証なんて物を持っているわけないし、五〇〇年前に使っていた冒険者証はもう使えないだろうし。
ただまぁいくらでもやりようはある。
「出てこい【収納】」
俺は空間系スキルの一つ、【亜空間収納】を発動させて納めていた中でも品質の低く、尚且つボロボロの防具を選んで装備する。
更には俺のステータスに最恐級のデバフ効果のついたイヤリングと腕輪を装備して準備完了だ。
これで如何にも初心者っぽい冒険者が敗走してきたと思われるだろう。
我ながら完璧な作戦だと思う。
ついでに全身を魔法で傷だらけにすると、足を引きずらながら検問を通ろうとすると、二本の槍で止められる。
「何者だ貴様。この街に入りたくば自身の身分を示す物を提示せよ」
「す、すいません……ゴブリン・デビルに負けて何とか此処まで戻ってきたのですが……その時に冒険者証を落としてしまったみたいで……」
「何? ふむ……なら持っていないのもしょうがないか……。見た感じ駆け出しの冒険者の様だし……」
「は、はい! そうなんです! まだ冒険者になって二ヶ月でして……」
よし、上手くいきそうだ。
それに入って悪さをする気は一切ないから別に受けないでもいいだろとは思ってしまうが。
しかしそんな俺の考えはあっさりと裏切られる。
「―――だがダメだ。お前をこの街に入れることは出来ない」
「なっ――それは一体何故ですか!?」
まさか俺の変装がバレたか?
ちゃんと傷まで付けているのに?
しかしそんな俺の予想はまたもや大きくずれていた。
兵士たちは意地汚い笑みを浮かべると、手を此方に出してきた。
俺はその行動に一瞬何をしているのか分からなかったが、すぐに理解する。
「……賄賂をくれと言っているのですか……?」
「賄賂? 違うぞ。これは通行料だ。お前みたいな証がない者には貰っているさ」
成程……そう言うことか。
残念だな……この街は魔物が沢山いるからお金には困っていないと思っていたが、貪欲に欲しがるか。
「で、ですが……僕はお金も一切持っていません! どうか免除してもらえませんか?」
「ダメだ。でないと入れてやらないぞ? お前は見た感じ怪我をしているじゃないか。このまま野垂れ死にたいのか?」
「…………これでどうですか?」
俺はポッケの中からこっそり亜空間収納を発動させて昔のお金を取り出す。
これが元の世界なら昔の金貨とかは高価になっているものだが……果たしてこの世界ではどうか。
しかしどうやら異世界でも昔の金貨は貴重らしく、目の色を変えてそれを奪い取ってきた。
「へへへっ、お前いいもの持ってんじゃないか。よし、入っていいぞ」
「……ありがとうございます……」
この世界に来てから腐った人間しか見てないな……ほんと俺のいなくなった五〇〇年の間に何があったのか……。
俺は再び下がった気分の中、街へと足を踏み入れた。
「いてっ!?」
「な、何だ急に……」
それと奴らの頭に小石をぶつけたのは内緒な?
————————————————————————————
お試し投稿なので、人気が出れば続けます。
なので、☆☆☆とフォローをよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます