第291話 森の食生
第291話 森の食生
「いえ、そう言う訳ではないんですけど....」
「ふーん」
「興味ない感じじゃないですか」
あまり乗り気ではないのか無理して何故聞いてきたのかを深掘りしようとはしなかった。
「さっき、クマがこの先にいるってよく分かったね」
「魔力の特徴を出すと聴力と嗅覚が上がるんですよ。これって何の魔物ですかね?」
「さぁ?」
「え?」
「基本的に動物型の魔物はみんな感覚が鋭いけど、犬系の魔物は多い割に区別が難しい」
「そんなふんわりしてるんですか!?」
「してるしてる」
図鑑とかを見ると魔物一体一体の生態系が事細かに書かれており、そんなふんわりとした区分なのだとは夢にも思わなかった。
「キノさんはよくさっき私のこと信じてくれましたよね。猟銃の弾って高いんですよね?」
「魔法使っている事は分かってた。それに、その弾丸は自作だからそこまで高くない。何ならその銃も手作り」
「これも作ったんですか!? 冒険者さんって凄いですね」
「冒険者にはこんなスキルいらない」
「え? じゃあ、何でそんなことするんですか? 銃を作るのにだって時間かかりますし、上手く言えないですけど、変じゃないですか?」
「変....か。何処が?」
何処となくさっきよりも喧嘩腰のキノが口調を少し強くしてる聞き返す。
「だって、お金があればお店で買った方が早いです!キノさんは本職は冒険者さんなんですからそっちに集中した方が効率的ですよ!」
「あー、なるほど。文化的な暮らしを国って言う中でしてるから言える言葉」
嘲笑うかのようにキノが少しだけ笑いながらゴリゴリと摺鉢で臓物を潰している子を見る。
「何ですかそれ? 甘ちゃんって事ですか?」
「そうは言ってない。これで血も最後だからそっちに行っていい?」
「どうぞ....」
先程まで勢いよく出ていた熊の血が一滴ずつ滴る程度なった所で少し大きめの瓶に変え、首の断面にも口に含んだ酒を霧状にして吹きかけ、腕で口を拭う。
そこら変に自生していた地面から直接葉を生やしている草と木から落ちた枯れ枝を数本取り、メイドの近くに行く。
バラバラと枝を地面に落とし、持っていた綿を膝の上に載せる。マジックバックの中から火打石を取り出して金属製のナイフと擦り合わせ火花を綿に落とす。
手で綿を拾い上げ息をフーッと優しく吹きかけると赤黒く萎み、それを枝の中に放り込む。
「地面から直接生えてる葉には食べられる物が多い。裏が毛羽立ってるやつは小さな火で少し炙ってから肉料理に加えると良い」
手早く燻る火で先程取った葉を炙り手の中でちぎると摺鉢の中に放り入れる。
「さっきの言葉の意味教えて下さいよ」
「ああ、もう少し待って」
外套のフードを下ろすと今は昼過ぎなので女性になっているのだが、肌が白く中性的な顔立ちをしているキノに思わず息を呑む。
そんなことは露知らず、マジックバックの中から茶色い紐が付けられた布を取り出す。紐の先端には鋭利なピンが刺さっており、それを真上の木の太い枝に向けて投げると返しの付いた先端が見事に木に食い込んだ。
「じゃあ、話そう」
キノがそう言って準備をする頃には小さかった焚き火も大きくなってきている所だった。
「何ですかそれ!!滅茶苦茶狡い!」
「何って携帯用ハンモック。座るのにも便利」
そう言って座ると子供のように足をぷらぷらとさせる。
「私なんて硬い切り株ですよ!!」
「自分からそこに座ったからそれが好きなのかと....」
「そんな訳ないじゃないですか!少しでも良い物に座りたいですよ!」
「それ」
キノが唐突に指を差しそう言う。
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