第252話 強奪
第252話 強奪
「冒険者の携帯食って味が結構濃いんだね....。噛む度に唾液が口から溢れてくる....」
「美味しく食べるよりは、エネルギーを摂るのが目的だから。長い間ダンジョンに潜ってると塩の強いものが食べたくなるらしいよ?それより、少し待って!」
ニーナが2階に差し掛かった所で振り向くと、エナが階段を数段上がった所で息を切らしていた。顔は青白く、先程まで大事そうに食べていた料理が喉の麓のあたりまで登ってきた頃であろう。
「エナお姉ちゃん早くー!なんでそんなノソノソとしか歩けてないの?」
「お腹はち切れそうなんだって....。少し圧迫しようとしただけでヤバいんだから!」
階段を干し肉を齧りながらもぐもぐしながら上がっていくニーナに苛立ちを覚えながらも壁に手をつきながらエナもゆっくり階段を上がって行った。
「先に3階に行ってるね。ゆっくり来ていいよ」
「ええ! 置いてかないで! ここの階段全体的に暗くてなんか、怖いし....」
そんなことに一々耳を貸す事はなく、お腹がはち切れてしまいそうなエナに見切りを付けて、遂にはニーナがエナの視界から消えてしまった。
幸い、まだ昼過ぎであり外からの明かりは入ってきているのだが、そこまで明るいとは言えなかった。
肩に掛けるマジックバックの中から、リムがエナの姿を覗き見ているのだが、自分にはどうもできないと見切りを付け、バックの中に戻る。
「やっと追いついた〜!」
お腹を摩りながら3階へ上がると、階段を登り切った所にニーナがいた。
「お姉ちゃんやっときた」
「うっ、ごめんって。部屋は開けたの?」
「まだ、これからだよ?」
ニーナの背後には3つの扉がついた壁があり、どの部屋も外の大通りに面していた。
「最初この宿屋見た時1階ごとに向かい合うように部屋があるのかと思ったんだけど、大通りの面しかないよね。一部屋分もそんなに大きくなかったし、何でだろ?」
「建物の割に部屋が小さくて、数も少ないって事?」
「そうそう!それ!」
思った感情を直感的に言葉にするエナの言葉を清書し、再構築する。
「何でだろ?陽の入りの問題?建物の裏に何があって見せたくないからかな?」
「後は馬を繋いどくスペースとかかな? 良く繋いである馬に小さい時イタズラしたなー」
「わんぱくだったんだね」
「そう? 偉ぶってる貴族の馬盗んで貧相な山羊とかに入れ替えたりしなかった?」
「わんぱく過ぎない!? 予想の斜め上以上のイタズラだったんだけど!? その貴族は山羊に跨って帰ったの?」
「アハハ、そんな訳ないじゃん。それはそれで見てみたいけど。実際は釈然としない顔で10メートル歩く毎に山羊のフンの処理しながら帰って行ったよ?」
「そっちの方が大分レアだと思うけど!? あれ?待って、孤児院に山羊小屋って書いてある立派な小屋に馬が何頭かいたけどあれって?」
エナの話を聞いて何かに気が付いてしまったようなニーナが恐る恐るエナに確認する。
「そう、ヤギと入れ替えたやつ。最初は山羊の乳を飲むために買ってきたんだけど、思ったより不味くて加工品も売れなかったから、イタズラで使ったんだ」
「通りでやたら毛並みがいい馬が居るなーって思ったよ。あの回数分だけイタズラしたんだね....」
「いや、実際は今いる馬の半分くらいかな? 適当に入れといたら繁殖しちゃって、荷物運搬の仕事とかも一緒にやってそのまま違う飼い主が見つかった子もいるから、定かじゃないなー」
「うちの孤児院、本当に謎すぎるよ....。てっきり、キノお姉ちゃんの稼ぎだけで運営されてると思ってた....」
「基本はそうだよ? でも、それでお酒とかの嗜好品買うわけにもいかないから、馬売ったり賭場を開いたりしてた」
「もう、それ以上は知りたくない....。うちの闇が垣間見える....」
「炊き出しの一部にも使ってたけど、今は部屋の中確認しよ。どの部屋の鍵か分かる?」
「どの部屋なんだろ?」
近くのドアノブを捻ると何の抵抗もなく扉自体は開いた。しかし、眼前には石の壁がキッチリとドアにはまっており、部屋などなかった。
「ここじゃないみたい....」
何故宿屋の中に中に入れない部屋が存在しているのか、全く分からないが今はそんなことよりも自分の冒険事務所が開ける部屋が気になって仕方ない。
「ニーナ! 残り2つも同じだよ!!」
「え?」
エナの言葉を疑いながら残り2部屋の開けられた部屋の中を見てみるとやはり1部屋目と同じように石の壁が嵌め込まれており、手で押しても全くビクともしなかった。
「嘘? 使っていいって言われたのに....。何で部屋がないの?」
必死にドアに嵌め込まれた石の壁を押そうとするのだが、人の力で石壁が動くはずもなくニーナがその場でペタンと座り込み項垂れる。
宿屋の部屋で中に入れない部屋。一体何のために作られた部屋なのか?扉にピッチリついた石壁はどうやって作られたのか全くと言っていい程、その理由を想像しようとしても想像する事はできなかった。
目の前の光景に気を取られてしまい。下の階から登ってくる足音にも気付けずにいた。
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