13.浄水!浄水!貯水!安心して飲める水。
ついにやってきた。
都市の水問題において一番のポイント。
都市の水路に引き込む川の水、そして使い終わった汚れた水を集めて行う――浄水施設。
「まぁ、化学が発展してないこの世界で浄水なんてほとんど手段が限られてるけどね!!」
安心確実な手段は浄化魔法を使うことだが、そもそも浄化魔法の使い手をそのためだけに確保するのが難しい。というか無理。回復魔法と同じくらい引く手あまただからね。根本的な問題として、一都市が出す汚水の浄化を毎日できるレベルの魔法使いがいたら宮廷魔術師とかになってるだろうし、人数で補うとなると……色々と想像したくもないわね。。
なのでやること。やれることはレンガ造りの深めに掘ったため池を複数作って、岩や砂を使ったろ過をしつこいぐらいにやるだけ。
きれいになってても除菌の類は全くできてない?当たり前よ!
もうね、化学由来のなんとか剤!とかよーわからんなんとか電気分解!なんて高度な除菌・浄水方法はできないし私もわからないのよ。
一応、魔石で動き続ける水車みたいなものを設置して水の流れを止めないようにするのと、微生物の過剰発生対策として水草と魚をいくつか放して要検証といった感じで方向を決めている。汚い水に魚を放すなんて!と言われてしまうかもしれないけど、北海道や一部地域だと川をきれいにしすぎたせいで魚が逆にいなくなった例もあるので加減こそが一番大事よ。
ちなみに、前世における欧州で浄水関連施設が町単位での導入されたのは1800年前半。なので砂礫などを使ったろ過式であってもかなり画期的なのは事実だったりする。花の都にある有名な川を日本人が見ると汚い、大雨でも降った後なのか?と言われるのも当然である。
今回は本当に知っていること。そして実行可能なこと。その二つを考えると微々たる変化もいいところだ。それでも。
「そう、それでも何もしないよりはましなのよ。少なくとも前に進めるために、ね」
小さな変化絶対的な救いにはならない。
けれど足を止めているよりはましだ。
「なーんて真面目ぶってるけど、最終的には私の欲のためよ!」
複数ある浄水用の人口貯水池。
そのうちの一つを
「私がもらったもの!!オーホッホッホッホッホッ」
もはや悪役令嬢。いや、悪役夫人か?
自分の欲望が
「大量の水があればそれだけ軟水が多く作れる。そして……水の販売よ!」
前世基準で見ても水道が整備されている地域は少なかったし、水道から出る水が
「だからこそ、安全かつ安心して飲める水。そういう触れ込みで売るのですわっ」
当然だが、この世界の水は安全には程遠い。
通常の水を蒸留し、通常の水を混ぜてちょうどいい硬度へと調整。それを煮沸するという工程を経るので燃料費は結構かさむ。しかし、そこは魔法のある世界。魔石も活用しての熱処理が入るので通常よりも継続コストは段違いに安い。
アクエリアス印の超軟水!
誰が飲んでも安心安全。
お値段は高めだけどいろんなことに使いやすい水!
いろいろと詐欺もしやすい水の販売事業なので注意は必要だ。
しかし、水に対する意識改革に必要なのは『実感』だ。最初は誰もが水を変えただけで生活の様々なことが変化するなど信じてはくれないだろう。水に対するある程度の実績があるガブリエラが提唱したとしても難しい。
「牛歩であっても一歩は一歩。やってみせますわ!!」
軟水が手軽に手に入る世界。そんな夢の実現にはもう少しだけ時間がかかりそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます